侵入者
ペンダントが教えてくれる。終わりをもたらす使者が、ついに今夜訪れる。
「さて、これで終わりだね。お疲れ様でした。」
目の前の小部屋に話しかける。返事はない。
僕を呼び出したときには必死に話しかけてきたというのに、ここ最近は特に無口だ。僕がどれだけ慰めたと思っているのだろう。その努力も無駄だったか。
4年前、僕はペンダントに届いたメッセージに従ってここにたどり着いた。そして魔法と魔道具とこの世界の過去について教えてもらった。
その頃はかなり饒舌だったというのに、今ではすっかりこんな風になっちゃって。まあ、僕が協力を拒んだから、ってのが理由の半分くらいは占めているだろう。あと半分は、まあ誰のせいでもないというか、仕方のないことだとぼくは思うのだが、彼にとっては違うのだろう。
論理的に考えて彼のせいではないだろうに。勝手に責任を自分のものだと思いこんで、背負い込んで、そしてその重さに潰れようとしている。
それを思えば、終わりの使者とは開放と許しを与える福音の使者とも言えるのか。いやはや、願いを断ち切ることが救いとは、この世界を作った神様ってのはよほどのひねくれ者と見える。
あるいは、世界なんてものは矛盾の塊ってことなのかな。
「何度も言ってるけど、貴方のせいじゃないですから。だから、気に病む必要はないですよ。あとのことなんて、残された人々に任せるしかないじゃないですか。
それこそ、神様がそうしたようにね。」
この程度の言葉では気を取り直すことはないだろうとはわかっているが、一応慰めの言葉をかけておく。慰めになっているかどうかわからんが。
さて、それでは終わりの使者の到着だ。ちなみに本人たちは自分たちを『英雄』と思っているようです。どこからその確信が生まれるんだよ。自信持ちすぎじゃないですかね。
僕の目の前で、扉が開いた。さあ、笑顔で出迎えよう。
「ようこそ、侵入者の皆さん。」
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我らが森を離れて、もう何年になるだろうか。ようやく目的の場所が見つかった。
長き時を生きる我らエルフ族ではあるが、今までの年月は苦労の連続で、とても長く感じられた。しかし、それも今日で終わる。すべての努力が報われるのだ。
我らが崇拝する大精霊様を幽閉している場所が判明した。森から連れ出した小精霊達に探らせていたのだが、ここ数年、なぜかめっきり探索が難しくなっていた。
しかし不断の努力が功を奏し、ついにここ、人間たちの国の王城地下へとたどり着いた!まったく、大精霊様を自分たちの足元に幽閉するなどと、なんという不敬!
故郷の森の長老たちは、なぜか大精霊様の救出を拒んでいた。神に見捨てられたこの世界で、最後まで残ってくださった大精霊様。それを我らの森にお迎えすることは大変な名誉だというのに。
ある時見つけた古文書に、神が去ったことと大精霊様が残られたことが書かれているのをみつけた。それを読み解くと、どこかに幽閉されていることまで判明したのだ。
だというのに、なぜか長老たちは我らを止めた。口伝により、大精霊様に近づくことは禁じられていると言って。
馬鹿な!閉じ込められているなら、お助けするのが我らの使命ではないか!なぜそれを止める!?
私は長老の制止を振り切り、エルフの森の中でも若手の4人と共に森を飛び出した。
我ら5人、必ずや大精霊様をお助けするのだ!
王城から離れた墓地、そこに巧妙に隠された隠し扉を開けて地下へと進む。ついに、我らが崇拝する大精霊様を森へお迎えできるのだ。
その暁には、きっと我らを祝福し、その功績を認めてくださるに違いない。何も考えず、行動もしなかった長老共を排除し、私が長となって皆を導くのだ。
目の前にある扉、そこから光が漏れている。仲間と目配せを交わし、落ち着いて扉を開ける。
そこには奇妙な、しかし巨大な魔道具が鎮座ましましていた。部屋の中央に小部屋がある。扉に丸い窓がついていて、そこにはクリスタルがはめ込まれていた。その小部屋の中に、大精霊様が居ることを小精霊が教えてくれる。
そして小部屋の前に、人間が立っていた。青年と言うには若く、少年というほどには幼くない。
その男が口を開いた。
「ようこそ、侵入者の皆さん。」




