64 飛鳥、その後
楽しそうに買い物をしている、櫻井・ケイ・隼人の三人の後ろで、更に数人のSPと共に警備をしている。
ケイさんの希望らしいが、よく許可したなと最初は思った、が、これはケイさんの気持ちを汲んだ櫻井の愛情だと気がついた。
ケイさんを挟んで立っている二人は笑っているが、気配はピリピリしているのがわかる。
でも・・・・、真は思う。
(こんなに穏やかに笑うご主人様を見るのは初めてかもしれない)
櫻井の側近になって、数年たつが、いつも緊張感があって気持ちは外にはでてこなくて、笑うなんてもってのほかだった。
(これはケイさんの影響・・だよな)
疑う余地はないけれど。
でも隼人さんもいるし、この先どうなるんだろうか・・・・。
そんなことを考えながら三人を見ていたとき、櫻井の表情が一瞬変わったのを見逃さなかった。
視線は、ケイさんの首筋・・・・。
何を見つけたのだろう。
数秒凝視していたあと、フッと、妖艶な眼差しでケイさんをみる櫻井にぎょっとした。
初めて見る櫻井の表情に、何かがおこる気がする、と胸騒ぎを感じた真の直感は、外れていなかった。
ケイさんと櫻井が、話をしてるなと思った瞬間、櫻井がケイの額にキスをしていた。
えっ・・・・・・!!!。
多分ケイさんもビックリしただろうけど、俺も呆気にとられた。
隼人さんの目の前にして・・・・宣戦布告か?!
櫻井のケイさんへの本気の想いを確信したと同時に、ケイさんに同情した。
彼を本気にさせたら・・逃げられないよ・・。
小さな溜め息をついた俺は、しばらく見守ることにした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
buioに向かっている列車の中、今は私たちのコンパートメントではなく、櫻井さんのコンパートメントで、4人でお茶しながら穏やかに話をしているところで。
全く危機感は感じられない、というかあえてそういう風にしている感じもある。
それにしても・・櫻井さんのコンパートメントは、また装飾など凄い部屋。
「ここしか空いてなかったんだよ。まぁ皆で話も出来るし、音も漏れなくていい。」
と、部屋をみてびっくりしていた私に、櫻井さんはさらっと言った・・。
普通は、ここしか空いていなくても、簡単にはとれない部屋です。
まぁ今更、何も言うまい・・。
「そういえば、あれから捕まえた二人はどうなったんですか?」
話の合間に、聞いていいのかどうか迷ったけれど、今きかないと、この先多分聞けない気がして。
「いろいろと話をしましたよ」
と、私の質問に対し、やけにすっきりとした笑顔で答えてくれる真さん。
(いやいや、どーしたって話だけじゃすまないでしょ?あの血を見る勢いじゃ・・)
と心の中で突っ込みをいれる。
何となく真さん、爽やかに見せかけて、性格的にSのような気がするんだよなぁ・・・と、最近思っているのは秘密にしておこう。
「国益に関わることだからな、speranzaに身柄を先に送ったよ。」
櫻井さんが、普通に答えてくれる。
「えっ?送った?」
思いがけない返事だったので驚いた・・。
でも、驚いたのは私だけ?
隣に座る隼人に
「知ってたの?」
って聞くと、
「報告は貰ってた。ただ送られてから、その後どうなるかは知らないけどね」
そういうと、腕が伸びてきて、私の腰を引き寄せ頬にキスをした。
視線を櫻井さんに移すと、表情を崩すことなく頷き、
「当然、国で裁かれる」
「ケイを狙ったというのもあるが、もともと人を使って、鍵を奪ってsperanzaを動かそうとしていたからね、罪は重い」
事の重さに・・・・呆気にとられて、言葉がでない。
フーッと、目の前の櫻井さんの吐く煙を見つめていると、
「ケイは、彼がどうなるか気になるか?」
と真剣な顔で櫻井さんが聞いてくる。
「気にならない、といえばウソになりますけど・・ね」
櫻井さんとまっすぐ視線を合わせる。
「tenerezza側に、私の情報をいれたのが彼ならば、何故彼がtenerezzaの上層部に入れたのかが、腑に落ちなくて。」
そう、捕まってからずっと思っていた。
何処から来ているかもわからない青年を信用したこと。
「それに、鍵だけでなく何故、私まで狙われてるかも」
私が鍵を持っているなんて、飛鳥はしらなかったはずだし。
「何か二人と話したときに言ってました?真さん」
お話しをしたという、真さんに話を振ると、
「詳しいことは言えませんが、彼はtenerezzaの関係者に拾われたらしいです」
多分私と離れて、地球から出てきた時なのか・・・・。
「その際、tenerezza側がケイさんのことを知り、命と引き換えに、ケイさんと引き合わせるように指示されたと言ってましたね」
「えっ、飛鳥の命と引き換えって・・・」
飛鳥、何をしたの?
彼のこと思うと、何も言えなくなってしまった。
考えていると、目の縁がじんわり潤んでくる・・。
「ケイ?大丈夫か?」
櫻井さんが、気が付いたら私の横にたち、心配そうな表情で、頭を撫でていた。
私は無言で、頭を横にふる。
「櫻井さん、国へ送られた飛鳥はどうなりますか?」
櫻井さんを見上げる・・・と、目の縁から溢れた涙がこぼれ落ちる・・・・。
「・・ケイ」
櫻井さんが切ない声と共に、やさしく指で私の涙を拭う。
「・・・・利用されて動いただけ、であれば、国外追放ぐらいで収まるだろ」
「多分重要なことは、聞かされていないだろうからな」
「真、違うか?」
「そうですね。本人の言葉を信じれば、肝心な内容は、聞いてないようです」
「それなら向こうでも、色々聞かれるだろうが、大丈夫だ。命は保証される」
「本当ですか?」
「本当だ、俺が保証する」
「よかった・・」
ホッとしたら、力が抜けて、そのまま隣に座る隼人に身体を預けた。
身体に、体温が重なる。
隼人が私を包み込むように抱き締めたからだ・・・。
「お前がそんなに悩む必要はないんだよ」




