神器との対面
僕は今日、柄にもなくワクワクしている。なんと、神より賜りし魔道具に出会えるのだ!これが胸踊らずにいられようか!
学院は魔法科のみに力を入れている。ただ、ほぼ諦めているとはいえ魔道具を使える人材の発掘にも取り組んでいる。その理由が、神器を扱える人材を見つけることなのだ。
古代の遺跡から発掘される魔道具は、正直に言って威力は全く期待できない。僕が思うに、大量生産の生活を便利にするためのグッズなのだとおもう。だから大量に発掘される。
しかし神が作った魔道具は違う。そりゃもうすごいのだ。
王城の一室に神器は飾られていた。魔道具科はどの学年も毎年1度、神器に触れることが許可される。見放された魔道具科にとってはこの上ない栄誉だ。たぶん、昔からの学院の伝統だからってことで今も許可されてるんだろうな。
神器は3つ。1つは豪炎を放つ杖、もうひとつがすべての攻撃を防ぐ盾、最後がすべての傷を癒やす水を作り出す杯だ。みんなが神器に目を奪われているスキに、僕はペンダントをこそこそと操作して神器をくまなく調べ尽くすように指示した。
魔道具科の生徒たちは一人ずつ神器に触れ、発動させようと魔力を込める。ま、当然ながら誰一人として発動できる生徒はいなかった。
力技で魔道具を使っていた同級生もチャレンジしていた。顔が真っ赤になるくらい力を込めて魔力を押し込む姿に笑いがこみ上げる。もちろん、そんな雑な方法では発動など無理だ。
ペンダントの表示を横目で見ると、神器にはとても細かい装飾が施されているようだった。前世知識から、僕にはそれが電子回路のパターンのように感じられた。もちろん全然違う形なんだけど、なんとなくそれを連想する。
力技の魔力でそのパターンが潰されてしまうのでは?と少し心配になったが、そこはやはり神器。まったく損傷した様子はなかった。神器を管理する担当の人も言っていたが、落としても傷一つ付かず、歪んだりもしないらしい。というか、落としたことあるんですか?扱い雑ですね。
ようやく僕の番になった。僕は杯を選ぶと、魔力を集めてそっと沿わせていく。おおっ!?こ、これは!!
すごく難しい!なんだこれ!?
遺跡から発掘される魔道具も、普通の人にはかなり難しい。これは簡単に扱えると危険ということで、錠前のような機構がかけられているからだ。いわばチャイルドロックのようなものだ。
でもこの神器は違った。たぶん、錠前なんてない。この細かいパターンに魔力を添わせるのが単純に難しい。
そして、手応えからいくとたぶん魔力が足りない。おそらく、僕が全力で魔力を集めないとダメじゃないかな。その上、このパターンにフィットさせるとか、集中力が持たないよこれは。
うーん、神様ってば、もうちょっと使いやすい神器を作ってくれればなぁ……。神様にしてみれば、余裕で使える道具なのかもしれないけど、人間にはとんでもない天才でなければきっと無理だよ。
結局、魔道具科の誰も神器を扱うことはできなかった。まあ、例年そうなのだから教師やお城の人も落胆の様子はない。
生徒の側も、さすがに神器を扱えると思っているような思い上がりは一人もいない……、おっと、力技の彼はなんだか悔しそうだ。その無邪気な思い上がり、若さだねぇ。




