45 狙われる
一瞬何が起こったのか、わからなかった。
恐る恐る上を見上げると、櫻井さんと隼人が、車の反対側にいる相手と、激しい撃ち合いになっていた。
車の下から、反対側をみると、数人血を流して倒れている。
「隼人。櫻井さん。真さん。」
名前を声に出してみる。
「ケイ、大丈夫か?」
櫻井さんが、心配そうにこちらをみて、声をかけてくれる。
「ケイさん、起き上がれますか?」
真さんが、ゆっくり抱き起こしてくれる。
「どこか痛いところないか?」
隼人が銃を持ち傍らに、そして私を抱きしめる…。
「ありがとう。私は大丈夫よ。」
と言ってる自分が、本当は一番大丈夫じゃないかもしれない…。
さっきから震えが止まらない。
「震えてるじゃないか。」
足が浮いたと思ったら、隼人が私を抱き上げていた。
「隼人、肩が…傷開いちゃう。」
病院で手当てしたばかりなのに。
「このぐらい何ともない。心配するな。行くよ。」
厳しい表情で答える隼人。
「あと、真、頼む。」
「はい。了解です。」
「ケイ、隼人、中にいくぞ。」
櫻井さんと、周りを注意しながら、建物の中に急いだ。
HOTEL内のエレベーターに3人で乗り、最上階に向かう。
「隼人、下ろして。」
これ以上隼人の身体に負担をかけたくない。
「大丈夫だよ。」
「ダ~メ。」
しぶしぶ抱き上げていた私の身体を下ろす。
エレベーターが最上階につき、入り口にSPが立っている、一番奥の部屋に入る。
「とりあえず、座って。」
櫻井さんに薦められ、ソファーに座る。
ソファーも素敵だけれど、部屋にある調度品が、またため息がでるほど素晴らしい…。
「ケイ、落ちついた?」
櫻井さん、先程の銃を構えてる時にみせた鋭い表情とは全く違って穏やかな表情。
「はい。」
「それにしても、無事で良かったよ…。」
傍にきて、私の頭を軽く撫でる。
「真の判断が良かったな。」
「ほんと、そうですね。」
隼人もほっとした表情。
「何がどうなっていたのか、全くわからないわ、私。」
急な展開に全くついていけてない。
「あいつら、隼人じゃなくて、ケイを狙ってきやがった…。」
珍しく櫻井さんが、怒りをあらわにしている。
隼人じゃなくって、えっ!?私が標的になってたの?一瞬にして、血の気が引く…。
「真が先に気がついて、ケイを守ってくれたんだよな。」
そうか…。
だから真さん、抱えていてくれたんだ。
「まぁそのあとは、俺らも奴らにはもちろん、手加減しなかったが…。」
櫻井さんが窓際で、外を見下ろしている。
先程みた、血を流し倒れていた人を思い出す。
「当たり前です。正当防衛ですし。」
隼人も澄ました顔で答える。
「あいつら、なんで隼人じゃなくて、ケイを狙ったんだ?」
「わかりませんが、切羽詰まってきていることは確かですね。タイムリミットが1日しかないんですから。」
隼人が、左腕で私の身体を引き寄せる。
「ケイがいなくなれば、俺にダメージが与えられると思ったんじゃないかと。」
「でも、こちらもケイを狙う以上、どんな相手だろうと容赦はしない。」
「もちろんだ。」
「隼人、親父さんには状況伝えとけよ。」
「はい。そのつもりです。」
「それにしても隼人、いい腕してるな。驚いたよ。」
「あの現場で、対等に撃てるもんな。射撃、誰に教わった?」
「軍隊にいた方に…。」
隼人の過去に触れる。
「だよな…。怪我してても、動きが良すぎる。」
真顔で隼人を褒める。
「そんな…大したことないですよ。櫻井さんに比べたら足元にも及びません。」
「いや、そうでもないさ。」
「これから先も、先程のようなことも十分ありえるからな。心強いよ。」
「隼人の意外な力にびっくりしてますが、心強いです。」
「意外か?」
隼人がにっこり微笑えむ。
「意外というか…、旅を始めてから、驚くことばかりよ、隼人。」
本当に、次から次へと出てくる。
地球にいるだけだったら、隼人の持っているものを、知ることがなかったかもしれない。
「俺に惚れなおした?」
引き寄せた腕の力が強くなる。
「そうね。」
話をしていた所に、扉をノックする音がする。
「報告にまいりました。」
たぶん、SPだろう。
隼人の表情が厳しくなる。
部屋に入ってきた一人の男性。
真さん同様、鍛え上げられた身体をしている。違うのは、鋭い眼差し…。
ちらっと私と隼人を見る。
「二人同席でも構わないから、報告してくれるかな。」
櫻井さんが気がついた様子で、SPに声をかける。
「はい。承知しました。」
「駅で、隼人さんを狙ったのは、間違いなく隼人さんのお父さんの関係者が雇った集団で。
この辺りでは、1、2を争うくらい有名な請け負い屋で、また腕のたつ奴らばかり揃った集団です。」
1日で、勝負つける気いっぱいの相手なのね…。
隼人が悪いわけじゃないのに。
無意識にため息がでる。
「ケイ、大丈夫だよ。」
隣の隼人の言葉は、私の心に響く…。
これからどうなるか、不安で仕方がない。




