32 一目惚れ
「ああは言ってみたものの、やっぱり近くにいても、心配だよな…。」
部屋に戻った櫻井がソファーに座り、天井を見上げ呟く。
勢いでケイに気持ちを伝えてしまったことには、後悔はしていない。
相手はいても、自分の本心だったから。
本来は、地球にいなければいけない立場である。
でも、とりあえず今は、優先順位でこちらを片付けないと…と思うのは表面的で、
本当のところ、思いのほかトラブルがおおごとになってきているケイ達が心配で、
無理を言って、地球を出てきてしまった。
鍵を預けた責任感だけ…でなく。
気がついたら、彼女のことを無意識に想っている自分がいた。
いつから惹かれ始めていたのかわからない。
もしかしたら、初めて店に訪ねてきた時…か。
一目惚れ?
「俺らしくないな…。」
思わず苦笑いをする。
「今夜、明日の夜、desertoで二人を守りきれるかが勝負…だな。」
「あれだけ昼間に動けば、どちらの相手も、間違いなく動き出すはず。」
SPたちと連絡をとりながら、二人が向こう側にいるであろう、壁を複雑な思いで、眺めていた。
「隼人、ほんとに大丈夫?」
今、ベッドの中で、隼人の腕の中に、すっぽり抱え込まれている。
「なにが?」
「なにが?って、隼人すごい人達に狙われてるじゃない。」
「話しを聞いて驚いたわ。」
私も隼人に抱きつき、抱き合う。
「親父から、「今『pianeta ピアネータ(運命)』という星を、開拓をしようという話がでてるが、
俺は反対なんだよな、その話。」と、少し前に聞いたことがあってさ。」
「まぁ今回のが、その関係の話なのかどうなのか、改めて親父に聞くわけにもいかないし。」
「これはTOP SECRETの話だから、もちろん、櫻井さんにも話せない。」
「そうだよね。櫻井さん達だって、何処まで信用できるかわからないし。」
「たしかに、この間の列車の奴は過去に親父の近辺にいた奴だから、仕事がらみは間違いないんだけどな。」
「俺の方は、少しづつ相手が見えてきている。」
抱いてる腕で私を引き寄せ、優しく唇を重ねる…。
「ケイは相手が、未だにはっきりしないし、狙われる規模の大きさは、俺より数倍上だ。」
「バックだけは、無駄に大きいからな…。」
隣の櫻井さんがいる側の壁を見つめる。
「こうやって櫻井さんが、動き出してきているのが間違いない証拠だよな。」
「そうね。本来ここにはいないはずの人、だもの。」
胸元にある鍵を握りしめる。
「結局speranzaに行って、この鍵で、開けるまで旅が終わらないのね…。」
嘆く私を、言葉なく、隼人が抱きしめる。
「あの一枚の張り紙で、国を背負って追われるようになるなんて、夢にも思わなかったわ。」
「自分で決めて、地球を出てきたんだから、仕方ないのかもしれないけど。」
「でも、俺個人としては、ケイとこうやって一緒にいられるようになったのは嬉しいよ。」
「そう?」
「変わらない生活していたら、まだ日々、どうしようか、悶々としてた。」
「隼人が?信じられない。」
なんだか可笑しくてクスクス笑ってしまう。
「今までもずっと言えなかったんだし。ありえる話だよ。」
ため息をつく…。
「私も、結局は田舎に帰って母親に言われて、お見合いでもして結婚していたかもしれない。」
「う~ん。でも……やっぱり私のなかじゃありえないか。」
「好きでもない人とは、結婚は無理だわ。」
「出会いがなかったら、ずっと仕事して、死ぬまでお一人さまだったと思う。」
「そうやって考えたら、今の厳しい追われる状態でも。」
「隼人がこうやって傍にいてくれるから、私は幸せだわ。」
見上げると、隼人もにっこり微笑んでいる。
「俺もだよ…。」
抱きしめられ、居心地のいい、隼人の腕の中で眠りについた。
夜も更け、皆が寝静まる頃事件は起こった。




