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イジメ

 学園からの帰り、僕は裏門からいつも出るようにしている。こちらのほうが冒険者組合に近いのだ。でも、ここ最近はこちらを通るのが億劫になっている。

 ほら、今日もまた居る。なんだってそんなに元気なんですかね。

 僕の見る先に、前世でもよく聞いた状況、ようするにイジメが発生していた。ここ最近、何度も見る。魔道具科のヤツじゃないので、魔法科なんだろうけど、エリート同士でもイジメってあるんだね。

 ……ああ、そういえば誰か噂してたな。魔法科にすごく細っこい子がいて、なんでもものすごい弱小貴族なんだけど魔法の使える子が産まれたとかなんとか。あのちっちゃいシルエット、まさにそれっぽい。

 平民をイジメるなら、身分という意味で理解できるけど、同じ貴族同士でイジメとか何の意味があるやら……。まあ何にせよ見ていて気持ちのいいものじゃない。

 どうしようかな~、と隠れて眺めながら悩んでいたら、今日の分のイジメは終わったらしい。4人がホクホクとした顔で帰っていく。取り残された1人は、うなだれたまま。うーん、今日の内容はカツアゲかなにかかな。

 ……うん、やっぱり気分悪いし、ちょっと介入しちゃおうかな。普段の僕なら見捨ててるところだが、これからも毎日のようにここを通るのだ。その度にあんな光景を見せられちゃたまらない。

 別に彼に同情してるわけじゃない。誰だって見苦しいものは片付けるでしょ?それと一緒。


「こんにちは。」


 話しかけてもこちらを見ない。地面を見て、ぎゅっと手を握りしめて耐え続けているままだ。


「単刀直入に言います。この紙に書かれた4つの四角、ここにバッテンを書くとあいつらが死にます。1箇所につき1人です。」


 彼はゆっくり僕を見上げる。というか、ポカンとしている。まあそうだろうね。


「突然こんなこと言われても信じられないでしょうけど、今の貴方には必要だと思って。言っておきますけど、僕は本気です。嘘でも冗談でもないし、当然からかう気も全くありません。」


 紙を差し出すと素直に受け取った。彼は紙をしげしげと眺めている。


「それでは。」


 僕は至極真面目な顔で別れを告げた。


 彼はあれを使うだろうか?冷静になって考えてみれば、紙が本物なら彼がやることは殺人となる。彼にそれができるかな?

 追い詰められていれば、あるいはやってしまうかもしれない。しかし紙の効果を信じられなければ使わないだろう。

 彼が殺人を忌避するなら、そもそも使わないだろう。やるかやらないか、思うにこれは前者は相当不利だろうな。彼、優しそうだし。


 もしかしたら殺人なんてひどい、とか思ってるかな?

 人に暴行を加えたり、持ち物を奪ったり、精神的に追い詰めることって、普通の人がやることなの?

 僕から見れば、そんなことをやるような奴は死んでもらって全然困らない。だいたい、そんなことするような奴、言葉で言って聞かせるなんてのは無理でしょ。

 もし言葉なり暴力なりで従わせることができたとしても、どうせ復讐を考えたりするよ、こういうやつは。


 とはいえ、殺人なんてことを、あの優しそうな彼ができるわけがないだろうね。

 え、僕がやればいいって?

 なんで関係ない僕がそんなことやらないといけないの?

 これは彼の問題だ。でも武器も持たずに戦争はできない。奴らには暴力という武器があるけど、優しい彼には武器がない。だから武器を渡してあげたのだ。


 さてさて、どうなるかな?怪しい紙を信じるか、信じないか。使うか、使わないか。結果が楽しみだ。


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