19 初めての星で
「お疲れ様でした。」
「良いたびを…。」
midnightblueの列車が、定刻通り、最初の停車駅『alba』に、到着した。
出発の時と同じように、車掌さんとスタッフが並んで、出口で笑顔で見送ってくれる。車内でも同じ様に、ホテル並の接客の徹底ぶり。感心するばかり…。
「すごいなぁ…。」
「どうした?」
「車掌さんたちの接客の仕方、さりげないのが凄いなと思って。」
「たしかに。そこらの一流ホテルにも負けてないよな。それが、この列車の売りみたいだけどね。」
そう言いながらも、辺りを注意深く見回す隼人。彼を纏う周りの空気がいつもと違うのを感じる。
隼人と私も、挨拶をして列車を後にする。
「SPさん、見分けられた?」
歩きながら、隼人に尋ねる。
隼人も前を向いたまま、顔を動かすことなく、
「列車の中のSPは、ケイわかった?」
「うん。教えて貰った人、降りる時、確認した。」
「OK。あの二人は、櫻井さんと直接連絡とってるし、今回駅に残るから。」
「そうなの?」
「俺達が列車を離れた後何かあっても困るから…って、櫻井さん言ってた。」
「まぁ、俺達だけのためでなく、他の用件兼ねているみたいだから。」
「あと、外のSPさんは?」
「3人確認した。周りにちゃんといてくれてる。見分け方は、先の二人と一緒だよ。」
「5人いるはずだからあと2人は、遠巻きにいるだろう。」
「何だか役人とかのお偉いさんたちを守ってるみたいね。」
ちらっと私の方をみて、
「それ以上かもしれないけどな。」
「大事なのは、『人』だけ、じゃないから。」
「…たしかにね。」
命と鍵……。比べるにはどうかと思うけど。
ふと、右手が温かくなる。隼人の大きな左手が重なる。見上げると、いつもの優しい笑顔で、
「命あっての鍵だ。ケイの命は俺が守る。安心しとけ。」
私は、にっこり微笑んで頷く。
「ありがと。大丈夫よ。私も負けてないから。せっかくの旅行だもん。楽しまないとね。」
お互いの気持ちを確認して、手を絡めるように、しっかり繋ぐ。
「ホテルにチェックインする前に、せっかくだから、街を散策していくか。」
「そうね。」
歩きながら、あることに気が付いた。
「ねぇ?そういえば、酸素がある…。普通に呼吸してるし。」
「ああ、基本的に列車が止まる星は、人工ドームがあって陽射しも酸素も管理されてるらしい。植物も特殊な光を浴びて、光合成して、酸素もだしてるし。」
「まぁ、植物は地球のとは違うんだろうけどね。」
環境の凄さに呆気にとられる。この先の星はどうなっているんだろう…。
地球だけでなく、他の星から来る人もあるだろうに。
「夕食は外で食べて行くか?ホテルはとりあえず泊まるだけにしてあるから。」
「それはそれでよかったんじゃない?albaの街で食べたほうが楽しみもあるし。」
話しをしながら歩いていると、雰囲気のいいお店があった。
「ここにしようか?」
私も頷くと、二人でお店に入った。
お店の中は、お客様も多く、カウンター席になった。
「ケイと話しをした居酒屋と同じパターンだな。」
ここまできて、やっと隼人の表情が少し和らいだ。
「そうね。カウンター席が今回の旅の話の本格的な、スタートだったわね。」
「あの日がなかったら、隼人はここにいなかったもの。不動産屋一緒に行くって聞いた時びっくりしたし。」
「そうだったな。あの時すでにケイがいなくなるショックで、歯止めがきかない状態だった。」
「そうだったの?」
「うん。それまで会社とかでは感情を押さえてきたけど、昼休み話、しただろ?あれで心の何かが外れた。」
「だからあれ以降、隼人私に触れてきたのね。嫌じゃなかったけど…。」
「そうか?」
「私も、隼人ことずっと気になっていたから、戸惑いはあったけれど、嬉しかったの。」
隣から伸びてきた手が、私の頭を撫でる。
「今こうやっていられるのが嬉しい。」
「私も。」
食事を終えて、
「私、お手洗い行ってくる。」
「一人で大丈夫か?何かあったら大声だせよ。すぐ行くから。」
隼人に手を振り席を立つ。
人が多いので、避けながら歩いていると、急に手を掴まれた。
ビックリして振り返ると、
「一緒に来てもらえますか?」
と、サングラスをかけた二人組の男に捕まった。
「何するのよ。離して。」
暴れて手を振り離そうとした時に、
「LADYに乱暴はいけないでしょ?」
私の後ろから現れた男性に、二人ともいとも簡単に倒され逃げて行った。
「助けて頂いてありがとうございました。」
頭を下げお礼を言うと、
「大丈夫?どこも痛くない?」
という男性と目があった。
彼の目の色、深い碧色に吸い込まれそう。
お互い、言葉なく見つめ合う…。
「ケイ?大丈夫か?」
後ろから隼人の声が聞こえ、振り返る。
「隼人。大丈夫よ。連れていかれそうになったんだけど、この方が助けてくれたの。」
隼人に、私の前にいる彼を紹介する。
一瞬、隼人が厳しい顔をしたけれど。
「助けて頂いてありがとうございました。」
隼人も彼に頭を下げる。
「いやいや。僕もちょうど通りかかった時に、彼女が大変そうだったから手を貸しただけ。」
「ケイ、もう店出るぞ。」
「うん。」
もう一度彼にお礼を言い、支払いを済ませ店を出た。
「彼らも彼も何者なんだろう。」
わたし右手はしっかり隼人の左手に繋がれ、ホテルまでの道を急いだ。
二人が店をでた後、何もなかったように店の中は賑やか。
ただ、一人の男性だけは、グラスを傾け静かに過ごしている…。
先程の出来事を思いながら、
「彼女…。また逢うことになるかな。」
albaの長い夜は、まだ始まったばかり・・。




