66 隼人の真実
地球を出てきたのは、そういう理由があったからなんですね」
自分は今、動けないからケイと隼人に鍵を託したはず。
「多分、親父も難しい位置に居るんだろうと思います」
大きな事業を抱えているのは知っている。
でも櫻井さんには言わない。
親父が抱えてるのも地球を背負う、国家機密だから・・・。
「親父の敵対視してるやつらが、前からも、いましたし」
そういうと、深い溜め息をつく。
「櫻井さんが、さっきおっしゃった通り、周りがほっとくことなく、俺にも矛先がむきましたからね」
「隼人も大変だよな」
「じゃなきゃ、親父さん隼人にあれだけの護身術、身に付けさせなかっただろうに」
櫻井さんと視線を合わせる・・・と、
「親父さん自身も、日々危険な中で仕事をしてるからこそ、隼人も自分が手の届かない所で、狙われるのがわかるからな」
「受けたのは、特殊部隊並みの訓練だったろ?隼人」
「はい」
「・・・だろうな。隼人の動きを見てると良くわかる」
「そうですか?」
「一般の護身術あたりじゃ、あれだけ動けない。戦場あがりぐらいのレベルだぞ?」
「でも・・大事な時に、大切な彼女を守れないようじゃ、大したことないですよ」
ケイを守りきれていない自分に、不甲斐なさがつのって、溜め息がでる。。
「隼人が親父さんのこと、どう思っているかはだいたい見当はつくが、親父さんの隼人への想いは熱いものだ」
「櫻井さん・・・」
「ケイがテロで襲われて、俺たちが実行犯含めて片付けに動いただろ?」
「はい」
「俺も怒りで容赦なく、実行犯や組織もすべて潰したが」
「隼人の親父さんも容赦なかったぞ」
ふっと片方の口角をあげ、笑う。
「えっ?」
「地球側の、裏で指示を出した実行犯は全て片付け・・意味がわかるよな」
「はい」
既に命はたたれてるはず。
「事件の関係者すべて、二度と仕事をできないように手を回して、地球から追放した」
「え?そうなんですか?」
初めて聞いた事実に驚いた。
「親父さん言ってただろ?息子に手を出したら考えがある・・って」
「確かに言ってましたね」
「処分の仕方は親としての、怒り・・だな」
「親父・・」
「事件が片付いてから、親父さんからは伝言があったんだが」
「伝言?」
「ああ、隼人とケイが無事で良かったと言っていた。自分は今回のようなことがあっても助けにいけないから、心配だ・・とな。」
「親父、櫻井さんのこと・・・」
「speranzaと繋がってることは、薄々気がついていたみたいで」
「事件が片付いた頃には、俺のこと知ってたよ」
「だが、他言はしないと、約束した。親父さんを俺は信用してる」
「まぁ、知られたとしても、列車も関与してるし、少なからず地球とは付き合いもあるし、お互いさまなんだけどな」
「開発のトップと繋がったのも隼人とケイとの出逢いからだし」
「縁があったんだな、きっと」
そう言いながら、新しいタバコに火をつけると、
「親父さんも、あれだけの立場になると、普段家族は二の次だっただろ?」
櫻井さんが、柔らかい表情で聞いてくる。
「・・そうですね。」
「親父は、うちには帰らない仕事人間でした。お袋も、言葉にはださないが、すごく苦労していたのをみて、絶対親父とは違う仕事につくんだ!!と、幼いときから思ってました」
「家にはもどらない、挙げ句のはてに、親父の仕事のせいで日常茶飯事で狙われるようになるし・・・」
「俺は・・・許せなかった」
「親父とは違う仕事をするようになって、周りも落ち着いてきてたんですけどね」
自分自身で、対処ができるようになったこともあるが・・。
「巻き込まれたくなかったから、普段も必要最低限で、親父には近づくの止めてたんです」
「そうだったのか」
「・・あと、狙われるのも可能性はゼロではなかったから、入社時からケイのことも、同期で気になってたけど、ずっと手が出せなかったんですよね」
同期で、という以外の本当の訳がここにあった。
「自分に関わると、相手が標的がかわってケイを狙いかねないし」
「確かにありえるよな」
「でも、今回の旅がきっかけで、ケイとは付き合うようになったんです」
「旅の話を櫻井さんの所に聞きに行ったときは、まだ付き合ってなかったし、自分の気持ちをケイには伝えてなかったんです。」
「あの後ですから、告白したのは・・」
「もう、いろんな思いはあるけれど、ケイを手放したくなくて」
「一緒に来て良かったと思いました。これだけの騒動の中では、彼女だけで送り出したら、二度と逢えなかった・・・」
櫻井さんと視線を合わせると・・・、一瞬困ったような表情を見せたが、
「そうだな・・。俺も同じ思いで地球を出てきたからわかる」
「え?」
櫻井さんの言葉に、呆気にとられると、
「地球でケイたちの状況を聞いたら、ここで行かないと二度とケイに逢えなくなる・・と思ったら、いてもたってもいられなくて出てきたんだよ」
「回りには無理言ってきたけどな、真」
「そうですね。本当は動ける状態ではなかったです、ご主人様」
「・・・はっきり言うなぁ・・」
「動き出したら、ご主人様を止められる人はないですから。私も命は惜しいですし」
「大げさな・・」
「まぁ、それくらい強引に地球を出てきたわけです。そんな風に感情的に動くのは、ご主人様は初めてですからね」
「まぁな・・最初で最後だろうが・・」
二人の意味深な会話も気になる・・が、
「その後は大丈夫なんですか?仕事も」
強引に出てきたと言われると、心配になる。
「優秀な部下を置いてきたから、何とかやれてるよ」
真さんに散々な言われっぷりに、諦めた櫻井さん。
「そこら辺は抜かりはないです。ご主人様が動かしているのですから、間違いないです。」
「今は、車内が司令塔なってますし」
にっこり言い切る真さん。
「組織は、指導者できまります。ご主人様は全くぶれない方ですから、何処にいたとしても組織は強固ですよ」
「真さんが言ってることは、納得ですね」
「いくら部下が優秀でも、上に立つ者がいい加減なら組織が死んでしまうし」
自分の経験からも、良くわかる。
3人で話をしていると、扉を叩く音がする。
「はい、どちら様ですか?」
真さんが扉の前に立つ。
「あの・・・ケイですけど」
すぐ扉が開かれる。
「起きたのか?」
姿を見せたケイを抱きしめ、頬にキスをする。
「うん、目が覚めたら隼人がいなくてビックリして、扉の前にいるSPさんに聞いたらこっちに居るって」
「寝るにも早かったからな。これからのことも、櫻井さんと打ち合わせした方がいいと思って、話してたんだ」
「そうだったのね」
「寝て少しは落ち着いたかい?ケイ」
櫻井さんも近くにきて、私の頬を撫でる。
「はい。すいません・・。何だかびっくりしてしまって」
「ケイが元気になればいい。何も心配する事ないから」
穏やかに話をしてると、真さんが声をかけくれる。
「立ち話もなんですから、こちらで食事しながらでどうですか?この先どうなるかわかりませんからね」
冗談にも聞こえない真さんの提案にのることにした。




