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星の降る街に  作者: 霧島
第2章
15/92

15 漆黒の空へ

更新が少し遅くなりました。今回は話の流れ上、2話分くらいの文字数で書いています。お時間がある方、よかったらお付き合いくださいませ。


出発のメロディーが、ホームに流れ、同時にゆっくりとmidnightblueの列車が動きだした。


スピードが増してくると、窓の外の景色も流れるように動いていく。

眼下には、月に照らされた、私たちが今まで住んでいた街が見える。


だんだん離れていく街を、窓際で眺める。


地球での海外旅行なら、悩むことなく、もっと簡単に考えて旅にでたんだろうけれど、今回の旅は最初から全く違う。


結局両親には一方的に、海外に数ヶ月行ってくると言ってきた。返ってくる言葉は想像がつくから。

(結婚相手は、たぶん…帰れたら紹介できるだろうけど、ごめんね。と心の中で呟く。)


外を見ていると、漆黒の空に向かっている列車の先頭車両が、遠くに見える。少しカーブがあるのか。もちろんレールがあるのは見えないから、前に進んでいるのだろうけど、不思議な感じ…。


「ケイ?」

声のする方に振り向く。


「ん?」

隣に座る隼人が穏やかな微笑みで私を見つめる。


「無事に地球に帰ってくるんだろ?そんな心配そうな顔しなくてもいいんだぞ。」

どうも私の心は読みやすいらしく、いつも隼人は私に一番欲しい言葉をくれる。


「ありがと。」

嬉しい気持ちを、笑顔で返す。


「せっかくの二人旅なんだから楽しまないとね。」

横から伸びてきた腕が、私の肩を抱く。

「普通に何もなければ、往復2ヶ月バッチリ、ケイと一緒にいられるし。新婚旅行でもそんなに長い旅にはならないぞ。」

とあっさりと言い放つ。


「あの…。」

遠慮がちに、隼人を見つめる。

「女性の私が言うのもなんですが…。」

「私を貰って頂けるのかしら?」

「いや、付き合い始めてそんなにたっていないし、新婚旅行とか言われても…。」


一瞬、目を丸くして固まる隼人。その後、クスクス笑い始めた。


「真剣に言ったのに…。」

隼人から離れようとしたら、抱いてる肩を更に引き寄せられ、抱きしめられてしまった。


「俺は、最初から言っただろ?ケイじゃなきゃだめだし、誰にも渡さないって。

プロポーズは改めてしようと思っているよ。時と場所を考えてね。第一、結婚しようと思ってなければ、一緒にここまでこない。」


見上げると、

「だろ?」

といいながら、私の額にキスをする。


「本当は、宇宙空間にでてからにしようと思っていたんだけど。」

ポケットから小さなケースを取り出す。


「開けてごらん。」

私は渡されたケースを開けた。


「あっ。」

中にあったのは、お揃いの指輪。


「正式な婚約指輪と結婚指輪はまた決まった時に渡すから、これは…予約指輪みたいなのかな。」


「予約指輪なんて聞いたことないわ。」


「俺が決めた。必ず一緒になるって。」


「もしかして、俺と結婚するのいや?」


「いやって言ったらどうする?」

そんな気持ちは全くないのだけど。


「いやって言わせないから大丈夫。」

今までみた中でも、最高クラスの笑顔で微笑む。


「俺、ケイのことだけを愛してるから。」


「隼人…。嬉しい。私もよ。愛してる。」

隼人に抱き着くと、しっかりと抱きしめてくれる。


「俺らは、恋人としての付き合いは短いけれど、出逢ってからは10年近いし、毎日逢ってたから、時の長短は感じない。口にはださないけど、お互い思い続けてきたなんて、凄いことだよな。」


「運命の人との出逢いは『時』が必ずあるって言うけど、隼人とは、今なのかもしれない。あの時会社で、偶然話をしなければ、今ここに二人でいられなかったもの。導かれて…って気がする。」


「指輪はしてもらえる?」

隼人が改めて聞く。


「もちろん、喜んで。」

隼人がケースから指輪を取り、私の左指にはめた。


「サイズ、ピッタリ。よくわかったわね。」

「前にさりげなく聞いた時、言ってたからね。」


「さすが…。」

後の私の呟いた言葉は、聞いてなかったらしい。


「もうひとつ、この指輪の意味は、これからの旅で、たくさんの男たちに会うだろうから、男よけの意味…もある。俺、独占欲強いから。」


「宇宙で通用するかわからないけれど、こっちの方にメインの意味があるかもしれない。」

真剣な顔で話している隼人をみると、なんだか嬉しくて、私から隼人に唇を重ねたが、すぐに主導権は隼人に代わり、息ができないほど、お互い角度を変えながら強く重ね合う。意識がなくなりそうになってきた時、


