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星の降る街に  作者: 霧島
第3章
19/92

19 初めての星で


「お疲れ様でした。」

「良いたびを…。」


midnightblueの列車が、定刻通り、最初の停車駅『alba』に、到着した。


出発の時と同じように、車掌さんとスタッフが並んで、出口で笑顔で見送ってくれる。車内でも同じ様に、ホテル並の接客の徹底ぶり。感心するばかり…。


「すごいなぁ…。」

「どうした?」

「車掌さんたちの接客の仕方、さりげないのが凄いなと思って。」

「たしかに。そこらの一流ホテルにも負けてないよな。それが、この列車の売りみたいだけどね。」


そう言いながらも、辺りを注意深く見回す隼人。彼を纏う周りの空気がいつもと違うのを感じる。



隼人と私も、挨拶をして列車を後にする。


「SPさん、見分けられた?」

歩きながら、隼人に尋ねる。


隼人も前を向いたまま、顔を動かすことなく、

「列車の中のSPは、ケイわかった?」

「うん。教えて貰った人、降りる時、確認した。」

「OK。あの二人は、櫻井さんと直接連絡とってるし、今回駅に残るから。」

「そうなの?」

「俺達が列車を離れた後何かあっても困るから…って、櫻井さん言ってた。」

「まぁ、俺達だけのためでなく、他の用件兼ねているみたいだから。」

「あと、外のSPさんは?」

「3人確認した。周りにちゃんといてくれてる。見分け方は、先の二人と一緒だよ。」

「5人いるはずだからあと2人は、遠巻きにいるだろう。」

「何だか役人とかのお偉いさんたちを守ってるみたいね。」


ちらっと私の方をみて、

「それ以上かもしれないけどな。」

「大事なのは、『人』だけ、じゃないから。」


「…たしかにね。」

命と鍵……。比べるにはどうかと思うけど。


ふと、右手が温かくなる。隼人の大きな左手が重なる。見上げると、いつもの優しい笑顔で、


「命あっての鍵だ。ケイの命は俺が守る。安心しとけ。」

私は、にっこり微笑んで頷く。


「ありがと。大丈夫よ。私も負けてないから。せっかくの旅行だもん。楽しまないとね。」

お互いの気持ちを確認して、手を絡めるように、しっかり繋ぐ。


「ホテルにチェックインする前に、せっかくだから、街を散策していくか。」

「そうね。」


歩きながら、あることに気が付いた。


「ねぇ?そういえば、酸素がある…。普通に呼吸してるし。」


「ああ、基本的に列車が止まる星は、人工ドームがあって陽射しも酸素も管理されてるらしい。植物も特殊な光を浴びて、光合成して、酸素もだしてるし。」

「まぁ、植物は地球のとは違うんだろうけどね。」


環境の凄さに呆気にとられる。この先の星はどうなっているんだろう…。

地球だけでなく、他の星から来る人もあるだろうに。


「夕食は外で食べて行くか?ホテルはとりあえず泊まるだけにしてあるから。」

「それはそれでよかったんじゃない?albaの街で食べたほうが楽しみもあるし。」

話しをしながら歩いていると、雰囲気のいいお店があった。


「ここにしようか?」

私も頷くと、二人でお店に入った。


お店の中は、お客様も多く、カウンター席になった。

「ケイと話しをした居酒屋と同じパターンだな。」

ここまできて、やっと隼人の表情が少し和らいだ。


「そうね。カウンター席が今回の旅の話の本格的な、スタートだったわね。」

「あの日がなかったら、隼人はここにいなかったもの。不動産屋一緒に行くって聞いた時びっくりしたし。」


「そうだったな。あの時すでにケイがいなくなるショックで、歯止めがきかない状態だった。」


「そうだったの?」


「うん。それまで会社とかでは感情を押さえてきたけど、昼休み話、しただろ?あれで心の何かが外れた。」


「だからあれ以降、隼人私に触れてきたのね。嫌じゃなかったけど…。」


「そうか?」

「私も、隼人ことずっと気になっていたから、戸惑いはあったけれど、嬉しかったの。」


隣から伸びてきた手が、私の頭を撫でる。

「今こうやっていられるのが嬉しい。」

「私も。」


食事を終えて、

「私、お手洗い行ってくる。」


「一人で大丈夫か?何かあったら大声だせよ。すぐ行くから。」

隼人に手を振り席を立つ。


人が多いので、避けながら歩いていると、急に手を掴まれた。

ビックリして振り返ると、

「一緒に来てもらえますか?」

と、サングラスをかけた二人組の男に捕まった。


「何するのよ。離して。」

暴れて手を振り離そうとした時に、


「LADYに乱暴はいけないでしょ?」

私の後ろから現れた男性に、二人ともいとも簡単に倒され逃げて行った。


「助けて頂いてありがとうございました。」

頭を下げお礼を言うと、


「大丈夫?どこも痛くない?」

という男性と目があった。

彼の目の色、深い碧色に吸い込まれそう。

お互い、言葉なく見つめ合う…。


「ケイ?大丈夫か?」

後ろから隼人の声が聞こえ、振り返る。


「隼人。大丈夫よ。連れていかれそうになったんだけど、この方が助けてくれたの。」


隼人に、私の前にいる彼を紹介する。

一瞬、隼人が厳しい顔をしたけれど。


「助けて頂いてありがとうございました。」

隼人も彼に頭を下げる。


「いやいや。僕もちょうど通りかかった時に、彼女が大変そうだったから手を貸しただけ。」


「ケイ、もう店出るぞ。」

「うん。」

もう一度彼にお礼を言い、支払いを済ませ店を出た。


「彼らも彼も何者なんだろう。」

わたし右手はしっかり隼人の左手に繋がれ、ホテルまでの道を急いだ。



二人が店をでた後、何もなかったように店の中は賑やか。

ただ、一人の男性だけは、グラスを傾け静かに過ごしている…。

先程の出来事を思いながら、

「彼女…。また逢うことになるかな。」


albaの長い夜は、まだ始まったばかり・・。

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