17 旅の目的
[隼人くんへ:
メールありがとう。
明日には、『alba』につくんだね。
早速、本題に入りますが。
ケイさんに託した鍵は契約の時に言った通り、決して怪しいものでも、嘘でもないんだ。
でも、とてもとても大切な鍵で。矛盾してるといわれそうだけど。
その鍵は、実は終着駅、『speranza[スペランツァ]』、星、そのものに影響してくる場所の鍵。
それが何処の…とは今は言えないけれど。僕が持っているということは、僕もsperanzaの少なくとも
関係者…でもあるのだが。
なぜ、今回鍵を届けるようになったのか?
それは、speranzaに着いてからではないと、答えられないんだ。
最初、ケイさんだけなら、やめようと思っていた。ケイさんも、今回行くかどうか、かなり迷っていたはず。最終的に、隼人くんが一緒に行くということになって、僕もお願いすることにしたんだ。
今、二人が持っている鍵が正式な物で、もし、万が一無くしたとして、誰かの手に渡っても、鍵として使えないようになっている。二人が一緒にsperanzaにたどり着いてこそ、機能する鍵なんだ。
ここまで言ったら、セキュリティもケイさんに書いたメールの意味も、わかって貰えると思う。
隼人くんは、ケイさんがリスクの高い、危険な事件に巻き込まれるのではないか、と、心配をしてるんだと思う。
今は、ちゃんと鍵に埋め込んだGPSも機能してる。
乗車してる列車に2人。いつも隼人くんたちの近くにいるはず。あとは停車駅ごとに数人SPをおいてある。が、出発前に言った通り、地球からでれば、100%絶対安全という保障はない。
隼人くん、旅の間、ケイさんの近くを離れないようにお願いしたい。鍵を狙っている関係者だけでなく、旅には、女性を拉致する集団もあったり、道中治安も良くない。隼人くんよりケイさんが狙われる確率の方が断絶多い。
念のため、ケイさんが言っていた男も、注意したほうがいい。
気にかかることがあったら小さなことでもいい。電話でもメールでもいい。連絡してほしい。無理なことをお願いして本当に申し訳ないと思っている。
でも……speranzaの未来がかかっている。
よろしくお願いします。
このことをケイさんに伝えるかは、隼人くんに任せたいと思う。
また連絡下さい。
from櫻井尚人]
櫻井さんから来たメールを読んでいる隼人は、今までに見たことがないくらい、厳しく難しい顔をしている。
なかなか近寄りがたい雰囲気…どうしよう。
そんなに状況が悪いのだろうか…?
「隼人?」
恐る恐る尋ねる。
「ん?」
びっくりしたような顔で振り返った。
地球から持ってきた、隼人の好きな銘柄のコーヒーを入れる。
コーヒーの入ってるカップを二つ持ち、ひとつは隼人に渡して、私も隣に座る。
「サンキュ。」
笑顔でカップを受け取るが、隼人の表情は冴えない。
「いい内容ではなかったの?」
尋ねる私の瞳を、見つめ、頷く。。
「これから櫻井さんのメール見せてあげる。でも、実際余分な心配かけそうで、見せたくない気持ちもあるんだ。どうする?全部知るか、事情を知らずにこの先いくか。」
すごい選択肢を言われている気がするんだけど。
でも、いくら悪い状態でも、『しらない』より『知っていた』ほうが、私はいい。自分の人生だから、自分の判断で責任を持ちたい…。この旅にでてきたのもそういう意味だから。
「見せてもらえる?」
隼人をまっすぐ正面に捉え、返事をする。
「いいよ。俺もここにいるから。」
といって、私を引き寄せ、軽くキスをする。
隼人から、携帯を預かり、櫻井さんからのメールを読む……。
読み終えて、呆然とする私の肩を抱きながら、隼人が声をかけてきた。
「どう?」
「………。」
あまりのショックに言葉も出ず、返事ができない。」
「大丈夫か?」
私の頬に隼人の指が…。
涙が流れていたらしい…。
「……たぶん。」
涙が止まる気配はなく、隼人が強く抱きしめてくれる。
「ケイ?このままよく聞いていて。」
前にも同じようなシチュエーションがあったような…。
「俺はさっき、櫻井さんからのメールを読んだ時、一瞬目の前が真っ暗になった。感情がストップしたよ。ケイの命を何だと思っているんだって、怒りもあった。一歩間違えたら、ケイが俺の前からいなくなる可能性があるんだから。」
「でも、よく考えたら、今回の条件がなく、二人だけの旅なら、もと環境も悪く、今以上に神経を尖らせていないといけないと思うんだ。」
「そう考えたら、鍵云々言う前に、ケイをセキュリティがちゃんとした所に置いて、旅ができる方がいいと思ったんだ。」
「あとは。」
抱きしめる力を緩め、私の顎に指を伝わせる。
「俺がケイを守ればいいこと。大丈夫、俺がついてる。信用してついてこい。」
頷いて、止まっていた涙が、隼人の言葉に溢れ出す。
隼人の大きな両手が、私の頬を優しく包む。
同時に、お互い求めるように、唇を重ねる……。
不安な気持ちも隼人の熱で、震える心も少しづつおさまってきた。
私は、一人じゃない。隼人がいてくれる。
そう、思うだけでも、力が湧いてくるような気がする。
明日の朝、『alba』に到着する。
もう今になっては、逃げ出すことも出来ない。
地球から出てくるとき、なぜなら何があったとしても、責任は自分自身だと決めてきた。
来るもの拒まず…。来るなら来てもらおうじゃないの。
「隼人、私頑張るから。speranzaに必ず行こうね。」
「ああ、必ずだ。俺はお姫様を守る王子だから、側にいるから安心しろ。」
微笑んで、私の頭を撫でる。
外の景色は闇だけれど、漆黒の闇の中には、数え切れないほどの輝きがある。
そして、私の心にも決意の輝きが…。
それぞれの思いを乗せて、数時間後には、『Alba』に列車は到着する。




