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星の降る街に  作者: 霧島
第2章
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16 怪しい鍵


「あ、メールが来てる。」

ベッドサイドのテーブルで、光っている携帯電話に手を伸ばす。

掴んだとたん、ベッドに引き込まれる。


「おはよ。ん…。」

隼人が、妖艶な雰囲気で言葉より先に、唇から首筋へ熱いキスをしてくる。このままいってしまうと、昨夜の延長になりそうで困る。そうじゃなくても、動けないのに…もぅ…。


隼人に何とか話かける。


「隼人、メール来てるの。多分、櫻井さんだわ。」

「あとで見ればいい。」

「だ~め。大事なことならどうするの?」

渋々抱きしめていた腕を緩める。


「見て。」

隼人にメールの画面を見せる。

櫻井さんからきたメールを読みながら、隼人の顔つきが厳しくなる。


「別にしたほうがいい…って、普通の鍵じゃないのを完全に認めてる内容だな。何が怪しいものじゃないだよ、まったく…。契約違反じゃないか?GPS付いてる時点で十分怪しかったけどな。そうじゃなくても、今回の旅にはリスクがついてまわるのに。」

深い溜息をつきながら、私を腕の中に抱き寄せる。


「ケイの考えていたことが当たってたみたいだな。」

「残念だけど、そうらしいわね。」

私も溜め息をつく。


「今更ながら、俺もついてきて本当によかったと思うよ。」

「手放したら、二度と逢えない所だった…。」

隼人の抱きしめる腕に力が入る。


「これだけの部屋、用意出来る人だし、ただの、不動産屋じゃないのは確かよね。」

「契約の時、もっとつっこんで聞いとくべきだったわ。」

とぼやく。


「そうだな。俺も後で櫻井さんにメールするわ。こうなったら、本当の事情を知らないと、こっちの身が危ない。どこまで正直に話すかわからないけど。」

「明日『alba』に到着する前に話つけとくかな。」


いつの間にか、話の仕方が、仕事をしていている時の口調になっている。

「久しぶりに仕事モードって感じね。隼人の仕事してる姿も大好きだったけど。」


「ん?そうか?」


「うん、社内にいる時は、いつの頃からか覚えていないけど、気がついたら隼人を目で追ってた。気がつかなかったでしょ?それに、私だけじゃなかったみたいだし。」

「社内でも人気があったから、色んな所で目がいたはずよ。会社辞めるとき大変だったでしょ?」


「興味本意の視線には気がついてはいたけど、他の女性は別にいいやと思ってたし。でもその中に、ケイもいただなんて、初めて聞いた。気にしててくれてたなんて嬉しい。

辞める時は、別に大変じゃなかったぞ?付き合ってるのみんな知ってるし。でも、そういえば、何人かは声かけてきたな…。」


「いつも隼人と同期っていうだけで、私のほうに、とばっちりはきてたけどね。」

思いだすだけで溜め息が出るほど。。


「そうなのか?」

知らなかったのは本人だけ…。


「でももう、過ぎたことはいいの。今はこうやって、独り占め出来てるし。」

隼人にぎゅっと抱き着く。


「ケイも知らないだけで、男性陣から俺も言われてきたんだぞ。」


「そうなの?」


「同期だから、逢えるきっかけ作ってくれって言われたけど、即答で却下してやった。自分で言えって。何人かに誘われてるだろ?」

「たしか。でも丁寧に断ったわ。彼もいた頃だったし。」


「ケイに言った時点で、仕事は容赦なかったけどな…。」

さらっと答える


「……まったく。公私ごっちゃまぜじゃない。よくみんな大丈夫だったわね。王子の事情聞いたら怒られたわよ、きっと。」


「そうでもしないとやってられなかったんだ。他の奴らにケイを持っていかれるなんて考えたくなかったし。」

「でも、今はこうやって、腕の中にいてくれるから幸せだよ。」

優しい笑顔の隼人と目があう。


「せっかく手にいれた幸せを絶対持って行かれたくないし。櫻井さんとちゃんと話をしておかないとな。」

そういいながら、頬にキスをする。


「さてと、起きて朝食にするか。食堂車があるみたいだぞ。」

「そうね。言われたら急にお腹すいてきたわ。」


………………………………………………………………………………………………


食堂車に行く途中、廊下の窓から見える外の景色は、太陽から離れて来ているためか、黒が濃くなっている気がする。

明日、地球を出て、初めて停車する星『alba(アルバ)』は、火星を過ぎて少し先に行った星らしい。

今では火星も地球並に環境を整えられ、政府も、地球から一番近い宇宙移住空間としてすすめている。今回、この列車は止まらず通過する。

近い所に住める所があるのに、あえて遠い星を選んだ私たち。先を行く意味があるのか…。



食堂車の入口の扉を開けると同時に、おいしそうないい香りが鼻をくすぐる。

すぐにテーブルに通される。車内を見回すと、調度品も一流ホテル並の物が置いてある。

夕食は、ドレスコードが入っているのかしら…。


朝食はトーストとスクランブルエッグ、サラダなど地球で食べていたものと変わ

らない。


食事もそうだけど、車内の雰囲気に、何かさっきから違和感を感じるのは私だけなのだろうか・・。


隼人はブラックコーヒー、私はミルクティーを食後に飲みながら話しをする。


「部屋に戻って、櫻井さんに連絡するかな。」


「食事してても、何だか落ち着かないわ。」


「どうした?」


「私の思い違いかも知れないけど、乗客の中に、駅で私にぶつかった人いたでしょ?似てる人、さっき見かけたのよね。」


「本当か?」


「あの人が、直接影響があるとは言い切れない。櫻井さんにも一応報告したけど。疑いだしたらきりがない。」


「そうだな。とりあえず部屋に戻るか。」


部屋に戻る途中に、サロンカーがあって、乗客が軽いお酒などを飲みながら寛いでいる。

1ヶ月も一緒に旅をすれば、いずれ話もするようになるだろうと思い、私たちは、たちよらずに部屋に戻った。



「はぁ…。疲れた。」


私の隣に座った隼人は、早速、不動産屋の櫻井さんにメールを打ちはじめた。


[櫻井さんへ:

渡辺です。お世話になります。明日到着予定の『alba(アルバ)』に向けて、列車は走っています。今回メールを送らせて頂いたのはケイに託した「鍵」についてです。

昨日ケイに返したメールの中で、鍵と地図は別々に保管した方がいいと書いてありましたが、今回の鍵は、誰かに狙われるほど大事な鍵なんでしょうか?

もしそれが本当なら、契約の際、ケイに嘘をついたことになりますが。

本当のことを教えて頂ければと思います。このままでは、婚前旅行どころではありません。

もちろん、自分がいる限り、彼女は全力で守ります。自分にとって、大切な大切な彼女ですから。

ケイも契約の際、鍵のこともっと深く聞いておくべきだったと言っています。

今は、事情がわかって納得の上で、彼女も鍵も守りたいというのが、自分の本心です。櫻井さん、教えて下さい。 from渡辺隼人]


「ふぅ…。」

送ってから、溜め息をつく。

「どんな返事が返ってくるんだか。」

隣に座るケイをみると、外を見ながら、不安そうな顔をしている。


肩を抱いて引き寄せる。

「俺がいるから大丈夫。心配するな。」

黙って頷く…。




少しずつ、二人に近づいて来ている怪しい影、まだ気づいていない…。


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