14 Midnightblue
「おいしい。」
大好きなケーキとミルクティーを口にして、思わず笑顔になる。
先程のイライラしていた気持ちが、やっとおさまってきた。
「ほんと、甘いもの食べてる時は幸せそうだよなぁ。」
私の前で隼人は、ブラックコーヒーを飲みながら、微笑んでいる。カップをさりげなく持つ姿に
思わず見惚れる。
「とっても幸せよ。」
「俺といる時よりも?」
ちょっぴりいたずら目線で私を見る。
「幸せの大きさが違うと思うけど?」
笑いながら視線を返す。
「微妙な返事だな。」
クスクス笑う隼人。
「私は、隼人が一緒にいるから幸せなの…。」
言ってしまってから、恥ずかしくて、カップに残っているミルクティーを飲み干した。
「さてと、時間だ。そろそろいくか。」
そっと立ち上がると、いつの間にか、横に立っていた隼人が耳元で、
「俺もケイが一緒にいるから幸せなんだよ。」
言いながら腰を引き寄せ
「愛してるよ。」
と、頬にキスをした。
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50番線ホーム。
鉄道の駅の中でも、最上階にある、漆黒の宇宙に一番近い駅…。
夜空を見上げると、今夜は満月の月が優しく輝いている。
ホームに上がってきたけれど、列車はまだ入ってきていなかった。
「早かったのかな?」
「もうすぐくるだろう。」
話をしていると、ホームに音楽が鳴り、滑るように列車が入ってきた。
ここに来るまえに見たポスターで、列車の色はわかっていたけれど、本物は、闇の中でも存在感のある艶のある青。
目の前に止まった列車に、感嘆の息を吐く…。
「絵で見るのと、実際目の前で見るのと全然違う。素敵な列車ね。」
「持っている雰囲気で圧倒されそうだな。すごいよ。色はポスターに書いてあったけど、『Midnightblue』って、たしか布とかだと濃紺だけど、列車に塗装するとこれだけ艶やかになるんだな。直訳すると『真夜中の青』か…。宇宙を駆け抜ける列車に相応しい色だよな。」
「さすが隼人。色には詳しいわね。仕事の経験がいきてる。」
「まぁね。ケイも…だろ?」
「隼人ほどでもないけど、ほどほどには分かるわ。新人の頃、色見本もいやってほど見たから。」
「見たよなぁそういえば。俺もそんな詳しいわけじゃないけど、営業で必要だったからその分勉強して、わかるだけ。」
二人で列車にくぎ付けになって話をしていると、中から車掌さんが出てきた。
「お待たせいたしました。speranza[スペランツァ]行き、当列車をご利用頂きありがとうございます。」
車掌さんと、スタッフが入口に並び、笑顔で一人一人に声をかけ、迎える。
隼人と私も挨拶しながら、乗車した。
20号車の、Twinコンパートメントの部屋に入ると、あまりの豪華さにびっくりして呆気にとられる。
荷物を置きながら見回す。
「ホテルの一室みたい。」
「不動産屋の主人、何者だろうな。」
隼人がボソッと呟く。
「仮に、今回援助がなくて、私の私財全部投入しても、この部屋での旅は無理だったと思う。」
「私の持っている鍵が、それだけ大切ってことね。」
「たぶん、そうだろうな…。」
と言う隼人は、何か考えているみたい。
「ケイ、これからの旅は俺から離れるなよ。何となくひっかかるものがあるし、不動産屋の主人の言う通り、安全の保障がない旅だから。」
「もちろん誰がきても手出しはさせないけどな。」
手を伸ばし、私を抱きしめる。
「大丈夫?無理しないでね。」
私も、隼人の背中に手を伸ばし抱きしめる。
「これでも剣術の心得はあるし、護身の拳銃も、もちろん持ってる。でも、一番いいのはそういう危険がないこと。」
「大丈夫、俺がついているから。」
抱きしめた腕の力が一瞬緩んだと思ったら、唇に温かいものが重なった。彼の体温は、私の不安な心を無くしてくれる。隼人がいてくれて良かったと思った。
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「コンコン」
「車掌ですが、切符の確認に伺いました。」
入り口の小窓から確認すると、先程の車掌さんの姿が見えたので、内側から開けた。
「車掌のジョニーです。切符とパスポートを確認させて頂きます。」
隼人と私のをそれぞれ確認する。
「渡辺様、鳴沢様、ですね。ありがとうございます。行き先は、speranza[スペランツァ]。1ヶ月程の旅になります。よろしくお願いいたします。」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします。」
「各星の滞在時間などの案内は、地球時間になります。あと、このお部屋の鍵は、今から終着駅まで指紋認証になりますので、それぞれ登録お願いいたします。」
「あと10分程で出発になります。ではまた何かありましたらお呼び下さいませ。」
と言って車掌は去って行った。
「もうすぐ出発だって。」
窓から改めて外を見る。今度この景色を見るのはいつになるのだろう。もしかしたら二度と見ることが出来ないかもしれない。いろいろなことが、脳裏に浮かぶ。
「いい旅になるといいな。」
横に座る隼人。
「なるわ、きっと。」
笑顔で答えると、隼人も頷く。
ホームでは、出発のアナウンスと音楽が流れている。
人生が変わるであろう、旅が始まる…。
話の中に出てくる列車の色『Midnightblue』ですが、今回色を探していた際、私のイメージ通りの色が見つかりました。名前も・・素敵でしょ?^^
http://www.colordic.org/colorsample/4162.html




