↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
5/9

第4話 最初の作戦-----115番街

坂井は七海について柔道部へと向かった。広い道場では、五十人以上の部員たちが汗を流しながら練習に励んでいる。


「柔道部は警察官を目指している部員も多いから、いつも活気があるのよ」七海が笑顔で説明する。


「おい、七海!」体格のいい柔道着の男が大股で歩み寄ってきた。

七海が手を振る。「本田先輩! 坂井くん、紹介するね。部長の本田先輩よ」


「体験入部か?……? お前も警察を目指してるのか?」本田が坂井をじろじろと見つめる。

坂井はその圧倒的な威圧感に引きつった笑みを浮かべた。「あ……いえ、今のところ考えてません……」


七海と本田が顔を見合わせると、本田は笑いながら柔道着を一着持ってきて坂井に手渡した。「まあ着替えてみろ! さっそく試してみようぜ!」


着替えを終えると、本田が道場の中央に立った。「まずは実力を見せてもらおうか」

坂井は七海の前に立ち、彼女が綺麗な柔道の構えをとるのを見つめる。


(このメガネがどれほどのものか、試してみるか……)坂井はそっとメガネの隠しスイッチを押した。


対戦相手の動作を分析中…… 柔道モーション:98% | その他:2%]*

警告:戦術データベース不足(0%) — 予測パターン生成不能


「えっ?!」


坂井が反応する間もなく、七海は疾風のように間合いを詰め、彼の袖を掴むと同時に足をかけた——

ドンッ!

坂井の視界が激しく回転し、そのまま畳の上へと叩きつけられた。


(気付いたら……もう倒されてる……?)


メガネの視界に新しい通知がポップアップする。

[データ追加…… 学習率が2%に上昇 — 只今の投げ技をリプレイ&分解中]


「大丈夫? 坂井くん?」七海が心配そうに手を差し伸べた。「ぼーっとしてたみたいだけど」

「大丈夫……ただ、七海さんが凄すぎて、どうやって倒されたのかも分からなかったよ」


本田が歩み寄り、豪快に坂井の肩を叩いた。「気にするな、初心者はみんなそんなもんだ! だがな——」本田は自分の目を指さした。「次からの練習では、メガネは外しておいた方が安全だぞ」

「はい、分かりました」


坂井はメガネを外し、カメラを道場の中央に向けた状態で、さりげなく脇のパイプ椅子の上に置いた。


「よし、まずは私の動きを見て、基本から覚えていこう!」

本田も笑って頷く。「七線が教えるなら、上達も早そうだ!」


一時間後。


トゥルルル……!


電話が鳴り響き、本田が受話器を取った。彼の表情が瞬時に極めて深刻なものへと変わる。「なに……?! 住所はどこだ……?! 分かった!」

彼は七海を手招きで呼び寄せ、椅子の脇で声を潜めて素早く言葉を交わした。


話が終わると、本田は道場の中央へと歩み出で、大声で指示を出した。「集合!!!」


全員が素早く列を作る。「今日の練習はここまで! 解散!」

「オス!!!」部員たちの威勢のいい声が響き渡り、着替えのために散っていった。


七線が坂井の元へ駆け寄る。「今日はどうだった?」

坂井は微笑んで答えた。「すごく楽しかったよ! また来てもいいかな? 警察になりたいかどうかはまだ分からないけど……」

七海は上品に微笑んだ。「もちろん! いつでも大歓迎よ!」


彼女は腕時計に目をやると、焦った様子を見せた。「あ、急用ができたから先に行くね!」そう言い残すと、本田の後を追って走っていった。


二人が完全に遠ざかったのを確認し、坂井は椅子に近付いてメガネを拾い上げ、再び装着した。


[柔道データベース解析度:5% — 動作分解分析が完了]


坂井は周囲に誰もいないことを確認してから分析結果を開いた。画面には先ほどの七海の突進がリプレイされ、メガネの表示上に三、四本の赤い破線が伸びて回避と反撃のルートを示していた。


