33 拐われる
静けさのなか、非常ベルが突然鳴り響く。
櫻井が飛び起き、廊下にでる。
隣の部屋から廊下に流れてくるけむり…。
「ケイさんっ、隼人くん。」
呼んでも返事がない。
部屋の扉を開けると、ベッドの下で倒れている隼人がいた。
「はやとっ。大丈夫か。」
身体を揺すり、声をかける。
「さくらいさん…、ケイが…。」
「どうしたっ?」
「…奴らに連れていかれた。」
やっと起き上がる。
「奴ら?」
「albaの男たち…。」
「あ……あいつらか。」
不意に、櫻井が取り出した画面で、赤い点滅が移動している。
「鍵のGPSが生きてる。」
「あいつら、空港に向かってる。星から出るつもりだ。」
「隼人、追うぞ。」
「絶対逃がさない。」
櫻井さんが走り出す。
隼人もふらつきながらも、立ち上がり、後に続く。
移動中も、櫻井は片手にナビを持ち、反対側で携帯電話で話をしている。
「連れだしたのは、albaで襲った奴らだ。今空港に向かっている。絶対星からだすな。逃がすなよ。」
非常事態にも関わらず、冷静に、次々と的確な指示を出していく櫻井。
この人、ただ者ではない…走りながら、隼人は思った。
この人が動き出すということは、「speranzaの国」自体が動くのか。
バックが大きすぎる・・。
「ケイ、無事でいてくれ……。」
祈るような気持ちで、空港に向かった。
意識が少し戻ってきた頭も、朦朧としてるので、自分がどうなっているのかわからないが、
歓迎できる場合ではないことは確か。
隼人の腕の中で眠っていて、それからどうしたっけ……。
そうだ。
大きな音で目が覚めて、すごい煙が立ち込めている中、目の前で、隼人が男と組み合っていたんだ。
「はやと!こっ、この人albaの時の…。」
「ケイっ、危ない!逃げろ。」
ふと、気配がしたと思ったら、私の目の前にはサングラスの男…albaで私を襲ったもう一人の男がいた。
口に何か当たったと思った瞬間、意識をなくしてしまった…。
隼人、大丈夫だったんだろうか。心配になる。
彼も、狙われている身だから。
無事でいますように・・。
「『tenerezza』にそのまま向かう。あの方には、随分待って頂いているので。」
私から、少し離れた所で、男達は話している。
私の意識が戻ったことに、まだ、気がついていないみたい。
誰が待ってるの?
この鍵のGPSが生きていてくれれば。
胸元の鍵を握り締める。
櫻井さん…。
気がついて……。
隼人…助けて…。




