21 カルチャーショック
alba到着、2日目の朝。
やわらかな身体をつつむ温かさの中、目が覚める。
相変わらず、私を抱えて寝る隼人。まだぐっすり眠っている。
「結局寝かせてくれたの、朝方だもんね…。」
呟きながら、しっかりと私に絡んでいる隼人の腕を、そうっと外してベッドから起き上がり、外も明るいので、カーテンを開ける。
2階の部屋から見える景色。
高層ビル街は流石にないけれど、商店などびっしり建てられている。
眼下には、たくさんの人々が忙しそうに行き来していて、通勤客らしき姿も見える。
地球にいるときと変わらない朝の姿。
ふと、目を遠くにむけると、漆黒の宇宙が見える。
どちらもこの星の顔、なんだろうけど、違和感があるのは私だけだろうか。
albaは、地球時間に居住は合わせてあるので、生活するには不自由はない。
陽射しもどき…もあって、植物も成長し、光合成して酸素もだすし。
そうか…、完全に作られた世界だから違和感があるんだ。
ここは、何もなかった所に、街がつくられ人が集まり、偽の陽射し、どこからか持ってきた植物、がある。
地球に住んでいた時は、当たり前に太陽の陽射しを浴び、自然の木々に囲まれ、水もあった。私の大好きな海も。
その当たり前が、全くない世界が今ここにある。
「ううぅ…ん…。」
わかりきっていた現実を目の前にして、座り込んで考える…。
「どうした?具合が悪いのか?」
私の心の葛藤の事情を知らない優しい声が、頭の上から聞こえる。
「おはよう、隼人。なんでもないわ。」
立ち上がって上半身裸の、隼人の腰に腕を絡める。
くすっと笑う隼人の声が頭上で聞こえたと思ったら、私の顎を指でなぞり、唇を軽く重ねる。
「隣にいないからびっくりして起きたんだけど。」
「あの凹みかたは、なんでもない、には見えないぞ。」
「悩む前に俺に話せ。大丈夫だから。」
頭を撫でながら、私の大好きな笑顔を見せてくれる。
「お日様が恋しくなったのかもしれない。」
これは本当のこと。
「もう、ホームシックか?まだ旅が始まったばかりなのに。」
隼人はちょっと困り顔…。
「ホームシックというより、カルチャーショックに近いかもしれないな。」
「??」
私の言葉に、更に納得できない、という顔をしてる隼人。
「100%造られたalbaの街を見て、当たり前に水や緑の木々や太陽の陽射しがあった地球が、懐かしいなと思ったの。」
「地球に住んでいて、当たり前にあったものがここにはなくて。」
「地球基準で考えたら、普通じゃないかもしれないけれど、この星に住む人たちには、普段の普通の環境で、私たちがよそ者だから慣れるしかないのよね。」
外を眺めている私を、後ろから抱きしめる隼人も、
「それは、地球にいてもあてはまると思うよ。海外旅行なんかそうだろ?」
「自分がいるところを中心に考えると、他がすべて違って見える。」
「それを違和感として思うより、尋ねた場所もそれぞれ違って、楽しみ方も違うから、その場に染まったほうが楽しめるだろ?」
「それは、地球でも宇宙でも同じことだと思うよ、俺は。」
「そうよね。」
「私が行こうとしてるsperanzaの星は、さらに太陽は見えない所で、もっと環境が違うだろうし。」
「これでショック受けていたんじゃ先が思いやられるわ…私。」
後ろから抱きしめていたのが、いつの間にか、目の前に隼人の胸が。
「誰が一緒にいるんだよ。俺が一緒にいるだろ。泊まる先々で楽しんでいけばいいじゃないか。」
「せっかくの婚前旅行なんだからさ。」
と言いながら、額にキスをする。
私も、腕を隼人の背中に回す。
「隼人がいてくれてよかった。いなかったら、この先はきっと進めなかったわ。ありがとう。」
「どういたしまして。」
見上げると、隼人もニッコリ微笑んでいる。
「そういえば、昨日襲った人、身元がわかったのかなぁ?」
ふと、頭が現実に戻る。
「たぶん、今日あたり櫻井さんから連絡が入るだろ。」
「あの、助けてくれた男性も気になるんだよね…。」ボソッと呟くと、
「気にしなくていい。」
と、不機嫌な声。
「ん?妬いてる?」
背中にいた手で今度は隼人の顔を挟む。
「妬いてるというより。」
「他の男のことなんて考えて欲しくない。」
私の両手に隼人の手が重なり、そのまま、烈しく唇を重ねてくる…。
「ん…っ。はやとぉ…。」
隼人の熱から伝わってくる気持ち。
「今日は朝から出掛けようかと思っていたけど、昼からにするか…。」
と隼人が言ったと同時に、私の身体が浮く。
「このままじゃおさまらないから…。」
妖艶な微笑みで私を見つめる。
「隼人、私の身体が持たないわ…。」
すでに動き出してる隼人には聞こえてないらしい。
テーブルの上の携帯電話が、メールが届いたランプで知らせている。
櫻井さん、ごめんなさい。あとで連絡します、と心の中で謝る。
外から、陽射しがカーテンの隙間から入ってくる。
albaの街の一日が始まる…。




