20 心の葛藤
「205号室になります。」
「ありがとう。」
ホテルのチェックインを済ませ、二人で部屋に向かう。必要なこと以外、隼人は話をしない。
205号室は角部屋だった。きっと櫻井さんの配慮、出来る限り隣には、セキュリティ上、人がいないほうがいいからだろう。
部屋に入る際、とりあえず回りを見て人がいないのを確認し、部屋に入った。
なんだか、とても疲れた。
「隼人?」
「ん?なに?」
「なに?じゃなくて、私の手、離さないと。もう部屋に着いたから大丈夫よ。」
手が離れたと思ったら、今度は、無言で私を抱きしめる…。
「どうしたの?」
「ケイ、ごめんな。」
隼人の言葉に驚く。
「さっき、店で怖かっただろ?一人にさせて、後でひどく後悔した。」
「守ってやれなくてごめん。」
言葉と同時に、抱きしめる力が強くなる。
「隼人のせいじゃないわ。今回のは私の完全なミス。これだけ危ないって言われてるのに、少しだけ大丈夫…って思った、私の油断からよ。」
「でも隼人がいてくれてよかった。パニックになるところだったわ。ありがとう。」
抱きしめる少し力がゆるんで、見上げると、隼人の体温が私の唇に感じる…。
お互いが相手の存在を確認するように、長い時間、角度を変えながら、重ねていた…。
「チュッ。」
濡れた音で離れる。
私は酸欠でぼんやりしていると、隼人は、
「このまま…と思ったけど、先に、櫻井さんへ報告しとかなきゃいけないな。」
と呟きながら、携帯を取り出す。
「ケイ、おいで。」
ベッドサイドに座る隼人の隣に私も座る。
いつの間にか隼人の左腕は、私の腰を引き寄せていた。
「少しの間だから待ってて。」
私の額にキスをすると、携帯で櫻井さんに電話をかけはじめた。
「こんばんは。隼人です。」
「無事albaに着いた?」
「ええ、着くには着いたのですが…。」
「その言い方だと何かあったね。どうした?」
「実は食事した店で、ケイがサングラスかけた二人組に連れていかれそうになったんです。」
「え……?ほんと?」
一瞬の沈黙。話が止まる…。
「二人組の顔は見た?」
「俺はみてないですね。ケイも一瞬だったみたいだからどうか。」
「どんな状況から?ケイさんは?大丈夫だったのかい?」
「それが、トイレに行くというケイを一人で行かせてしまって、そのあとすぐ店内で騒動になって。」
「俺が駆け付けたら、知らない男性が二人組を倒して、ケイを助けてくれていたんです。」
「ほぉ…、助けてくれた男性がいるんだ。彼の特徴は?」
「背丈は、俺と同じくらいで、瞳の色が深い碧色…でした。」
「通り掛かりとは言ってましたが。」
「そうか…。SPが追ってれば、いずれにせよ、身元はわかってくるな。」
「隼人くん、ケイさんと話せるかな?」
「はい。かわりますか?」
「そうだね。直接話をしたい。」
隼人が、私に携帯を渡す。
「櫻井さん、話がしたいって。」
「はい、かわりました。鳴沢です。」
「ケイさん、大丈夫だったかい?」
「大丈夫です。すいません、心配かけて。私が油断していたんです。」
「いや、ケイさんが無事でよかった。SPがきっと追ってるから、絡んできた奴らの身元は、いずれわかる。」
「え?そうなんですか?」
「うん。探す手間が省けた。これで、相手が見えてくるから、ちょうどよかった。」
「助けてくれた彼も気になるけどね。」
「ケイさんも、今回の件があるから、これからできる限り隼人くんの側にいたほうがいいよ。」
「はい、そうします。」
「僕が言うのもなんだけど、心配も多いかもしれないが、二人には旅を楽しんで欲しいと思ってる。」
「僕も、できるだけのサポートするからね。何かあったらすぐ連絡して欲しい。」
「わかりました。隼人もいてくれるし、気をつけます。」
そう言うと、隼人に電話を返す。
「じゃぁ、また連絡します。」
「こっちも身元がわかったら連絡するよ。」
「お願いします。」
電話を切って、大きなため息をつく隼人。
「どうしたの?」
「ん?気持ちがいっぱいいっぱいだなぁと思って。全然余裕ないし。」
凹んでいる隼人を、今度は私が抱きしめる。
「あなたは私の王子様だから。頼りにしてるの。」
「でも、あなただけ、頑張ろうとしなくていいの。」
「たくさんの、わけのわからない人達に狙われていたって、私たちは何も変わらないでしょ?」
「あなたも私も、何にも疚しいことしてないもの。」
隼人と目があう。
「愛してるわ…隼人。」
「ケイ・・。俺も愛してるよ。」
唇を重ねながら、隼人とケイはゆっくりとベットに倒れ込む・・。
いつも以上に、激しく求め合う・・。
不安な心を鎮めるように・・・。
激しさの中、ふと、昼間の助けてくれた彼の瞳の輝きを思い出す。
彼とは、もしかしたら、また逢うのかもしれない・・。
確信のような思いが浮かぶ。
地球から離れた星での出会い。
この先どうなるのか、不安と期待で、夜は更けていく・・・。




