65 櫻井の正体
何でケイがここまで苦しまなきゃいけないんだ。
奴のために、涙なんて流すなよ。
櫻井さんとケイの会話を聞いていて、腹がたってきた。
「お前がそんなに悩む必要はないんだよ」
たまらなくなってケイを抱き締めた。
声をあげず、俺の胸の中で泣き出したのをみて、
「櫻井さん、早く俺たちを解放してもらえないでしょうか。わけもわからない国同士の争いに巻き込まれ続ければ、ケイが・・潰れてしまう・・・」
本気で訴えたが、返事はなかった。
「部屋に戻ろう」
ケイを抱き上げ、櫻井さんのコンパートメントを後にした。
部屋に戻り、抱きかかえたままソファーに座った。
「ケイ」
名前を呼ぶと、真っ赤に腫れた眼差しで俺を捉える。
両手でケイの頬を包み込み、そのままどちらからともなく、唇を重ねた。
言葉はなく、落ち着くまでケイの背中をさすっていると、
「隼人、ごめんね、ありがと・・・」
そういいながら、腕を伸ばし俺に抱きついてきた。
「ん?落ち着いたか?」
包み込むように、強く抱き締める。
「・・うん」
「知りたかったことの答えが、あまりにも衝撃的で」
「どうしたらいいのかわかんなくなって泣けてきたの。」
「でも、泣いたら落ち着いたわ。」
「ありがとう、隼人」
顔を上げ、微笑む。
ケイの顎に指を這わせ、唇を寄せる・・。
「俺はお前の傍にいる。泣きたい時は我慢しなくてもいいんだ」
「でもな、今回の涙は俺は納得できない」
「ケイは悪くない」
「むしろ、こっちは被害を受けてるほうだしな」
さっき櫻井さんにケイを解放してくれって言ったけど・・・。
今ここで引き返したとしても、危険なことには間違いない。
tenerezzaでも、味方が捕まったことがわかったとしても、引き下がることはないだろう・・。
国がらみなら、そんな事実を揉み消すぐらいわけないからな。
さて、どうでるか・・・。
考えているうちに、ふと抱き締めている腕が重くなったのに気がついた。
ケイをみると、泣きつかれたのか眠ってしまったようだ・・。
髪を指でとき、頬にキスをする。
そのまま抱き上げ、ベットへ静かに寝かせた。
「とりあえず、櫻井さんと話をした方が良さそうだな」
ケイをこのまま一人にするのは心配。
SPに部屋の入り口にいてもらうようにお願いして、
再度櫻井さんのコンパートメントに向かった。
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(コンコン)
「はい」
部屋の中から声が聞こえた。
「隼人です」
足音が聞こえ、真さんが扉を開けてくれた。
「お忙しい所申し訳ありません。櫻井さん、今お話できますか?立て込んでいるのなら後程で直してきますが」
「いや、隼人大丈夫だよ」
真さんの後ろから、櫻井さんの声が聞こえた。
「では失礼します」
真さんに案内され、櫻井さんの正面のソファーに座る。
「ケイは寝たのか?」
櫻井さんが タバコに火をつけながら尋ねた。
「はい。落ち着きましたが、今は泣き疲れて寝てます。心配なので、部屋の入り口にSPさんにお願いして見て貰ってますが。」
「・・・そうか」
フーッっと深い溜め息をつく。
「ケイが寝てるうちに、話をした方がいいと思ってお邪魔しました。」
「先程、解放してくれって言いましたが、次の駅で俺たちが引き返すようになっても、危険はかわらない、というより望まなくてもtenerezzaのやつらに捕まるのも時間の問題になる」
「先日捕まえた二人は、どうせ国同士の交渉の揺さぶりにもならないでしょう?櫻井さん」
「流石だな・・隼人。あれぐらいじゃもみ消されて終わりだ」
「でしょうね・・」
「櫻井さん、単刀直入に伺います」
すぅっと、一呼吸する。
「櫻井さんは、speranzaの国政を動かせる役職にいる方じゃないですか?」
「そうじゃなきゃ、先程の真さんとの会話はなりたたない、と俺は感じたんですけどね」
