55 lago/波乱
「ケイ、こちらはどんな関係の方?」
急に目の前に現れた彼と見つめ合い、呆然としている私に、あえて事務的に、隼人が尋ねる。
「…ん、私の元カレなの。」
言ってから、一瞬私の周りの空気が凍りついた感じがしたのは、気のせいだろうか…。
彼は、平田飛鳥。
私が、仕事を始める少し前から付き合っていた。
隼人と出逢った頃と重なる。
そう考えたら、人生は不思議。
彼と別れたのは、嫌いになってではなく、お互い仕事が忙しくなって、私ものめり込んで仕事をやっていたせいもあり、すれ違いも多くなってしまって、結局離れてしまった。
でも、彼のことは大好きだったし、気になっていた。
でも、飛鳥が何故今ここに?
私と別れた後、地球を離れた…と人づてに聞いたことがある。
「ケイ、彼の仕事の邪魔になるから、行こうか。」
櫻井さんが、横から声をかけてきた。
あ、そうだ。
ここで働いてるみたいだから邪魔しちゃいけない。
「仕事の邪魔しちゃってごめんね、飛鳥。私行くわ。」
「ケイ、また時間ができたら話そう。連絡する。」
飛鳥の返事を待つ前に、両側の二人に連れられて、その場を去った。
部屋に向かうエレベーターの中。
誰一人言葉を発しない。
沈黙が怖い…。
ちらっと、二人の顔を見ると、何か考えているのかな?
あえて、関わるのはやめておこう。
私も、先ほど再会した飛鳥のことを思い出していた。
時が立ち、彼も雰囲気が変わっていたが、あの私を見つめる大きな瞳、
大好きだった優しい笑顔はかわらない。
でも、飛鳥は何故今、lagoにいるんだろうか。
あとで、話しができるかな。
エレベーターの、到着した音で思考が遮られる。
「荷物を置いたら、部屋へおいで。」
という櫻井さんの言葉に頷き、隣の部屋に入る……と。
荷物を置く前に、隼人に後ろから抱きしめられた。
「隼人?どうしたの?」
返事がない。
「あいつ、ケイの付き合っていたやつなのか?」
少し苛立った声がする。
「そうよ。」
私の男性遍歴なんて、隼人の女性関係に比べたら足元にも及ばない。
「…悔しい。」
「隼人?」
「俺より先にケイに逢ってるなんて。」
抱きしめる力が強くなる。
「初めての男か?」
目の前にきた、隼人の真剣な瞳。
初めて…、嘘ついても仕方がないから、頷く。
「くっ…。」
言葉にならない隼人に、言われる前に反撃する。
「隼人の女性の経験よりは、少ないと思うわ。」
「俺のことはいい。」
私の顔を両手で挟み、
「今の俺は、嫉妬で焼け付いてしまいそうだよ。」
そう言いながら、強引に激しいキスをする。
隼人の中で、何かはずれた…?
「ん~っ。」
激しさに、酸欠になりそう。
最早こうなると、隼人の暴走を止められない。
でも……。
「隼人、櫻井さんの所に行かないと。」
背中を叩いて、やっと離してくれたと思ったら、
「わかってる。」
「でも…その前に。」
私の身体が浮く。
「このままじゃ、俺の気持ちはおさまらない。」
隼人に抱き抱え上げられ、ベッドに連れてこられた。
「ごめん、先に言っとく…。優しくできそうもないから。」
そう言うと同時に、唇に重なっていた熱い体温が、唇を離れ、所々紅い花びらを付けながら、下がってきた。
隼人は、私の感じるスポットを、わかりきっているから堪らない…。
「あ…っ、はやとぉ。」
言葉と裏腹に、優しく責め続けて、それがまた私の感覚を狂わす。
「愛してる。誰にも渡さない。」
隼人を纏う妖艶さが、私を虜にさせる。
「離さないで…。」
それを聞いて隼人はにっこり微笑む。
「もちろん。」
その後、隼人から受ける浴びるほどの快感に、身をゆだねた…。
「私も、愛してるわ隼人。」
言葉に載せると、心に沁みる。
そう、飛鳥も好きだったけれど過去のはなし。
今、私が愛しているのは、隼人。
まぁ、付き合ってきた男性のことは、詳しく言ってなかったから今回のことになってしまったのだけど…。
隼人の女性関係も気になるけど、気にしたら身が持たないって言ったら、どんな顔するかしら。
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「先ほどのロビーの男、気になるな。」
櫻井も、自分の部屋で何とも言えない思いを抱え呟いていた。
その原因が、嫉妬だということも分かっている。
「ケイの元カレか。」
それを差し置いても、このタイミングで逢うとは。
「真。」
「はい。」
「ロビーにいた、男、探ってみてくれ。俺の勘が当たってれば、かなり面倒なことになる。」
「面倒、ですか?」
「ああ、間違いなくな。」
「了解しました。」
真が部屋をでたあと、ソファーに倒れ込み、目を閉じた。
次から次へ事は動いて来て、気が休まる時がない。
そして、今度はケイの昔の男の出現…。
列車内で、抱きしめキスをした時のことを思い出すと、身体の深い所が熱くなる。
こんな思いは初めてだな。
いつのまにか、どっぷり浸かってしまった自分に苦笑いをする。
「ケイ、逃がさないからな…。」
本人が聞いたらびっくりしそうな、物騒な物言いをしながら、ある場所に連絡を入れるため電話をかけはじめた。




