49 櫻井の本心
話し合いも終わり、出発の準備のために、皆それぞれに行ってしまった。
部屋に残るのは櫻井だけ。
書類整理をする手が止まる。
「ケイ…。」
抑えてきた感情が溢れてくる。
もう、気持ちを抑えるのは限界なのかもしれない。
今までに感じたことのない思いに、戸惑いを隠せない。。
「愛してる…。」
自分の心には偽りはない。
この先どうなるのかわからないが、この思いだけは変わることはないだろう。
隼人には悪いが、これからはケイに対しては、積極的にアプローチさせてもらうことにした。
だが今は、ケイを狙う奴らから守りきり、一日でも早く、speranzaに向かうことが一番大事。
ケイのためであり、そして、国のためでもある。
「今の俺は、国のためには、動いてないな。」
思わず苦笑いをする。
しかし、tenerezzaの王も何を考えているんだか…。
国の鍵は、前々から狙っているのは知っているが、まさかケイまで狙ってるとは、思ってもみなかった。
どんなルートで彼女を知ったんだ?
昨夜の、追跡人数はかなりの数だった。
急な召集であれだけ動くということは、普段から大規模にentrataに人数配置をしてるってことか。
何かこの星で、展開してるのか?
tenerezzaの王は、相変わらず、胡散臭いやつだ…。
「さてと、そろそろ行くか。」
荷物を手にとり、部屋をあとにした。
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隼人と二人で1階へ降りると、櫻井さんと真さんが何やら話しをしていた。
「お待たせしてすいません。」
二人に声をかける。
「大丈夫だよ。俺達が早かっただけだから。」
櫻井さんが笑顔で答えてくれる。
「そういえば…。」
私は思い出して鞄を開け、封筒を取り出す。
「地球を出てくる前に預かった書類です。私が持っているより、櫻井さんに持って頂けたほうが、万が一の時、情報が流れなくていいと思いまして。」
「ケイ…。」
櫻井さんが何か言いたそうな表情をする。
「鍵は、預かった責任もあるので私が持っています。
もし鍵を誰かに持っていかれても、隼人と私が揃わないと開かないみたいなので。
GPSもついてますし。」
心配そうな櫻井さんの顔を見つめ、
「GPSは、私にとって助かるためのお守りみたいなものですから。」
「わかった。預かるよ。」
櫻井さんも微笑みながら、封筒を手に取った。
「ケイが連れていかれることにならないようにするから大丈夫だ。」
封筒を持つ反対の手で、私の頭を優しく撫でた。
隼人と繋いでいる手が、強く握り返されたのは、気のせいじゃないわね……。
「そろそろ時間です。」真さんが声をかける。
櫻井さんの穏やかな表情が、一変して厳しい顔つきになる。
「奴らどこで狙ってるかわからないからな、油断するなよ。」
「はい。」
緊張感が走る。
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「ねえ隼人。」
「ん、なに?」
荷物をまとめている隼人が振り返る。
「櫻井さんから預かっている封筒、今日返そうと思って。」
「封筒?あぁ地図やら連絡先が入ってるやつだろ?」
「そう。万が一私が捕まった時、できるだけ身近に情報がないほうがいいと思うの。」
「鍵は、GPSがついているから、持っていないと心配だし。」
「まったく、難しい顔して何考えてるかと思ったら。」
ふわっと隼人の香りがしたと思ったら、抱きしめられていた。
「誰が近くにいるんだ?そんなに俺、信用できない?」
「もちろん、信用してるわ。」
「でも今は、最悪の事態も考えておいたほうがいいと思うの。
それに、いつも櫻井さんや真さんが近くにいれば、地図がなくても
speranzaに着いた時、改めて案内してもらえばいいことでしょ?」
「…隼人、怒ってる?」黙ってしまった、隼人の顔を覗き込む。
「怒ってないよ。確かにそうだよな。」
目が合うと、私の大好きな笑顔を返してくれる。
「俺も狙われてる身だからな。」
ギュッと抱きしめる力が強くなる。
「隼人、この先のこと考えると、私怖くてしかたがないの。」
言葉にのせると余計に強く感じる。
「大丈夫。俺が一緒だ。」
隼人から伝わる体温が、私を安心させる。
「お姫さまを守りきれない王子じゃ話しにならないからな。」
「そういえば、私はお姫さまだったわね。」
何だか可笑しくなって笑ってしまう。
「そう、俺だけの大切なお姫さまだ。」
そう言うと、優しく唇を重ねた。
「一日も早く、ケイのウエディングドレス姿を見たいからな。」
「だから、俺もケイも、こんな所で立ち止まってるわけにはいかないんだ。」
「そうね。前に進まないとなにも解決しないわね。」
「あとsperanzaまでどのくらい、かかるのかわからないが、一緒に頑張ろう。」
話しをしていると、隼人の携帯がなる。
隼人のお父さんからだ…。
「もうすぐ、Hotelをでて駅に向かう。」
「わかった。また連絡する。」
相変わらず、お父さんには愛想がない隼人。
よっぽど過去にあったんだろうなと思う。
心の傷は、自分だけにしかわからないものだから…。
私も同じ状況なら聞かれたくないし。
いつか話してくれる時が、くるまで待とうと思う。
今は、隼人と前に進むことを考えよう…。




