52 これから進む道
「わかった。ご苦労様。」
櫻井さんへ、次々と連絡が入ってきている様子。
結局、lagoに向かう列車の私たちのコンパートメント内で、櫻井さんや隼人たちが引き続き打ち合わせを行っている様子。
私は虚脱感からか、力が入らず、一人ベッドで横になっているけれど…。
今も、櫻井さんがあの時気がつかなかったら…と思い出すだけでも、怖くて身体が震えてくる。
困ったな…。
これ以上隼人たちにも、心配かけるわけにいかないし。
膝を抱え、小さく丸くなって布団を被っていたら、そのうちに、いろいろ考えながらも眠ってしまっていた。
「真、とりあえず、隼人の方は、片付いたな。」
櫻井さん、タバコくわえながら呟く…。
「残らず片付けたようですので、一段落ですね。新しく狙ってくる奴らがでてこない限り、大丈夫かと思います。」
「でも、油断はできませんが。」
「まぁな、隼人の親父さんの仕事上、敵だらけだと思っていたほうがいい。奴らも氷山の一角だしな。」
「ただ今回は、特別だ。奴らがケイを狙った時点で、俺たちを敵に回したようなもんだから。」
「ケイが狙われなければ、関わる必要のなかった相手だ。」
「そうですね。」
「でも今回だけは、奴らには同情しましたよ。」
クスクスと真さんが笑う。
「何故?」
櫻井さんが怪訝な顔をする。
「久しぶりに、戦場敵なしの旦那様が、本気でしたから。」
「そんな雰囲気の時は誰も手がだせません。」
「私も、命が惜しいですし。」
「そんな、大袈裟な。」
「でもなぁ、真、ケイがあんな状態で狙われたら、ほっとけないだろ?」
「もちろん。奴らは生かしておくわけにはいきません。」
「今も、列車内も危険だからな。何がおきてもおかしくない。」
「これからの相手は、隼人だけじゃ多分対処できないだろうし。」
「そうですね。まぁ、隼人さん狙いの相手は、結局雑魚みたいな奴らで、たいしたことなかったのですが。」
「旦那様、これからが本当の、ですね。」
「わかってる。」
「あいつらのことだ。必ず、なにか仕掛けてくる。」
speranzaに着くまで、あまり時間がなくなってきた今、狙ったものは必ず手に入れてきたあいつが、このまま引き下がるわけがない。
相変わらず、厄介なやつだ……。
「まだあいつらだけならいいんだけどな。」
「と、いいますと?」
「ちょっと、気になる噂が入ってきている…。」
「そうでしたか。」
走る列車の窓の外に目を向けると、漆黒の闇の中、たくさんの星が光り輝いている。
地球も遠くなったな。
speranzaまであとわずか・・か。
この先何があろうと、ケイは絶対に渡さない。
俺が必ず守る。
「この先どうなるんだろうか…。」
ケイの寝顔を見ながら隼人はひとり溜息をつく。
結局、俺の親父関係の騒動も、櫻井さん達が片付けて、解決、になったけれど。
ケイの命が目の前で奪われそうになって、何もできなかった自分。
悔いが残る…。
この先、speranzaに近くなるにつれ、鍵を持っている俺たちには、遠慮なく攻撃は激しくなってくるだろう。
俺はケイを守りきれるんだろうか…。
先のこと考えすぎても、解決しないか。
俺のできることは、ケイの傍にいて離れないことだな。
「怖い思いさせてごめんな。。」
丸くなって眠るケイの頬にキスをする。
「愛してるよ。」
「ん…。はやと?」
温もりを感じ、ゆっくりと目をひらく。
「起きた?」
傍には、優しく微笑む隼人がいた。
「ずっと傍にいたの?」
「うん、ケイの寝顔見てた。」
「もうっ…。」
恥ずかしくて、布団で顔を隠す。
「何にもしてないじゃないか。」
笑いながら、隼人に簡単に剥がされてしまう。
「起こしてくれたら良かったのに…。」
「いいんだよ。寝顔みていたかったんだから。」
不意に隼人の指が、私の目の下を撫でる。
「腫れてる。泣きながら寝てたんだろ?」
「ごめんな、ケイ。」
言いながら私を抱きしめた。
「隼人、何故謝るの?隼人は悪くないじゃない。」
抱きしめる力が強くなる。
「怖かっただろ?」
「・・うん。」
隼人の胸から聞こえてくる心臓の打つ音と、ぬくもりが私の心の緊張を溶きほぐす。
ホッとしたら、急に涙があふれ止まらなくなってしまった。
「はやと、怖かった。」
そう言うだけで、精一杯だった。
隼人が優しく抱きしめてくれながら、話し出す。
「親父もケイにはすまないことをした・・って言ってた。」
「親父の仕事の騒動に巻き込まれて、命落とすところだったんだから。」
「俺と一緒になることも、心配はしてたな。」
意外な展開に、一瞬涙が止まる。
「なぜ?」
「俺が親父の息子だから・・だよ。」
「俺と一緒にいる以上、今回みたいに、また狙われることがあるかもしれないだろ?」
「俺は、小さい頃からあったから、親父が自分の身を守る術を教えてくれたが、ケイは違う。」
隼人が、真剣な眼差しで、私を見つめる。
「こんな時に、言うことではないかもしれないが、これからも身の危険もあるかもしれない。それでも俺と一緒になってくれるか?」
急な隼人のメッセージにびっくりする。
でも・・・。
「イヤっていったらどうするの?」
「うう・・ん、諦めきれない。」
真剣な顔で悩んでいる隼人。
「取り柄もない、こんな私でも、あなたの傍にいてもいいのかしら?」
「もちろんだよ。」
「俺には、ケイがいてくれたらそれだけでいい。」
「隼人、愛してる。私もよ。」
唇に隼人の体温が優しく重なる・・・。
「地球を離れた時点で、危険は承知してる。でも、実際に自分が遭遇すると何もできないのが痛いほど分かったわ。」
「私を追って来てる人がいるってことも、信じられないけど・・。」
これからどうなっていくんだろうか。




