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星の降る街に  作者: 霧島
第4章
34/92

34 救出

「隼人、早くこれに乗って。」


ホテル前に着いた、一台の車に櫻井と共に乗り込む。


「空港まで急げ!」

櫻井はイライラの気持ちを抑えきれず、運転手に伝える。


「承知しました。」

運転手はすでに状況がわかっているのか、冷静に答える反面、出発と同時に猛スピードで走り始めた。


隼人は、二人の上下関係のやりとりと、車内の凄さに圧倒されている…。


「すごい…。」


一般レベルの家庭より上の生活をしてきていた隼人でさえ、お目にかかったことがない、車内の広さや豪華さ。


ちらっと横に座る櫻井をみる。


イライラはあるだろうが、落ちついた雰囲気で、ナビを追っている。


やっぱり…櫻井さんもただ者じゃないし、ケイの後ろにあるものが、大きすぎる。


隼人は、どうしてこうなってしまったのか、たまらなくなって大きなため息をついた。


「どうした?」

櫻井が尋ねてくる。


「いや…。ケイが心配で。大丈夫かと思って。」


「まだあいつら空港には、着いていないが、特別な入り口含めて、空港の入口全部SPで押さえてあるから、先には進めないだろう。」


「特別な入り口って?」

そんなの見たことがない。


「空港内で、個人で所有する宇宙船がとまる所があるんだが、そこに行くための入り口だよ。」


「たぶん、あいつら、こっちに入って来るはずだ。」

確信したように答える。


「隼人、着いたと同時に、奴らからケイさんを取り戻しに行くから準備しておけよ。」

と言いながら、身体にいろいろ装備を付け始める。


「櫻井さんって、何者なんですか?」

緊急事態だけれど、準備をする櫻井に聞かずにいられない…。


「ケイさんと同じこと聞くんだな。」

クスッと笑う。


「何者…かは、いずれ後からわかってくることだと思うが。」


「そうだな。今まで戦ってきて、銃撃戦では負けたことがないかな。」

ピストルを持ち、弾を込め準備のできた櫻井は、すでに先程とは顔つきが違う。


一瞬、言葉を失う……。


「ケイさんは、必ず取り戻す。」

櫻井の言葉に、強く頷いた。



「もう10分ほどで、空港に着きます。」


「わかった。」


私を連れ去った、男たちが、話をしている。


「あと10分ほどで着く。出発できるようにしておいてくれ。」

一人の男がどこかに連絡をとっている。


「たぶん、一緒にいた男も目が覚めて追ってきてるだろうが、その前に出発する。」


「もうひとり男がいましたが、大丈夫でしょうか?」

「たぶんな。たいしたことないだろう。」


隼人と櫻井さんの話だ…。

もうひとりの男って、櫻井さんのことだよね。

彼のこと知らないんだ。

speranzaの関係者なのに…。


今、きっと二人で、追ってきてくれている。

少しだけ、心に生きる希望が出てくる。


(隼人……助けて。他の星に連れていかれちゃう。)

必ず、何があっても助けに行く…と言ってくれた彼の温もりを、思い出す。


私も、黙って連れて行かれるわけにはいかない。


でも、どうしたらいいの。

そっと外をみると、空港らしきものが見えてきた。


そうだ。大声あげて抵抗しよう。

身体も、男たちにわからないように、そっと動かしてみる。


大丈夫。動ける……。


隼人たちが、見つけてくれるように。


櫻井さんがいれば、SPも空港内にいるはず…。


鍵を握りしめる。


必ず、speranzaに行くんだから。

ここで連れて行かれるわけにはいかない。


(隼人、櫻井さん、私を見つけて…。)


車が段々とスピードが落ちてきた。


もう少しだ…。


心臓が飛びだしそうな勢いで、脈を打っている。


私が頑張らなきゃ…。


そして、車が止まった。


「よし、降りるぞ。」



男が後ろにいる私に声をかける。

「降りるぞ。一緒にきてもらう。」


私も、まだ虚ろなフリをして、ゆるゆると起き上がる。


「ここは?」


「空港だ。今から宇宙船に乗る。」


「なぜ私があなたたちと一緒に行かないといけないのよ。」


「tenerezzaという星で、待っている人がいる。」


「私は、逢う気持ちもないし必要ないわ。」


「貴方がなくても、逢って貰わないと困る。こちらは用があるのでね。貴方と、貴方の首にかかっている鍵に…。」


(やっぱり鍵か。)


