29 deserto/再会
「あ、櫻井さん。」
「隼人くん、ケイさん、無事着いたね。」
改札口を抜け、指定の待ち合わせの場所に、数人の人たちと話をする彼がいて、笑顔で迎えてくれた。
櫻井さん本人だけれど、立っている姿、地球でのお店で会った時の雰囲気と全く違う…。
スーツを着こなして、落ち着いた感じ。隼人とは、また違った大人の格好よさがある。
見惚れてしまうくらい…。
たぶん、これが櫻井さんの本当の姿なのね。
通り過ぎる人達が、話をしている格好いい男二人に、振り返っていく。
目立つな……。
私には、隣に立つ容姿はない…。
二人から少しづつ離れている…と。
「こら、離れるな。」
隼人に、腕を掴まれた。
「だって一緒にいると、すっごく目立つんだもの…。」
「別に気にしなきゃいいだろ。」
「そういうわけには…。」
「それより離れて、ケイがどっかに連れて行かれる方が困る。」
すでに、私の右手は、隼人の左手に捕まっていた。
「ケイさん、隼人くんの言う通りだよ。」
「腕っぷしのある、二人も男がいて、目の前で連れて行かれたなんて、冗談にもならない。」
「まぁそうなったら、手を出した奴ら、ただじゃおかないけどね~。」
恐ろしいコメントをさらっとはいて、にっこりと微笑む櫻井さん。
隣で隼人も、大きく頷いている。
「櫻井さん、何者なんですか?」
前から疑問に思っていたこと、ストレートに口に出してみる。
「俺?」
「はい。」
「うーん…。いずれわかるからその時まではシークレットだね。気になる?」
櫻井さんとのやりとりに、隣で隼人が怪訝な顔をしていて、繋いでいる手にも力が入る…。
「そうですね。私、仕事をしている時も、相手の肩書きとかで判断することもなかったですし。今もそうですが。」
「ただ…。」
「ただ?」
「何故、今のこの状態になってきて、地球にいなくてはならなかった、櫻井さんが動き始めたのか…が気になります。」
「そうか、なるほどね。」
「まぁ、ここで立ち話をするのもなんだから、場所変えようか。」
「隼人くん、宿泊先に行こう。」
「櫻井さんも一緒の宿泊先ですか?」
隼人も気になっていたので尋ねる。
「そうだよ。違う所だと思ってた?」
「はい。」
「ここで、別々に泊まったら、俺がここにきた意味がないし、それに、そうしなくちゃいけない理由がないだろ?」
「そうですね。」
「じゃあ、移動しよう。」
そして、隼人と私に向いて表情は変えず、囁くような声で、
「たぶん、追いかけてきたい人も、ちゃんと一緒について来るだろうから…。」
一瞬、なんの事か私には解らなかったけれど、隼人は頷いて、
「そうみたいですね…。」
と答えてから、私の手をしっかり握りしめた。
宿泊先にチェックインした後、それぞれに部屋に移動する。
移動しながら、櫻井さんに
「二人とも、荷物多いんだね。列車に預けてこればよかったのに。」
と、言われ隼人が、
「何が起こるか、解りませんからね。荷物は持ち歩くようにしてますよ。」
と、即答した。
「そうだね…。」
櫻井さんも、隼人の言いたいことが、何となく解るみたいで。
「部屋に荷物置いたら、隣の部屋においで。話をしよう。」
「さっきの、ケイさんとの話の続きもあるし。」
「わかりました。後ほど伺います。」
櫻井さんと別れて、部屋に入り、二重ロックをかける。
隼人は窓からそっと外を見渡す。
私達の部屋の両サイドは、櫻井さんと、櫻井さんと一緒に来た方達の部屋なので、心配はないとは思う。
でも、外と入り口は警戒しないと…。
「隼人、外どう?」
「まだ昼間だから、大丈夫だよ。でも、夜は警戒しないと、だな。」
「あれだけ、駅で話してりゃ、向こうもそれなりに考えてくるだろ。」
「櫻井さんはそれが目的だったみたいだし。」
「えっ、そうなの?」
「たぶんな…。直接聞いたわけじゃないがそんな気がする。」
「自分たちを標的にして、狙ってきてる奴らの状況を見たかったんだろう。」
「その上で対策をねるつもりか、もう始まっているか…。」
「攻撃は最大の防御…。流石だね、櫻井さん。無駄がない。」
「全然気がつかなかった、私。。」
何も知らなくて凹んでいる私を、隼人は笑顔で抱きしめてくれる。
「いいんだよ。俺がわかっていればいいことだから。」
「ただ、これでケイのウエディングドレス姿を見るのは当分お預け…になったな。」
びっくりして、隼人の顔を見つめると、
「ケイが鍵を持っていようがいまいが、俺達が櫻井さんと繋がってるのがわかった時点で、もう逃げられない…ってこと。」
「櫻井さん、俺達が帰りたいと思ってたの、わかってたみたいだから。」
「たぶん、引き止めるつもりで、きたんじゃないかなと思うよ。」
「そうなの?」
「言わなくても、契約の時の話から考えたら、この状態になってきたらわかるもんな。」
「あ、そっか…。」
speranzaに着けなくてもいいか?なんて確認してきたっけ。。
「逃げられないんだね…。」
無意識に大きなため息をつくと、隼人の抱きしめる力が強くなる。
「俺が傍にいる。」
「隼人…。」
「頼りないかもしれないけどな…。」
ふと、弱気な発言もする。
「正直、俺もどうなってくるかわからないから。」
「なぜ?」
「ケイも狙われているけど、実は、俺も何だか別ルートで狙われてきているみたいだから。」
「なに?別ルートって。」
「まだ詳しくはわからないけどな。櫻井さんと話するときに話の中にでてくるだろうから。」
ショックで言葉がでない…。
「ごめんな。心配かけたくなくて言わなかったけど、そうも言っていられなくなってきてるみたいだから。」
私の頭を優しく撫でてくれる。
「結局は、speranzaに向かわないといけないわけね。」
「そうだな。」
「さてと、隣の部屋に行くか。櫻井さん待ってるだろうし。」
「うん…。」
気持ちの整理がつかないまま、隣の櫻井さんが待つ部屋に向かう。




