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7… 黒


「還暦戦隊コウレイジャー、黒?!そんなんいたの?!」

そりゃ驚く他の色たち。

「そんなこと全然聞いてない!オレたちの他にもコウレイジャーがいるなんて!」

謎のイケオジは無表情。

その時、売れない漫画家さんは謎の組織から与えられた役職名を思い出した。

「コウレイジャーリザーヴ」。

響きがカッコいいから気にしなかったが、“リザーヴ”とは、「予備」みたいな意味である。

予備…としての扱い。代わりはいくらでもいるということか、と思うと背筋がゾッとする。


「とりあえず、お客さんたちを会場の外に出しましょう!

もう少しで黒も到着しますので!」

モヤモヤしたまま、コウレイジャーたちはお客さんたちの対応を始める。

お客さんたちは、コウレイジャーを温泉施設の戦隊ヒーローもので、湯もみショーに出るはずの人たちだろう、ぐらいに思っているようだった。

小さめの子供たちは一瞬喜んだが、中身がどうやら年寄りくさいと気が付くと微妙な表情を見せた。

だが今の子供は賢いので「えー、コレジジイじゃん、ババアじゃーん!がっかりぃー」などとはあまり口には出さない、エライ。

会場内が一通り落ち着いた頃、少し離れたところからバリバリとヘリコプターの音がして、さらに三分後、湯畑の湯けむりの中から一人の男が走ってきた。


ーーーーー


中年中肉中背、スーツ、メガネ、手には濃紺の中型(二〜三泊分くらい)のスーツケースを持っていてガラガラ派手な音を立てながら引いている。

どこからどう見ても

どこからどう見ても


ニッポニアニッポンサラリーマン!


スマホは横持ちで通話中。

「はい、はい、大変申し訳ございません!急なトラブルで、御社にお伺いすることが本日出来なくなってしまいました!また改めましてお詫びと、ご挨拶の日取りを決めさせていただきたいと…ええ、リスケで!」

サラリーマンだ。まごうことなきサラリーマンだ。

少しネクタイが横に曲がったサラリーマンは、磨いた革靴で湯畑を抜けて湯もみ会場に入ってきた。


謎のイケオジが呼びかける。

「待ってましたよ!柴田さん!柴田信男さん!」

「のぶお、なら、のぶちゃんか」

秒であだ名を決める半蔵さん。

「みんなそのまま呼んでるんだから、信男さんでいいんじゃない?」

梨乃さんが突っ込んだ。

「いやでも、信男さんっつーより、のぶちゃんって感じじゃねーか?」

「まあねぇ」

話が弾んでいる者たちを黙らせるために、のぶちゃんがゴホンゴホンとわざとらしく咳をした。


「のぶちゃんでいいです。」

さっさと議論を終わらせる有能さ。

「皆様、お初にお目にかかります。

私、こう言う者です。よろしくお願いいたします。」

落ち着き払った感じ(いかにも東京人)で、おもむろにスーツの内ポケットから名刺を差し出すサラリーマン…もとい、コウレイジャー黒。


謎のイケオジ以外の全員に、それぞれ一枚づつ、ピシッとしたお辞儀角度の腰で受け渡す。


のぶちゃんの顔は…なんと言うか、体型と同じくものすごく一般的だった。不細工でもイケメンでもない、まあ普通の。額がやや広め。ただ一つの特徴は、眉間の間のお釈迦さまみたいなホクロ。(正確にはお釈迦さまのはホクロじゃないらしいけど)

お年寄りには好かれるかもしれない、みたいな。万人にやや受け。

自称恋愛の達人こまちちゃんはのぶちゃんを見て、家柄は悪くなく学歴がある、エエトコの会社勤務、有望な若い後輩紹介してください♡というプロファイリングをした。


「出張先が近場で良かったです。ヘリを回していただいたので、すぐ来られました。」

「スキーマーの情報はヘリで見たよね。着替えとく?」

「はい」

謎のイケオジがタスキを渡す。


「還暦戦隊!コウレイジャー黒!」

カッ!全体的に体が光る!


「おー」パチパチ

イマイチの歓声の中、お初にお目にかかります、コウレイジャー黒が爆誕した。


基本体型はそのままなので、中年中肉中背で黒いスーツのコウレイジャーである。


「問題は必殺技だな」

秀治さんがしげしげ新しい仲間を眺めながら言った。


「黒には、吸収からの分解の必殺技があります。毒などに有効な技となってます」

謎のイケオジが素早く解説した。

「謎の組織はスチームファントムを毒だと解釈したのですね。

承知しました、お任せください」


コウレイジャー黒は、湯けむりの中に漂うファントムたちの、中央に立った。

五十体以上の亡霊が所在なく湯もみショーの木枠の周りをゆらゆら歩いている。


「必殺!アブソーブandブレイクダウン!」

黒が手のひらを向けて伸ばした腕を回し始めた。

逆扇風機のように、風がその手のひらに向かって流れてくる。

「なんか…効きそう!」はしゃぐこまちちゃん。


その風に溶かされるように、ファントムたちは形を崩す。

粉状になり煙になり、黒の手に吸い込まれていく。

「よーし、あと少しだ!新入り頑張れ!」

三郎さんが応援した。

今回は楽勝ムード…かと思った時、梨乃さんが叫んだ。

「待って!ちょっと待って!!」




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