31 過去の女
HOTELを出てきてから、少し歩いてきた所に、お店があった。
スタッフに案内され、テーブルに着き、慣れた手つきで櫻井さんが注文し、話をしていた時、
近づいてくる女性が一人。
思わず身構えると…。
「あら、隼人じゃない。ここで逢えるなんて。嬉しい~。」
「えっ?」
隣の隼人を見ると、びっくりしていた…。
「華、なんでここにいるんだ?」
「私?旅行中なの。この星で乗り換えだから。」
「それにしても、久しぶり~。」
二人で話をしていて、私は視界に入っていない…まぁいっか。。なんて思っていたら視線を感じて、正面をみると、にっこりと微笑む櫻井さんと目があった。
「席外そうか?」
頷くと、櫻井さんに手招きされたほうへ移動した…。
「面白くないでしょ?他の女性と話をしてて。」
頭に体温を感じて、顔を上げると、櫻井さんが私の頭を優しく撫でていた。
「面白くないですね…たしかに。たぶん彼女だった人でしょう。」
「彼、モテるし今までも彼女がいても不思議じゃないから…。」
と答えると、
「この先、大丈夫かい?」
「同じような場面、また出会うかもしれない。それでも気持ちは変わらない?」
「僕に、気持ちを移してくれてもいいけどな…。」
思いがけない言葉に、どう答えていいのかわからない。
「櫻井さん、またそんな冗談を。私、困っちゃいます。」
「うぅ~ん、やっぱり冗談に取られるか。。」
「当たり前じゃないですか。櫻井さんなら、周りに素敵な女性がたくさんいるでしょう?」
「たぶんいるんだろうけど…。」
私を見つめる櫻井さんの真剣な視線から離れられない。
「ケイさんほどの女性はいないかな…。」
「櫻井さん、私…。」
「あ、隼人くんがこっちに気がついた。」
「すまない。惑わすようなこと言って。でも気持ちは嘘じゃないから…。」
「必ず、speranzaに行こう。ケイさんを守るために、僕もきたんだから。」
ふわっと微笑んだ櫻井さんに、戸惑いを隠せなかった。
「ケイ。」
隼人がこちらに走ってきて、私を力いっぱい抱きしめる…。
「話は終わったの?彼女と。」
「ああ。」
「気がついたらケイがいなくて焦った。」
「話が盛り上がってたみたいだから、席外してたのよ。」
「元彼女さん?」
たぶんそうだと思ったけれど、聞いてみる。
「もうずっと前のな。」
「そっか…。」
「ケイ?また良くないこと考えてるだろ。」
「そんなことないわ。」
「部屋に帰ったら、ちゃんと説明するよ。気になったんだろ?」
黙って頷く…。
「やっぱり。そうだと思ったよ。」
やわやわと私の頭を触る。
「櫻井さん、すいません。気を使わせてしまって。」
「大丈夫。ケイさんが心配そうな顔してたから席を外しただけだから。」
「ねっ。」
私の顔をみて微笑む。
「さ、食事に行こう。何のためにきたのかわからない。」
「追ってる相手方は嬉しいだろうけどね。」
途端に緊張感が走る。
その後、食事を終えてHOTELに帰る道中、櫻井さんが前を向いたまま、話をする。
「SPは今まで以上に数はいるが、100%の安全保障はない。」
「相手がまずどんな手を使ってくるかわからないし。」
ふいに、私の顔を見つめる櫻井さん…。
「ケイさんか隼人くん、どちらが目的なのかわからないし。」
「例えば、さっきの隼人くんの元彼女?のように、知り合いを接触させる場合も考えられる。」
すべて疑っていけってことか…。
「はぁ~~。」
無意識にため息をつく。
「俺の傍にいればいい。」
繋いでいる隼人の左手が強くなる。
「うん。」
私もしっかり握り返す。
HOTELに戻り、部屋に入る前、櫻井さんが
「SPは周辺にいるが、何かあったら大声だすか、部屋の壁を叩け。すぐ駆け付けるから。」
「部屋の鍵はあってないようなものだから。気をつけて。」
「わかりました。」
櫻井さんと別れて、部屋に戻ると、私の後ろから隼人が抱きしめる。
「さっき、ケイがいなくて焦ったよ…。」
「だって二人で話していて、私なんて視界に入ってなかったじゃない?」
少し拗ねてみる。
「ごめんな。」
私を抱きしめる力を緩めて、隼人と向き合う。
「あんな所で逢うなんて思わないからびっくりしてさ。」
「ケイのことも聞いてきたから、俺の婚約者で、地球に戻り次第結婚するんだって言ったら、びっくりしてたよ。」
「あいつは、学生時代に付き合ってたんだ。卒業と同時に別れたけどな。」
「そうなんだ。」
「入社して仕事を始めたらお互いに自然と離れた。あいつすぐ彼氏が出来たって聞いたし。」
「俺も、すぐ気になる子ができたし…。」
「ん?隼人、気になる子いたの?」
「そう、同期にね。」
顔を上げると同時に唇が重なる…。
「長かったよ。ここまでになるのが。」
「私…だったの?」
「そうだよ。入社してからずっと気になっててさ。」
「同期だから、下手に言って断られたら、仕事にも影響するし。」
「かと言って、ケイに手をだすやつは、許せなかった…。」
「日々葛藤してたんだよ。俺も。」
「そうは見えなかったけどな。モテモテの隼人くんはいつも周りに男女問わず人がたくさんいて。」
「私が入るスキなんてなかったし…。」
「表面的にはな。一応営業だったし。」
「でも、ケイに彼氏が出来た時の落ち込みは凄かったぞ。食べ物が喉に通らなくて、痩せたし…。」
「そうなの?」
「でも考えたら容赦ない厳しさが増したのは、あの辺からか…。」
「たぶん、そうだな。」
「今はこうやって、抱きしめることが出来る。」
「そういえば、さっき櫻井さんに何か言われた?」
「別に、なにもないけど。慰められただけ。」
「そっか…。ならいい。」
「どうしたの?隼人」
「二人でいたから気になってさ…。」
「もしかして、妬いてた?」
「そんなことない…なんて言えない。」
突然、私をベッドに押し倒し、激しいキスをしてくる。
「なんだか、いい雰囲気だったからさ。。」
「隼人、私のこと信じられない?」
彼の目を見つめる。
「信じてるよ…。」
「でも、俺以外の男には、触れさせたくないんだ。」
「隼人…愛してる。」
手を伸ばして抱き着く。
「俺も…、愛してるよ。」
ぎゅっと私を抱きしめてくれる。
長い夜になるのか、どうなのか・・。
二人は、今夜も、これからも、離れることはない。
今、このとき、二人の命は狙われているけれど、思いは離れることはない・・。
ずっと、一緒で・・。




