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6… スチームファントム


そうそう、梨乃さんが殺人犯に羽交締めにされているのだった。


「きゃーきゃー、こわ〜い」

なんとなく緊張感にかける、梨乃さんの悲鳴。

“コウレイジャー、どピンク”としての自信があるのだろうか。宇宙怪物なる敵をやっつけたという実績が。

「ていっ」

赤の半蔵さんが、軽くその男の肩を小突く。

「ぎゃー、いたい!いたい!」

男はかなり大袈裟に騒いだ。街の整体の弱めの力加減ぐらいだったのに。

余談だが、整体屋の数でその街の老人密度が分かる気がする…ちなみに千葉の某市川市は、見渡す限り整体屋さんがあります、すごいです。

男が動揺しまくっている隙に、三郎さんが後ろから男を捕まえた。

どこに隠し持っていたのか、謎のイケオジがメタル製の結束バンドみたいなモノを出してきて後ろ手に縛り上げる。全然外せないやつだ。

梨乃さんは少し乱れた髪の毛を直しながら、年の功の余裕をみせて言った。人質で捕まった割には落ち着きを払っている。

「で、アンタいったい何をしたの?」

ちょっと良い女風の梨乃さん。

その男…よく見るとまだ二十代後半ぐらいから三十代前半ぐらいで若く、気弱そうなタイプだった。は、まだ残る湯けむりの中をキョロキョロしながらブツブツ呟いた。

「あの女が、ボクを騙して…だから…懲らしめてやらないと…」

「騙された?」

「ボクに大好きって言ったのに、他の男にも言ってて…」

「ふんふん」

「ボクは何万円もお金出してあげたのに…」

「デートで?付き合ってたの?」

「彼女がバイトしてたお店で、いつも横に座ってくれた…」

「もしかしてキャバクラのハナシ?そりゃ仕事で(お金出してくれる人は)好き、ぐらい言うわよ!きもっ!」

とこまちちゃんがズバッと言う。

「ボクは、ちゃんと話し合おうと思って…アパートを突き止めて行ってみたら、違う男がいて…」

「ストーカーやん!」

「彼女は楽しそうに笑ってて…アイツにはタダで…なんか頭に来て、男がいない時に突撃したら…」

「男がいない時を狙うのがまたクズオブクズやな」と三郎さん。

「あの女、“アンタは客でしょー”とか言うから、躾けてやらなきゃと思って…」

「ああーーーきんもぉーーーいますぐ息止めて◯ねぇぇーーー」

こまちちゃん、珍しく感情的に怒り狂う。なにか似たような経験があるのだろうか。

そこまで黙って聞いていた半蔵さんが、うなだれる男のほっぺをぶん殴った。一応変身してるので平手打ちで。

「このバカがっ!そんなことで◯したんかっ!世の中はお前だけのために回ってねーんだぞ!」

半蔵さんには娘がいる。多分被害者がその娘と重なったんだろう。


ふ、と湯けむりの中から幻のように女の子が浮かび上がり、みんなの前に立った。

男は「うわぁぁぁーーーー」と絶叫する。その、女の子だ。

女の子は、男に恨み言を言うわけではなく、ただ、ただ、

「お母さん、ごめんなさい、お母さん」

と呟いていた。

ブワッと涙が出る半蔵さん。

「親御さんのところに戻りてぇんだなぁ、可哀想に」

女の子はコクリコクリと、うなずいた。

「この子のご遺体を隠した場所を警察に話して、家族の元に返してやんな」

男はただ震えるだけ。

「まだ分かんねぇよな。オメェには。

もし、オメェが罪を償って、その後万一結婚出来たとして、幸運に子供を授かったとしたら、その時になってやっと、…やっとなぁ…」

それ以上、半蔵さんはしゃべることが出来なかった。

「お母さん、ごめんなさい、お母さん」

女の子は記憶の中みたいに呟く。

半蔵さんは実態のないその子の頭をなでて、梨乃さんは抱きしめた。


「どんなことをしてもウチの組織ならこの男に全て白状させます。警察の前に手配しましょう」

謎のイケオジが請け負う。

謎の組織がどんな手を使うのか…謎。

「…微弱ですが、辺り一面にスキーマーの反応があります。

これは多分、超微粒子型、模倣タイプのスキーマーで、現地の星の生物になりきるために細胞に入り込んで情報を集めます。

厄介なのは見つけにくいことでしてね…かなりの部分が同化するので宇宙怪物としての信号が弱いのです。彼らはもはや地球上に無数に散らばり、支配しているのではないかという一説もありますが。

とにかく今回はまだ侵入して間もないのでしょう。

本部に報告します!

十六時十五分、宇宙怪物スキーマー、超微粒子型模倣タイプ、スチームファントムと命名、確認!

また、スチームファントムの対処法をご検討願います」


「あ、あたしも変身しとく」

「ハイハイ」

イケオジは晴れて自由の身になった梨乃さんにどピンクのタスキを渡した。

「還暦戦隊!コウレイジャーどピンク!」

決めゼリフと共にどピンクに変身する梨乃さん。

「あら、あらぁ!」

自分のピンクのヒーロースーツを見て驚く。

「これー、上着付いてるじゃん!」

どピンクのスーツには、お尻が隠れる安心丈のチュニックが標準装備されていた!

「ふ、あなたの為に改良しました」

得意げな謎のイケオジ。紳士のように頭をペコリと下げる。


「よおし!」俄然張り切る梨乃さん。お腹やお尻がたるんでても大丈夫、そんなチュニック付きは安心感が違う。


ピピ、謎のイケオジの時計が鳴った。

「本部より…スチームファントムの対処法が届きました。

うーむ、赤、青、黄色、どピンク…どの特性にもない必殺技が必要ですね…!

うーむ…なるほど、うんうん、大丈夫です、ちょうどこの近くに、能力保有者が出張で来ているようです!」

「出張?」

「え、いや他にもコウレイジャーがいるの?!」

騒つく一同。

「います、最近スカウトした新たなる戦力、還暦戦隊コウレイジャー、黒!」


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