44 entrata/追跡
「2時間後に『entrata』に列車が緊急停車するそうです。」
tenerezzaの王宮の一室で、話し声が聞こえる。
「entrataに緊急停車?」
「はい。明日までの予定で、列車の点検のためだそうです。」
「不自然だな。」
「…確かに。」
「何かあったのか?」
「今のところ、特に報告は来てませんが。」
「彼女も、その列車に乗ってるんだろ?」
「はい。」
「entrataか…。」
「とりあえず、entrataでの人数を増やして、引き続き様子を報告するようにしてくれ。」
「はい。承知いたしました。」
側近が、部屋を後にした。
窓際に立ち、空を見上げ呟く。
「鍵はもちろん欲しいが、それ以上に…。」
いつの頃からか…想いは募る。
「緊急停車か。気になるな。」
その時、入口をノックする音が。
「失礼します。」
側近が慌てて入ってきた。
「どうした?」
「entrataの駅で襲撃事件があったようです。」
「なにっ!?」
「彼女と地球から一緒に来てる男が撃たれました。」
「彼女は?」
「今のところ、無事のようです。」
「そうか…。」
ホッとするのもつかの間、
「相手は?」
「まだわかりません。今調べています。」
「早急に、報告してくれ。」
「承知しました。」
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「真、車はまだ1台か?」
櫻井さんが、宿泊先に向かって運転をする、真さんに尋ねる。
「いいえ、気になる車が数台…。」
「だよな。」
「櫻井さん、どういうことですか?」
二人の会話が気になり櫻井さんに声をかける。
相変わらず、私の右手には、温もりのある櫻井さんの左手が重なっている。
「病院からついてきたのは1台のはず、なんだが。」
「上からの指令なのか、人数が増えてきてるみたいなんだ。」
「そうなんですか?」
不安が増してくる…。
「entrataにかなりの人数を置いてあるようですね。」
真さんもミラーを見ながら答える。
「確かに、さっきから似たような雰囲気のが数台ついて来てるな。」
隼人も気がついていた様子。
「隼人も気がついてたか?」
「はい。」
気がついてなかったのは、私だけか…。
「ふぅ~。」
身体に溜まっている空気をおもむろに吐き出す。
それだけで、自分の中で、張り詰めた空気が減ったきがする。
「どうした急に?」
隼人が不思議そうに私に尋ねる。
「なんだか身体の中がいっぱいだったから吐き出しただけよ。」
この、状況の中にいると、身体が固まってくるきがしたから。
私、なにも力になれないし…。
「なんだよそれ。」
隼人もクスクス笑いながら、私の頭を撫でる。
「心配しなくても大丈夫だ。」
櫻井さんの繋いでいる左手が、私の右手を優しく握り返す。
「あいつらには、指一本触れさせない。」
隼人も頷く。
「今度手を出したら手加減しない。」
櫻井さんの気持ちが、手から伝わってくる。
彼は、本気だわ…。
緊張感の中、窓の外をみる。
desertoの町より、人も多く、賑やか。
こんな騒動に巻き込まれなかったら、もっとゆっくり街を散策できたんだよね。
まぁ、今更自分の決めたことを覆す訳にいかないし。
speranzaに着くまで、愚痴は言うまい……。
「ケイ?」
櫻井さんの声にびっくりする。
「あっ、ごめんなさい。」
「別に謝らなくてもいいんだよ。」
にっこり微笑む。櫻井さんの笑顔も、隼人に負けないくらい素敵なので、ドキドキする…。
「急に黙ってしまったから、どうしたのかと思ってね。」
「考え事してたから…。」
「ケイ、心配事ならちゃんと言えよ。一人で悩むな。」
隼人はいつも、私の欲しい言葉をかけてくれる。
「ありがと。大丈夫。」
笑顔で返す…。そう、わたしが凹んでいるわけにはいかない。
「もう少しで着くが、隼人を狙った仲間も、まだそこらへんにいるかもしれない。」
「1泊で、かたを付けようとしてる奴らだからな。」
「気をつけて降りるように。」
「はい。」
隼人と私は頷く。
数分後、宿泊先のHOTEL前に車は着いた。
櫻井さんが降りる際、ずっと繋いでいた私の手を、残念そうに離した。
隼人も降りるため、離したので、身体がフリーになる。
櫻井さんが降りた後、私も車からゆっくり降りた。
その時、
「ケイさんっっ。」
真さんの叫ぶ声。
数発の銃声音…。
気がついたら、地面に真さんに抱えられ倒れていた。