「……みんないなくなった後に完璧な分析をされても意味ないだろ」坂井は溜息をつき、メガネの機能をオフにした。


橋本のアジトに到着すると、橋本はロリポップを舐めながら、振り返りもせずに尋ねた。「練習はどうだったの?」

坂井は驚いた。「え……なんで練習に行ってたこと知ってるの?」

「メガネのログを見たからよ」


橋本はメガネを受け取ってパソコンに接続し、画面のデータ解析を眺めた。「なるほどね……戦術アルゴリズムは完成したと思ってたけど、このAIはまだ大量の実戦データを学ばせる必要があるみたいね」

突然、橋本がピクッと眉を動かした。「ん? これ何の音?」


彼女はメガネが椅子の上で録音していた音声ファイルを再生した——


『情報屋からのネタだ。ターゲットは今夜7時、115番街の路地裏に現れる。』

『ジャック一家か……分かった。今夜こそアイツを捕まえる』*

『……上に報告しなくて本当にいいのか?』*

『報告したらこの件は間違いなく揉み消される。私を信じて』*


録音が終わった。


坂井は不安そうに尋ねた。「ジャック一家? それって何なんだ?」

橋本は呆れたように坂井を見た。「自分を脅してきたチンピラがどの組織の人間かも知らないの? ジャック・大翔、ジャック一家ーの人間よ。表向きは落ちぶれた名家だけど、裏では警察の闇を握ってる——賄賂、利益供与、密輸、やらないことなんてないの組織よ」


坂井は生唾を飲み込んだ。「じゃあ……僕の任務はそのジャック一家を壊滅させること?」

橋本はそれを否定した。「そんな連中どうでもいいわ。私はあいつらに盗まれたものを取り戻したいだけ」

「一体何を盗まれたの?」


橋本は沈黙し、それ以上は語らなかった。「昔話をしてる時間はないわ。もう六時半よ、あんたも出動しなさい」

「出動?! こんな格好でどうやって出動するんだよ?!」

「そのメガネがあれば十分でしょ! さっさと情報を探ってきなさい!」

「僕が捕まったらどうするんだよ?!」

「つべこべ言わない! 行ってきなさい。!」橋本は坂井の背中を叩き、鉄扉の外へと押し出した。


坂井は全身黒っぽいスポーツウェアに着替え、帽子とメガネを着用して、ひそかに115番街の路地裏付近へと潜入した。

「メガネ、現場を偵察したい。何かアドバイスは?」


[エラー:マップデータ不足 — ナビゲーションおよび分析不能]


坂井は思わず天を仰いだ。。「マップすらダウンロードされてないのかよ……」


彼はやむを得ず、脇の非常階段を使って五階の屋上へと登り、暗い路地を見下ろした。

間もなくして、二台の黒い高級セダンが路地へと滑り込んできた。


一台の車からスーツを着た黒づくめの男が降りてきた。その脇には、二本の鉄パイプを手に持ち、黒い覆面を被った大柄な男が従っている。もう一台の車からは、怯えた表情のサラリーマンがアタッシュケースを抱えて降りてきた。

三人は向かい合って話し始めたが、距離が遠すぎて坂井には全く声が聞こえない。


[推奨戦術:現在地から四階ベランダへジャンプ。最適な音声収集が可能]


坂井は足下のビル五階分の高さを見下ろし、足がすくんだ。「ここから飛び降りるなんて狂気の沙汰だろ!」


彼は階段を駆け下り、壁際に捨てられた排気口の穴を見つけると、素早く中に這い込んで生い茂る草むらに身を潜めた。


ウゥゥゥ——! ウゥゥゥ——!

突然、鋭いサイレンの音が路地全体に響き渡った!


「動くな! 警察だ!」七海が拳銃を構えて車から降り立ち、銃口を黒づくめの男へと向けた。


しかし黒づくめの男は慌てる様子もなく、むしろ余裕の笑みを浮かべてサラリーマンを見つめた。「どうやら……裏切られたようだな」

「ち、違う! 俺じゃない! 俺は何も知らない!」


ドゴッ!

覆面を被った鬼丸が猛然と腕を振り抜き、手に持った鉄パイプをハンマーのようにサラリーマンの頭部へと叩きつけた! 男はその場に倒れ込み、ピクリとも動かなくなった。

黒づくめの男は冷ややかに車へと戻った。「鬼丸、この『坊や』の相手をしてやれ」そう言い捨てると、車を急発進させて走り去った。


「待て!」本田が叫びながら飛び出し、鬼丸を押さえつけようとした。

だが鬼丸は本田の動きを完全に読んでいたかのように、半身で軽々とタックルをかわすと、反転して鉄パイプを本田の背中に叩き込んだ!