そう、命は保障すると櫻井さんは言った。
立場がないといえない台詞だったから。
吸っていたタバコを消し、櫻井さんが、真っ正面で隼人の視線を捉える。
「隼人には隠せないな。国に帰ればわかることだが。」
「ただこれから言うことは、TopSecret、国の最重要秘密だ。」
「隼人の親父さんの仕事レベルより上だからな」
口角を上げ笑う櫻井さんを纏うオーラが一瞬で変わったのがわかる・・・。
すぅーっと、櫻井さんの後ろに真さんが立つ。
「隼人の言う通り、俺はsperanzaの関係者だか」
やっぱり・・と思う。
「今までは、国の情報機関や軍の指揮官でもあった」
「身分は、speranza内では、皇位継承権の2番目にいるが」
「えっ、皇位継承権・・・・・・2番目??って」
ツゥーっと、背中に冷たいものが流れる。
「現在の王は、実の兄になる」
「!!!!」
視線を外すことはできないけど、あまりの驚きに言葉にならない。
櫻井さんは、関係者・・ではなく、正真正銘の、speranzaの王族だ。
今の王が、万が一のことがあれば、speranzaの・・。
聞いていて、身体が震えてくる。
「そんなに固く考えなくてもいい」
あっさり櫻井さんは口にする。
「身分なんて、あってないようなものだ」
「時には邪魔になる」
そう言った櫻井さんの瞳が一瞬揺らぐ。
「自分が関係なくても、周りがほっとかないからな、昔からよく狙われてたよ」
「隼人も違うか?」
だから・・俺の気持ちがわかるのか・・前にいってた櫻井さんの言葉の意味がわかる。
「真は、俺のボディーガードみたいなもので。いつも近くにいてくれて心強い。付き合いが長いから、身内みたいなものだよな」
後ろに立つ真さんを見上げる。
「ボディーガードなんて、おこがましいです。私以上に旦那様は強いので、その他をサポートさせて頂いてます」
にっこりと、櫻井さんの後ろで微笑む真さん。
「こいつの拷問で、口を割らない奴はいないぞ」
ボソッと櫻井さん。
「俺のやり方なんて、可愛いものですよ、ご主人様」
「あれでか・・」
穏やかに、恐ろしい内容の会話をしている二人。
「櫻井さんや真さんの強さは、tenerezza城の戦いぶりをみて、俺もわかってます」
あのときの戦いは、凄かった・・。
「俺は、戦場生活が長かったからな・・・」
足を組み、新しいタバコに火をつける。
「王族なのにですか?」
疑問を投げ掛ける。
「事情があるんだが、俺は、建物の中で過ごすのが嫌いなんだよ」
露骨に嫌がる櫻井さんの後ろで、クスクス笑う真さん。
「容姿も良いので、ご主人様は多くの女性に囲まれることも多かったですし」
「俺が持ってる位置が欲しいだけで、うわべだけの女性なんて魅力はない。」
「そういう付き合いのことは、兄に任せて、外は俺が動かしてきたんだよ」
「実際、ここまで国が安定するのには、大変だったからな」
「外からの攻撃も多いし、列車も終着駅にしたのも一悶着あったな」
二人の話しを聞いていて、ふと、隼人は思う。
「うちの親父も接点あったんですか?」
宇宙開発事業団も色々な星に関与してるはず・・・。
「直接はあったことないけどな、関連性はある」
「それで、俺と親父と繋がったんですね」
やっと納得した。なぜ、櫻井さんが、俺のバックを調べたか。
「そうだ。隼人の周りを調べたら、親父さんの仕事が繋がった。解った時は、もう二人は、地球を出たところだったからな」
「後悔したよ・・・」
「櫻井さん」
「隼人は、普段からも狙われてるのに、宇宙にでてしまえば、リスクが高くなる、同時にケイも巻き込まれる可能性がでてくると」
「tenerezzaのことを知ったのは、少ししてからだったが、大事になる前にと思って地球をはなれたが、結果的には巻き込んでしまって、ケイにも辛い思いをさせてしまった・・・・・・」




