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星の降る街に  作者: 霧島
第6章
63/92

63 冷戦(隼人&櫻井)

列車に無事たどり着き、ソファーに座り、タバコに火をつける。


煙と共に、大きな息を吐き出す。


タバコを持つ反対の手に、ケイから貰ったライターがある。


買い物の際に、いつの間にか買ったらしいが。


「櫻井さんに、気に入ってもらえるかわかりませんけど・・。」


と、部屋に入る前に、遠慮がちにケイから渡された包みを開けると、自分の手にしっくりと収まる手触りのいいライターだった。


「気に入らない・・わけがないだろ。」

と呟く。


先程まで自分の手の中にあった、ケイのぬくもりを思いだし、ライターを触りながら、何度目かの溜め息をつく。


買い物も、ケイが行きたいと言ってるが、どうだろうかと朝隼人から連絡を貰った時、今の状況で一瞬迷ったが、ケイの喜ぶ顔を思ったら、


「俺と隼人が近くにいれば、少しの時間ならいいだろう。」

と返事をした。


ケイと一緒に買い物に付き合ってると、ほんとに嬉しそうで、目がキラキラしている。


気がついたら、ケイと一緒に、自分自身も楽しんでいた気がする。


地球をでてから、こういう時間がなかったからな。


少しの時間なら、俺たちが守ってやればいいこと。


ケイの隣に立ち、ふと首筋に目がいく・・と、赤い印が数ヶ所みえた。。


一瞬凝視したが、隼人が付けたものだと分かるまでには、時間がかからなかった。


隼人が、〃ケイは、自分のものだ〃と言っているようで。


・・プツッと自分の中で何か切れた。


ふっ、上等。それならこちらも遠慮なく反撃にでるか。


櫻井さんの顔つきが変わったのを、後ろにいた真さんがぎょっとした顔で見ていたことは、彼は知らない・・。



手を繋ぎ、駅に向かって歩いていると、ケイは辺りを見回してキョロキョロしている。


多分、駅で狙われてるから、その不安感からだろう。

無理もない、自分の意志ではなく、巻き込まれているのだから。


「ケイ。」


呼ぶと振り返り見上げる視線にドキッとするが、


「大丈夫、ケイには指一本触れさせない。」

と伝えると、膝を折りケイの額へキスをした。


一瞬びっくりして、固まったケイも顔も可愛い。


クスッと笑い、何もなかったように歩き出す自分を、彼女の瞳にはどう映っていたんだろうか・・。


本心は抱き締めたい衝動にかられたのだけど、そこは抑えた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


列車は、buio(ブイオ)に向け、定刻通りに出発した。


3日ほどでつく予定らしい・・らしいっていうのは、この先どうなるかわからないから。


列車が停まった前例もあるし。


そう、speranzaに確実に近づいている今、更に危険は増しているはず。


でも、どうにでもなれ・・なんて、自暴自棄にはなれない。本当はなりたいけど。


私の取り巻く環境は、悪くなっている。


私が望まなくても、相手が望むから。


speranzaに着いて、私の持つ鍵から解放されたら、この束縛から逃れることができるのかな。


後で、櫻井さんに聞いてみよう・・。


櫻井さん、どういうつもりでさっきは私にキスしたんだろうか。

きっと、不安になっていたのがわかったんだろうけど。

隼人の前でやらなくても・・。


と、ふと思い出す。


隼人がつけた印・・・まさか。


火に油を注いだのかも・・,そう、考えると納得する。


どうしようもなく、大きな溜め息をついた。


離れていくlagoの星を、考え事をしながら窓辺に座ってボーッと眺めていると、背中から暖かい体温で身体を包まれた。


「ケイ・・。」


「ん?」


私を呼んだ声が、それ以上聞こえることもなく、列車の進む音だけが聞こえた。


どのくらいの時間がたったのか、背中の温もりが、やっと動き出し、ぎゅっと抱きしめられる・・。


「ケイは・・俺のだ。」

隼人の声が震えているのは気のせいか。


列車に乗る前に私が、櫻井さんにキスをされてから、隼人の様子がおかしい。


抱きしめる隼人の腕を解き、向かい合わせに座り、視線を合わせると、不安気に隼人の瞳が揺れている。


隼人の頬を、両手で包み、微笑みながら


「大丈夫よ。私はあなたの傍にいるわ。」


「それとも、信じれなくて、不安なら私から離れる?隼人。」


意地悪な質問かなと思い、首を傾げると、


びっくりした隼人も、フッと口角をあげ笑う。


「離れるわけないだろ。俺はケイの王子様、だから・・な。櫻井さんであろうが、どこぞの王子なのか知らないが、誰にもケイは渡さない。」


隼人もきっと不安で仕方がないんだと思う。


私も腕を背中に回して、ぎゅっと抱きつく。


私を抱きしめる隼人の香りが、ほっとさせる。


そして、どちらからともなく、唇を重ねた。


最初はついばむように、そしてだんだん舌を絡め深くなる・・。


チュッ・・。


そして、たっぷりの水分を残し離れる。


「ケイを閉じ込めておきてぇ・・。」


一瞬耳を疑うような言葉をはき、抱きしめる腕に力が入る。


「監禁??」

顔をあげ、隼人を見つめると、困った顔をする。


「できるものなら、閉じ込めておきたい。そうしたら、もう誰の目にも入らないからな。」

一歩間違えると犯罪者になりかねない・・。


「心配性ねぇ、隼人は。」


「俺をそうさせるのは、ケイだけだ。」


「うふっ、ありがとう。でも、ここまで思ってくれる隼人がいるだけで、私は幸せよ?」


「オフィスで働いていた隼人から想像できないくらい、旅に出てからびっくりさせられているけれど、今もって隼人が私を選んでくれて、愛してくれていることが信じられないけどね。」


「それはお互い様だな。」

そういうと、櫻井さんがキスした額に、隼人もキスをする。


「上書き・・。」


「え?」


「無かったものにした。」


あ・・そっか。


横を向いて、面白くなさそうにしている隼人。


ふてくされる、隼人の頬にキスをした。


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