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星の降る街に  作者: 霧島
第2章
12/92

12 旅立ちの日 

鉄道の駅入り口に、二人が降り立つ。


国内外を走る鉄道と宇宙に繋がる鉄道の始発駅ということもあり、野球場が4つや5つ入りそうな広さと、その上吹き抜けで高さもある。駅には、隣接のビルや店もあり人も多く賑わっている。


「迷子になりそう・・。」

圧倒され思わず呟く。


頭上でクスクス笑う隼人の声。

「ちゃんと手を繋いでいないと迷子になるぞ。」


隼人の言葉にムッとする。

「こどもじゃないから。」


「わかったわかった。」

相変わらずクスクス笑いながら嬉しそうに私の手をとる。


「隼人・・嫌いっ。」

手を離そうと思ったら、ぐっと引き寄せ抱きしめられた。


「ごめん・・。今更嫌いになられても困る。」

見上げると本当に困ってる顔をして私を見ている。背伸びして私から唇を重ねる。


「本気で嫌いになるわけないじゃない。」

にっこり見つめると、


「まいった…降参…。」

隼人の溶けてしまいそうな笑顔にドキッとしてしまう。


「さてと・・行きますか。」

頷くと隼人が荷物を持ち、手続きのため、二人で受付窓口に向かう。



………………………………………………………………………………………………



旅立つ1週間前。


最後の打ち合わせのために、不動産屋にきていた。


「いよいよ1週間後だね。」

主人が大きな袋を抱えてきた。


「持っていくものが間に合ってよかったよ。」

言いながら、袋の中からテーブルの上に出す。


「まず二人のパスポートね。もし、道中無くしたとしても、最寄の駅で再発行してもらえるから心配しないで。指紋登録してあるから、無くしたパスポートは使えなくなるし。」

「鉄道の切符も同じく。」


「すごいですね。」

思わず感嘆の声が出る。


「指紋なら二人として同じ人はないもんなぁ。でも偽造できない・・とは、100%いえないでしょうけど。」

隼人は主人に話しかける。


「たしかに、100%ではないね。気をつけるに越したことはない。あと、パスポートに記載してある住所は、ここの店にしてあるから、とられたとしても、第三者に、二人の住んでいる所は知られることはないし、実際僕も二人の住所はしらないから教えようがない。」


「え?」

びっくりして聞き返す。


「念には念を押しておかないと、何に利用されるかわからないからね。」

主人がにっこり微笑んで答えてくれる。


「そこまで迷惑かけては・・。」

と言いかけると、


「ありがとうございます。お世話になります。僕たちに何かあったときにはこちらに連絡が入りますね。」

なにやら細かい話を二人で話し始めた。

どうも、私の思いと違った次元で二人は話しているみたい。そう思って話の中に入るのをやめた。


二人を眺めながら、ぼぉっとしていると、


「ケイ?どうした?」

隼人が私の顔を覗く。


「ん?二人で話してたから黙っていただけよ。」


「そっか。気がつかなくて悪かった。ごめんな。」

隼人の大きな手が私の頭を撫でる。


彼はよく私を撫でてくれるけれど、優しい手が気持ち良くてホッとするから大好き。


「あとは携帯電話とクレジットカード。両方全宇宙で使えるから心配しないで」

もう私は、何も言わず頷くだけ。


「あとはね。」

と、言いながらB5サイズの封筒を差し出した。


「鳴沢さんにお願いする、鍵と手紙ね。」

そう言われて、無意識に受け取る。


「この前も言った通り、speranza[スペランツァ]、についてからの地図と連絡先が書いたものも入っている。」

「無事終着駅まで着けることが前提だけど、万が一着けなかったり、無くなってしまっても、責任は感じなくていいからね。」

「一応、鍵にはGPSのような物も組み込まれてるし。」


「はぁ…。」

返事のしようがない。


「実は、せっかくのプライベートの旅、何だか押し付けてしまったようで申し訳なく思っているんだ。」


「それには私が承諾したことで、気になさらないで下さい。」

「彼も一緒なので心強いですし。」

隣に座る隼人も頷いている。


「そう言って貰えると嬉しいな。鍵を持っている以上、こちらでも場所がある程度把握できるし、何かあったら携帯で連絡してくれれば力になるから。」


「ありがとうございます。私たちの方がすべて準備して頂いて申し訳なく思っています。旅の途中に連絡するようにしますね。」


「いい旅になるように祈ってるよ。」



準備が揃って、店を出てきたら、もう辺りは真っ暗で、星が輝く時間になっていた。



………………………………………………………………………………………………



「あと1週間か…。」

自宅に戻り夜空を眺めていると、背中に温かいものを感じる。隼人が後ろから抱きしめてきたからだ。


「何を考えてる?」


「ん?いよいよ出発なんだなぁって思ってた。」


「そっか…。」


「国内旅行なら、こんなに身構えて準備しなくてもいいんだけど、今回のは特別だから、期待と不安が交互に来る感じ。」

「今日の、店の主人の話を聞いて特にそう思う。隼人は思わない?」


「たしかに、いろいろ思うことはあるけどさ。」

といいながら、私を正面に振り向かせ抱きしめる。


「すべて始まってみなきゃわからないものだと思うよ。仕事でもそうだっただろ?新しいプロジェクトに取り掛かるのに、心配よりとりあえずやってみて結果がでると。」

「だから今回の旅も行ってみないとわからない。行く前から不安になることはないんだよ。」

「俺も一緒だし。」


「そうだね。でもごめんね隼人。結局一緒に行くようになってしまって。私が辞めればよかったのかもしれないけど。」


「もう、それは言わないの…。」

私の顔を両手で挟み、額に優しいキスをする。


「俺は、一緒にいられるだけでいい。この気持ち伝わってる?」

挟んでいた手が顎に移り、今度は深く唇を重ねる…。


「俺を信じなさい。ちゃんとお前を守るから。」

黙って頷く・・。


「ありがとう。隼人と行けるのはとっても嬉しいし心強い。これからよろしくお願いします。」




運命は自分で開くもの…。待っていては、幸運は掴めない。

勇気を持って、一歩前へ歩みだす…。



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