「私はいやよ。」


男が強引に連れて行こうとするので、


「いや~~。誰か助けて。連れて行かれる~。」


引っ張られながら、大きな声で反抗する。


「黙っていけなければ…。」と男が言った瞬間、


「パンッ!」


「ああっ」

私の手を掴んでいる、男の足から血が流れている。


「ケイっ。」

声のする後ろを振り返った瞬間、櫻井さんが、私の手を握っていた男を思い切り殴り倒し、そして私を抱きしめた。


目の前では、隼人がもう一人の男を投げ飛ばし、ピストル口を、男の頭に当てていた。


「大丈夫だったか?」

櫻井さんが私に尋ねる。


声にならなくて、震えながら頷く。


「間に合ってよかった。」

顔を上げると、微笑んでいる。


「櫻井さん…。」


「ケイ…。」

櫻井さんが、私を包むように優しく抱きしめ、額に軽くにキスをした。

不思議…とっても居心地がいいの。



「よくも俺の大事なケイを連れて行こうとしてくれたな。いい根性じゃないか…。」

目の前で、ピストルの引き金を引きそうになっている隼人に、


「隼人まてっ。そいつを殺っても、何も解決しない。生かせっ。」

それを聞いて、隼人も我に返る。


「こいつら連れて行って、はかせろ。」

櫻井さんがいうと、SPが数人きて、二人を連れて行った。


残ったのは、呆然としている私と、隼人と櫻井さん。


男たちが行ってしまうと、隼人が私の所に走ってきた。


「ケイっ」

今度は隼人に抱きしめられる。


私も、手を伸ばして隼人に抱き着く。


「はやとぉ…。怖かった…。」

隼人の体温を感じた途端、涙が溢れてきた。


「無事で…よかった…。」

隼人も、力いっぱい抱きしめる。


「必ず助けに来てくれるって信じてたけど、でも…。」

涙で言葉にならない。


「わかってるから、喋らなくていい。」

大きな手で、頭を撫でてくれる。

やっぱり隼人がいい…。



「隼人、ケイ、ここにいるのはまずい。とりあえず車に行こう。」

私の隣に櫻井さんがくる。


「はい。」


三人で歩きながら、話をする。


「櫻井さん、ありがとうございます。」

立ち止まって、櫻井さんに頭をさげお礼をいう。


「当たり前のことしただけだよ。」

櫻井さんの手が、私の頭にのる。


「責任があるからね。」

「でも、無事でよかったよ。」


「これから奴らの正体がわかってくるだろうけどね。でも、ただじゃおかない。」

意味深なことを言う櫻井…。


「今度は足だけでは、すまないから。」


「あれは櫻井さんが撃ったんですか?」

撃たれた男の足を思いだす。


「命が助かっただけありがたいと思って貰わないとね、奴らには。」


「ケイの寝込みを襲っておいて、薬で眠らせて、連れていったんだから。」


「本当なら、殺されても文句はでないと思うよ。」


「今は、あえてとどめを撃たなかったけど。」


「えっ?」

サラリと言う櫻井さんの顔をみる。


「気持ちはとどめを撃ちたいくらいだったけどね。隼人と一緒で。」

隼人をみると、難しい顔しながら、頷いている。


「死人にくちなし…だから、死なれたら奴らの思惑がわからなくなるだろ?」


「だから生かしたんだ。」


「聞いたあとは、それから考えるかな。」


「!! 」

私も、隼人も返答出来ずに固まる。


「これが、駆け引きだよ。」


「国を守るための…ね。」


「そういえば、男の話では「tenerezza」に行くって言ってたわ。」


「tenerezza?ほんとか。」

真剣な表情で、私をみつめる。


「間違いないわ。車を降りる時言ってたもの。」


「そうか・・・。」

しばらく考えてから、


「また違う方向で動くな・・これは。」



「まだ今回のは序の口かもしれないが。」


ふと、悲しそうな顔をしながら、


「騒動に巻き込んでしまって、二人には申し訳なく思っている。」


「俺がここにきた以上、全力で命は守る。」



「櫻井さん?最初にsperanzaに行くと決めたのは、私たちだわ。」


「そう。俺らはた櫻井さんに言われたから宇宙にでてきたわけじゃない。」


「鍵を届けるのも、受けたのは俺ら。」


「嫌ならうけなきゃよかったんだから。」


「まぁ、婚前旅行に、これだけの騒動に巻き込まれるのは想定外だったけどなぁ…ケイ。」


「そうね。」


「でも櫻井さんのだけの、責任ではないわよね。」


「あえていえば、連帯責任…ね。」


「そうだな。仕事ならひと騒動あるパターンだ。」

二人でクスクス笑う。


「二人とも…。」


「後戻り出来ないなら、speranzaに向かわなきゃ…ね、櫻井さん。」


櫻井も笑顔になる。


「託したのが、ケイと隼人でよかったよ。俺の人選は間違っちゃいなかった。」


「そういえば、櫻井さん。いつのまにか、俺ら名前で呼んでるよね。別にいいけど。」


「そうだな。他人と思えなくてな…。」

思わず苦笑いする。


「さて、今夜こそさらわれないように、臨戦体制を敷くか。」

櫻井さんの顔つきが変わる。


「まだ、終わったわけじゃないからな。」

気が引き締まる。


「別のHotelを手配した。荷物は全部動かしてあるから、そちらに向かおう。」


まだ旅は始まったばかり。


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