「このままベッドへ連れていって抱きたいけど、あと少しで宇宙空間にでるみたいだから、その後にしようか。」

と言って、私を抱きしめる。


隼人の潤んだ瞳に見つめられドキドキする。身体全体が色気のあるオーラが出てきてるようで、それだけで溶けてしまいたい気分になる。


思いが通じる前と後では、隼人のオーラの強さが全然違う。こんなに情熱的だったのかと。前は、よっぽど私の前で押さえていたんだろうと思うくらい。後は、特に最近はもう、遠慮なく洩れている感じで、長旅一緒だけど、私の身体が持つだろうかと心配になるくらい。

でも、今は隼人の腕の中が一番安心できる。今まで付き合った彼に感じたことのない気持ち。本当に心から愛しいと思う。隼人も同じ気持ちなのだろうか…。そうだと信じたい。



「あと5分で、大気圏突入します。」

車掌のジョニーさんのアナウンスが入る。


「いよいよ宇宙空間にでるんだな。」

「ワクワクする。」


すでに、列車は雲の層の上にいるので、空の青、雲の白、そして地球と大気圏の堺がうっすらと見えてきた。

列車に乗っていると、酸素もない上空にいるはずなのに、何も変化がない。耳の圧もかからない。不思議なことが多い。なぜ?って言いはじめればきりがない。

なぜ、この列車はレールがないのに、走れるの?など。基本的な所が、普通じゃないから、この空間にいられるんだと不思議と納得した。


「宇宙空間を走る列車は、特別仕様がたくさんあるんだな。」

きっと隼人も同じ思いだったに違いない。


列車を包む回りの色が変わってきたと思ったら、数分後、宇宙空間にでた。


前は一面の星、振り返ってみると、青く輝く地球が見えた。

昔、宇宙飛行士が宇宙から地球をみて人生観が変わったと聞いたことがある。


「隼人…、地球、綺麗だね。」

隼人も言葉なく、頷く。


「地球から出てきたこと、後悔してない?」

隼人に聞く。


「何処に居ようと、俺はケイが近くにいればいいから後悔はないよ。」


「ケイは?綺麗な地球みて後悔した?」


「してない。ただ私の故郷の星だなと思っただけ。不思議、もっと感傷的になるかと思ったら大丈夫だったわ。」


宇宙空間にでたことを、地球にいる、不動産屋の主人にメール送る。


[櫻井さんへ:


鳴沢です。先程、地球を出発し、無事大気圏をぬけ、宇宙空間に出てきました。

今の所、何もなく穏やかに過ごしています。列車のお部屋、素敵すぎてびっくりしています。

ありがとうございます。私の安月給では到底無理(笑)なお部屋です。

彼と、櫻井さんから預かった鍵の重さを感じています。無事終着駅まで行けるといいのですが。

一つ、そういえば思い出しました。列車に乗る前、駅でぶつかった男性が、私の顔をみて、凄くびっくりした様子で、走って行きました。なに?と思いましたが、疑いだしたらキリがありませんが。

気をつけるようにします。では、また連絡します。

from 鳴沢ケイ]


「櫻井さんへ送ったの?」隣で隼人がちょっと不機嫌な声で尋ねてきた。


「一応ね。途中経過送っておいたほうが、何かあった時にいいかなと。鍵も預かってるし。」


「…妬いてる?」


「…少し。」


「ごめんね。でも、今回の旅に絡んでいる以上は、連絡入れたほうがいいかなと思って。鍵にGPSが埋め込まれてるみたいだし。」

「あと、隼人も感じてると思うけど、この鍵、きっとただの鍵じゃない。私は狙ってくる人間がいるんじゃないかと思ってる。」

「私もある程度武術はたしなんでるから、自分で身は守る。でも、無理なら隼人お願い。」


「お願いされなくても、王子は姫を守りますよ。」


「姫?」


「俺が王子なら、ケイは俺が守る姫、だろ?」


「ああ、そっか。王子はわかるけど、私は姫らしくないわ。」


「いや…、俺にとって大切な姫だから、全力で守る。」


「王子様、ではこの先、どうかよろしくお願いいたします。」

スカートを少しつまんで、頭を下げる。


ニコッと隼人が笑う。

「では姫、次の駅の到着が二日後になるらしいので、ひとまず休みますか。」

すっと私をお姫様だっこで抱き上げる。


「寝かせてもらえるのかしら?」

「さぁ、それはお姫様次第ということで。」

隼人の瞳の奥が、輝く…。

「お手柔らかに…。」


二人が眠りに着く頃、携帯に返信のメールが届いた。


[鳴沢さん:

先程はメールありがとう。大気圏をぬけたようで、よかったですね。お部屋は気に入って頂けてよかったです。今回の旅に私の私情でお願いしてしまったので、お礼がわりと、あとは、ケイさんが心配されてるように、用心するにこしたことはないので、セキュリティがちゃんとしてる所にお願いしました。指紋認証だけど、油断しないようにね。隼人くんも近くにいるし、婚前旅行のつもりで楽しんできて下さい。あと、預けた鍵と、地図は念のため別々に保管したほうがいいかと思いますよ。

また連絡待っています。

from 櫻井尚人]



漆黒の世界の中、輝く星の合間を縫って、列車は、地球時間で二日後に到着予定の、次の駅『Alba[アルバ]夜明け』にむけてひた走る。



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