最終話 世界の再構築
ああ、忙しい。そして大変だ。難しい。コレ以上無いくらいに。
前世でもこんなことがあったなぁ。テストもして、大丈夫と思ったらなぜかバグがあったり。思いもよらない見落としで性能がガタ落ちしたり。
ああ、利用者が一気に来過ぎて、サーバが悲鳴をあげた、ってのが近いかな。
だって仕方がないじゃないか。神様、じゃないか。大精霊の真似事なんて初めてなんだから。どれくらい負荷があるか、なんて予想もできないよ。
エルフが去った後、僕は魔道具の修復、いや、改良にとりかかった。この魔道具を作った賢者達の意思を継ぐ形で。
賢者達は大精霊の考えに賛同すると同時に、さらにその先を考えていた。いつの日か、大精霊が消えることになると予想していたのだ。
できるだけ消えないよう手をうつのも必要だが、消えた場合にどうするのかも考える必要がある。賢者達はもう一つの計画をたてた。
それが、大精霊のコピーを作ることだった。
神秘を保存する小部屋に篭った大精霊を調べ尽くし、それと同等の存在を作り出す。計画では小精霊を大量に集めて調整し、それを組み合わせようとしていたようだ。
しかし計画が完了する前に賢者達の命はすべて尽きてしまったようだ。
魔道具の裏に残された資料から、僕はそれらを知った。目の付け所はよいけど、大精霊を作ろうとかちょっと無謀すぎるように僕には思えた。小精霊は精霊ではあるけど、どちらかというと生き物ではなく道具だ。トンカチを集めてもショベルカー(運転手付き)にはならないだろうに。
賢者達は進むべき方向を間違えている。大切なのは人が生き延びることで、大精霊じゃない。大精霊は究極的には魔法を補助しているだけだ。つまり、魔法が発動できさえすればよいのだ。
賢者達が残してくれた資料と大精霊を調べ尽くした情報、それらはとても役に立った。解読はすごく大変だったけど。
大精霊は世界を見る。人々が生きる、この全世界を見る。
大精霊は人々を知る。人々が魔法を使おうとする兆候を知る。
大精霊は魔法を補助する。人の魂に刻まれた文様を補助する。
それは、ペンダントの機能と同じだ。地図で世界を見渡し、そこに生きる人々を光点として表示し、さらには魂の文様に手を加えることもできる。賢者達、あるいはその意思を継いだ誰かが、計画の一部としてペンダントを作ったに違いない。
僕はペンダントの機能を復活させるため、魔道具を作り始めた。大精霊と全く同じことをするような魔道具は作れない。でも、魔道具を補助する魔道具なら、ここにある資料で作れるはずだ。
世界が絶望に包まれている間、僕は魔道具を作り続けた。
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そして僕は意思を継いだ。神が信じ、大精霊が気にかけていた人々の行く末、それを守るという使命を継いだ。
産まれた時、僕は要らない子供だった。しかし祖父がくれた魔道具のお陰で、楽しい人生を手にした。そして最後に、僕は世界を作り直すという大役を果たしたのだ。
僕の胸に輝くペンダントは、今も人々を補助する。魂に刻まれた文様を持つ貴族だけじゃない。全ての人々に、その魂の形にふさわしい魔法を、文様なしで発動し続けている。
他人に攻撃の意思を向けて魔法を放ったものは、その魂に不適格者としての情報を書き込んだ。大精霊は魂を見る時、同時に感情も覗いていたのだ。その方法を真似させてもらった。
人を攻撃する奴なんて、守る価値もない。そのうち、魔法が使えない人間を、人々は社会から排除するようになるだろうな。危険分子は排除しなければ、この厳しい世界では生き抜いて行けないから。
ペンダントは僕に世界を教えてくれた。人について教えてくれた。そして力を与えてくれた。そして僕は、与えられたそれらすべてで、人々を後押ししていく。
人々にあまねく魔法を与えること、それが本当に人のためになるのかはわからない。あるいは自滅を招くことになるかもしれない。
だから僕はこの命が終わるまで、大精霊のようにこの世界を見続けていこう。
お祖父様、本当にありがとう。貴方のお陰で、要らない子が人々の守護者になれました。