ガンッ! 重い打撃音が響き、本田は悲鳴を上げて倒れ伏した。


「哀れな戦い方だな」鬼丸は振り返り、七海に向かって冷笑を浮かべた。「お嬢ちゃん、そのおもちゃのピストルを下ろしな」

七海は両手を震わせながら拳銃を構え続けた。「あ……あなた、私が撃たないとでも思ってるの?!」


「撃ってみろよ」鬼丸が一歩一歩間合いを詰めてくる。「その引き金を引いた後の責任が取れるならな……山のような始末書に、あなたの出世街道にも傷がつくぞ」


ズドン!

一発の銃弾が鬼丸の頬をかすめ、背後の壁に着弾した。

七海は歯をくいしばった。「次は外さないわ!」

「イカれた女が……!」


鬼丸の目が鋭く光り、猛獣のように鉄パイプを構えて突進してきた!

バン! バン! バン!

焦った七海は三連射したが、動揺から全て明当外れの方向へ飛んでいった。迫りくる鉄パイプを前に、七海は絶望して目を閉じた——


ガツッ!

一発の小石が、鬼丸の後頭部に正確に着弾した!

「いってぇ!」鬼丸が思わず振り返る。


七海はこの千載一遇のチャンスを逃さず、躍り出て相手の襟元を掴み、投げ技を打とうとした! しかし鬼丸の反応は極めて早く、勢いを殺さずに強力な後ろ蹴りを七海の腹部に叩き込んだ! 七海は吹き飛ばされ、地面を転がった。


鬼丸は首を巡らせ、草むらの暗闇に佇む影を睨みつけた。暗闇に紛れているため、鬼丸には坂井の顔が見えない。

その瞬間、坂井の視界の中でメガネが赤く警告を点滅させた。


[極高危険予警!] — [最適戦術:即座に右側へ回避せよ!]*


ヒュッ——!

鬼丸は残った一本の鉄パイプを、投擲ナイフのような凄まじい速度で投げつけてきた!

AIの予測に従い、坂井は本能的に右側へと転がった——鉄パイプが彼の耳元をかすめて風を切り、背後のレンガ壁を突き破った!


「なっ……?! かわしただと?!」鬼丸は暗闇の影を見て目を見張ったが、近づいてくるサイレンの音を聞きつけると、深追いを取りやめて素早く逃走した。


七海は腹部の激痛に耐えながら追おうとしたが、暗闇の中の坂井は咄嗟に地面の重傷者を指さした。

七海は足を止め、暗闇に向かって銃を向けた。「あ……あなた誰なの?! 待って!」


坂井は一言も発することなく、そのまま闇へ消えた。。七海はそれを見送ると、慌てて無線機を取り出し応援を呼んだ。


アジトに戻ると、テレビのニュースが現場の様子を報じていた。

『本日、115番街の路地裏にて暴力団が絡むトラブルが発生し、男性会社員一名が頭部に強い打撃を受け、搬送先の病院で死亡が確認されました……』*


坂井はニュースを見つめたまま、テレビの前で絶句していた。

(僕には関係ないことなのに……どうしてこんなに胸が重いんだ……)


坂井はメガネを外し、橋本へと差し出した。「……いくつか、修正してほしいところがあるんだ」


一方、警察署の執務室。


「勝手に発砲した上、単独行動で死者まで出しただと??!」

上司が机をバンと叩き、七海に向かって怒号を飛ばしていた。


七海は悔しそうに反論した。「相手はジャック一家の人間だったんです! 必要な判断でした!」


「明日までに50枚の反省文を私のデスクに提出しろ!」

上司はドアへと向かい、すれ違いざまに七海の肩を強く小突き、冷たく言い捨てた。

「……言ったはずだ。お前にはまだ早いとな」


部屋には七海一人だけが取り残された。

彼女は呆然と、テレビに映るニュースの現場映像を見つめながら、ぽつりと呟いた。


「あの人は……一体、誰だったんだろう……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。