42 entrata/襲撃
窓から外を覗くと、進行方向にentrataの街が見えてきた。
もうすぐ到着するはず。
これから何かが起こるんだろうか…。
思い違いで何もなければその方がいい。
隣に座る隼人も、装備含めて準備万端、厳しい表情で櫻井さんと電話で打ち合わせをしている。
今回の旅で、隼人の意外な過去を知って、驚いた。
オフィスで働いていた頃には、思いもつかなかったし。
私も何があるかわからないから、荷物は最低限で軽く、身を守るものも装着した。
鍵ももちろん、取られないように隠し持つ。
準備が終わった所で、ちょうど列車もentrataの駅のホームに滑りこんだ。
外を見ると、櫻井さんと数人の男性が待っている。
「隼人、ホームに櫻井さんがいるわ。」
「そうだろ。30分位前に着いたみたいだから。」
『entrataに到着です。ご迷惑おかけして申し訳ありません。現地時間、明日の20時に出発する予定です。よろしくお願いいたします。』
ジョニーさんの放送が入った。
「明日の20時か。」
隼人が時計を見ながら呟く。
「よし。ケイ行くよ。」
私を抱きしめ、そっと唇を重ねる。
私も抱き着き隼人の体温を感じる。
そして私の右手に、しっかり隼人の左手を重ねられた。
列車の出口付近でSPを確認し、周りを注意しながら外にでる。
「隼人、ケイ。」
「櫻井さん。」
ホームで待ってくれていた、櫻井さん。
desertoで合流した時とまた違う雰囲気のスーツを着こなしている。
こんな非常事態でも、やっぱりカッコイイなと思う。
「よかったよ、無事で。」
「顔見るまで、心配だったから。」
ふわっと櫻井さんの手が、私の頭を撫でる。
「この列車の出発時間は、現地時間で、明日の20時だそうです。」
隼人が伝えると、
「…約1日で決着つけるつもりかよ。よっぽど自信があるんだな。」
櫻井さんが唸る。
「とりあえず、移動しよう。ここにいても危険だ。」
…と、移動し始めた矢先、
「隼人危ないっ!!」
櫻井さんの声と同時に銃声の音がなり、隣の隼人が倒れ込む。
「はやとっっ。」
血が流れる肩を押さえ、顔を歪める隼人。
一瞬何がなんだかわからない。
「奴を追えっ。絶対逃がすな。」
櫻井さんの怒声が響く。数人のSPが、隼人を撃った奴を追う。
私はバックの中から、布を取り出し、隼人の右肩の止血をする。
「隼人、大丈夫?」
「少しかすっただけだ。ケイは何ともなかったか?」
自分より私を気遣う隼人。
「人のこと、心配してる場合じゃないでしょ。」
「隼人、もう少し逃げるの遅かったら、心臓に打ち込まれてアウトだったぞ。」
恐ろしいことをさらっという櫻井さん。
「ありがとうございます。助かりました。良く気がつきましたね。」
「隼人の見えない角度の所で光ったからな。」
さすが、経験者は違うな…と隼人は思う。
「早く傷の処置をしないと。隼人歩けるか?」
「歩くのは、大丈夫です。」
ゆっくり起き上がり、私も隼人の左側で身体を支える。
駅のホームから出口へ抜けると、車が待っていた。
「真、奴ら捕まえたか?」
櫻井さんが、車の横に立つ男性に声をかける。
あれ?この男性同じ列車に乗ってなかった?
降りる際、見かけた気がする…。
「はい、先程捕まえました。」
「そうか、後で詳細を聞く。」
「先に、病院まで行ってくれ。」
「承知しました。」
車の後ろの座席に、櫻井さんと私と隼人が乗り、運転席には、先程、真さんと言われていた男性。
今は、とりあえず何も聞くまい。
隼人の傷の治療が先。
「隼人痛む?」
私の左側に座っているので、右肩の血が滲んでる布が目に入る。
「このぐらいの傷なら大丈夫だよ。」
左手で、私の頬を撫でる。
「それにしても、ケイ、止血の布、よく巻けたな。普通は知らないはずだけど。」
櫻井さんが右隣で尋ねる。
「母が看護士なので、小さな頃から知っていたというか…。」
「転んだ時とか、自分で処理出来るように、母が教えてくれたんです。」
「なるほど。二人とも身を守る方法を、親がちゃんと教えてあったんだね。」
櫻井さんが感心する。
「俺も、初めて知ったよ。すごいな。」
隼人も答える。
「そんなたいしたことないわ。ほんの応急処置程度だから。」
「知識があるのとないのとでは、全然違うよ。心強いな。」
櫻井さんの言葉に、隼人も頷く。
話をしてる間に、病院に着いた。
処置室に隼人が入ると、待合室には、櫻井さんと私だけになった…。
「さっき、最初、狙われたのがケイだと思ったんだけど、角度が違ったからすぐ隼人だと判ったんだ。」
「隼人には悪いが、ケイが無事でよかったよ。」
と櫻井さんが言ったあと、私の頬に、キスをした。
隼人と違う柔らかな感触にびっくりする。
「隼人もケイのこと愛してるんだと思うが、俺もケイのこと忘れられないくらい愛してるから…。」
「櫻井さん…。」
「たぶん、隼人も俺の気持ち気がついてると思うよ。」
と、苦笑いする。
「わかっていたと思うが、車運転してきた真は、俺の側近なんだよ。」
やっばり…そうか。
「彼にも俺の気持ちばれていたから。」
「えっ?」
「俺の気持ち、珍しく外に洩れてるらしい。」
「今までの俺には有り得なかったこと…。」
「立場上、気持ちをコントロールしないとやってられないところだったし。」
「それを知ってる彼は、今回の俺の気持ちの洩れ方には驚いてるよ。」
「ケイ、ごめんな。困らせて。でも、これは俺の気持ち。」
「隼人もそうだと思うが、俺も全力でケイを守るよ。安心して。」
どう答えていいのか、わからなかったので、無言で頷いた。
しばらくすると隼人が、処置室から出てきた。
「大丈夫?」
隼人はにっこり微笑みながら、
「たいしたことない。ケイが無事ならそれでいいよ。」
「そんないいことなんてないわ。」
「もし、ケイが今回撃たれていたら、やったやつ今頃生かしておかなかったね。」
「隼人の言う通り。文句なしだね。」
櫻井さんも頷く。
「さてと、いつでもここにいるわけにはいかないから。予約してあるHOTELに行こうか。」
「はい。」
3人で、外で待つ真さんの所へと向かうため歩きだす。
さらに近くに、狙う奴がひっそりといることを、3人はまだ気がついていない・・。




