27 あやしい人影
何か入り口の外側で音がする…。
まだ、時間的には、真夜中のはずなのに。
いつの間にか眠ってしまったが、物音で眼が覚めた。
隣を見ると、隼人も気がついていて、眼を覚ましていた。
「隼人…。」
声にならない声で、話し掛ける。
隼人は、無言で頷き、私をギュッと抱きしめて、額にキスしてから、護身の道具を身につけ、ベッドからそっと下りて入り口に向かう。
私も、枕元に置いてあったものに手を伸ばす。いつでも反撃できるように。
入口の三角窓から、そっと近づいた隼人が外を覗く。
外からは、壁に見えるが、中からはバッチリ部屋の外が見える。これは、セキュリティの面でもありがたい。
外を覗く隼人の顔が、一瞬にして厳しくなった。
隼人を纏う、空気がかわる……。。
誰かがいる…。
隼人は、できる限り視線を外さないように、手元の携帯を操作する。
すると、すぐに足音がしてきて、同時に入口から音が遠ざかっていった。
足音が聞こえなくなって、今度は、携帯電話のボタンを押している。
「もしもし、櫻井さん?隼人です。今大丈夫ですか?」
「ちょっと立て込んでいるけどいいよ。どうした?」
櫻井の話す電話の後ろでは、賑やかな音が聞こえる。
「外…ですか?櫻井さん。」
「まぁね。それより何かあったのかい?」
「albaをでて、列車で次の星desertoに向かっていますが、今僕たちの部屋の外で物音がしたので、見たら……。」
言葉が止まる。
「隼人くん?」
櫻井さんが隼人の変化を察する。
「まさか、隼人くん関係の人かい?」
「……そうです。直接接触したことはないけれど、俺が過去に、見たことがある人……でした。」
「すぐSPの方にメールしたら来てくれて、今追っているはずですので、櫻井さんへも連絡が行くと思います。」
「そっかぁ…。そっちが先に動き出したか。」
「実は隼人くん、もう数時間したら、僕も地球を離れるよ。」
「えっ本当ですか?」
「隼人くん達はあと約1日ぐらいでdesertoに着くだろ?」
「はい。」
「僕は列車じゃないから、なんとか隼人くん達が、desertoに着く頃にでも、合流できるんじゃないかなと思ってる?」
「でも、櫻井さん、今地球を離れる訳にいかないって、この間おっしゃっていたじゃないですか。」
「それは本当だよ。でも事情が変わってきてるからね。ちょっとほっとけない。」
「例えば、今回のやつだったり。鍵狙いだけならまだしも、隼人くんまで標的になるなんて思ってもみなかったし。」
「早いうちに調べておいてよかったよ。手遅れになる所だった。」
「まぁ、それだけの理由という訳じゃなく、僕が動いたほうが他のことにもいいと判断したからだよ。」
「情報を待ってるだけじゃ、事は動かないし、始まらない。」
「なら、攻撃は最大の防御、だから攻めに回ることにしたんだよ。」
隼人は、電話を持ったまま唖然としている。
「隼人?」
恐る恐る近づいてみる。
「隼人くん、とりあえず部屋から出ないように。また連絡するよ。」
「わかりました…。」
無意識に電話を切る。
「隼人?」
唖然としている隼人の手をそっと握ると、びっくりした顔をして振り返った。
「大丈夫?」
両手を伸ばして、隼人を抱きしめると、大きな手が私の頭を撫でる。
「ごめん。びっくりしたよな。俺も意外な展開に戸惑ってる。」
「何があったの?」
見上げると、眉間にシワを寄せている隼人と眼が合う。
「櫻井さんが、desertoで合流する。」
「え?櫻井さんって、今地球出られないって言ってたじゃない。」
「俺も良くわからないが、もう数時間したら地球を出てくるって。今、外にいるみたいだし。」
「櫻井さんが動き出さなきゃいけない状況になってきたらしい。」
「じゃあ、私がこの鍵を持っていなくても良くなるのかな?」
胸にある鍵を握りしめながら、素直な疑問を口にする。
「たぶん、情報が動いていれば、ケイが鍵を持たなくなっても、狙われるのは、同じ…だろうな。」
「そっか…。」
がっかりと同時に、大きなため息をつくと、今度は隼人が抱きしめてくれる。
「ケイ、これからsperanzaに着くまで、気は抜けないし、もしかしたら離れ離れになるかもしれない。」
「でも。」
隼人の抱きしめる力が強くなる。
「必ず助けに行く。信じて待ってろよ。あと…。」
「ん?」
「もし、俺がいなくなったらそのままsperanzaへ行けよ。たぶん櫻井さんが力になってくれる。」
「え?何でそんなこと言うのよ。探しにいくの当たり前じゃない。」
「ケイはそのまま行け。speranzaで待っていてくれ。」
「いやよ。隼人と離れるのは。何のために旅をしているのかわからないじゃない。」
「私は鍵のために旅をしてるんじゃないわ。」
自然と涙が溢れて止まらなくなる。
「ケイ…。」
「そうだよな。目的が違うよな。」
隼人は微笑んで、指で私の涙を拭うと、そのまま顔を寄せて唇を重ねる…。
「婚前旅行、楽しまないとな。」
明日には、次の星、deserto着く。
櫻井もdesertoに向かうため、飛行場に向かう。
一般の客が乗る所と違う場所に止まっているる宇宙船。
櫻井が到着すると、入口が開く。
「desertoまで、出来る限り急いでくれ。」
中へ入りながら、伝える。
「了解しました。」
数分後、櫻井を乗せた宇宙船が、desertoに向けて飛び立った。




