↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の猫はバレてません!〜猫又であることを隠して、ご主人さまと子育てしますニャ!〜  作者: 陰陽@4作品商業化(コミカライズ・書籍・有料連載)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/43

第33話 ルナに遊ばれてるのニャ

 ルナの体から溢れる黒い魔力が、遺跡の石柱をゆっくりと侵食していく。

 あちしは九本の尻尾を大きく広げ、ハルトの前に立った。

「ハルト、下がってニャ!」


 次の瞬間、ルナがしっぽを軽く振り上げた。

 しっぽの黒い影が蛇のように伸び、あちし目がけて飛んでくる。

 試し程度の攻撃。本気ではないのが、はっきりとわかった。


「……軽いニャ!」

 あちしは尻尾で影を払い、魔力を纏った前脚で打ち消した。

 衝撃で足元の土が少し舞い上がる程度で済む。


ルナは面白そうに目を細めた。

「あら、ちゃんと防げるのね。少しは期待してもいいのかしら。」

「ハルトには攻撃させないニャ!」


 続けて二度、三度と影が飛んでくる。あちしはすべてを弾き返しながら、一歩もハルトに近づけさせなかった。

 だけど、ルナのしっぽの数は、あちしより全然少ないのに、操る自由度が尋常じゃなかった。


 そのスピードがどんどん速くなって、あちしがさばききれなくなり、攻撃をくらってしまった。

 ハルトが「ミミ!」と声を上げ、前に出ようとした瞬間——「だめニャ!!」


 あちしが鋭く制止する。その隙を突くように、ルナの影がハルトの足元まで伸びかけた。あちしはとっさに身を翻し、影を尻尾で叩き潰した。


 ルナが低く笑った。

「まだ本気を出す気はないわ。だけど私には遠く及ばないことがわかったでしょう?あなたが拒んだ以上、予定通り、次は子どもたちの心臓からいただくだけよ。」


 赤い瞳が、月光の下で冷たく光る。

「今夜は特別に見逃してあげる。次に会うときは、あの可愛い子たちの心臓を持っていらっしゃい。それが嫌ならあなたの心臓を差し出すのね。」


「……っ!!」

 あちしの体が硬直する。ランディスとリリアナの顔が、頭の中に鮮明に浮かんだ。


 ルナはそれ以上何も言わず、黒い影に体を溶かすように消えていった。

 気配が完全に消えるまで、ほんの数秒しかかからなかった。


 森に再び静寂が戻る。

 あちしは荒い息をつきながら、九本の尻尾をゆっくりと下ろした。

 深手はない。殆ど防いだし、唯一くらった攻撃すらも、たぶん本気じゃなかった。でも、胸の奥がずしりと重い。


「……ミミ。」

 ハルトが近づいてくる。すごく顔色が悪いニャ。

「あいつ……子どもたちを……狙うって、言ったな。」


「……はい。」

 あちしは人間の姿に変化しながら、俯いたまま、小さく頷いた。

 あちしとハルトは、ほとんど無言のまま、屋敷へと戻った。


 夜明けが近い空が、薄く白み始めている。

 ハルトは時々あちしの方を見たけど、無理に何かを聞こうとはしなかった。

 ただ、しっかりと隣を歩いてくれている。


 屋敷に着くと、子どもたちはまだ深く眠っていた。

 ハルトは書斎に灯りを入れ、あちしを中へ招き入れた。

「座ってくれ。……全部、話してくれるかい?」


 あちしは椅子に座り、ゆっくりと口を開いた。

「あの黒い猫又は、ルナという名前ニャ。グランディック伯爵家の……聖女の血を引く家系の心臓を、儀式の贄にしようとしているの。」


 ハルトの表情が、強張る。

「ハルトのお父さんと妹さんの心臓がなかったのは、そのせいなのニャ……。」

「それで、子どもたちの心臓も、手に入れようと?」


「……はい。すでに二人ぶんの心臓を得て、かなり力を取り戻しているみたいです。あと三人——ハルトと、ランディスと、リリアナの心臓があれば、ルナは完全体になれるらしいニャ。」


「完全体……?」

「九尾の狐を超える力を得る、と言っていました。九尾の伝説を猫の側に書き換える、とも。」


 あちしは拳を強く握った。

「そして……あちしの九本の尻尾の猫又の心臓なら、三人分以上の価値があるから、身代わりになれと取引を持ちかけられたのニャ。ハルトたちに手を出さない代わりに、あちしの心臓を差し出せ、と。」


 書斎に重い沈黙が落ちる。

 ハルトはしばらく何も言わず、ただじっとあちしを見つめていた。

 やがて、ハルトは深く息を吐き、静かに、しかし強い声で言った。


「……子どもたちは、絶対に守る。ミミも、一人で抱え込むな。」

 あちしが顔を上げる。

「でも……あいつはとっても強いのニャ。まだ完全体じゃないにも関わらず、あちしは防戦一方だったニャ。」


「──君は自分を差し出そうと、ずっと悩んでいたんじゃないのかい?でも、それは僕が許さない。君がいなくなったら、子どもたちも僕も……意味がないからね。」

 ハルトの目は真っ直ぐだった。怯えではなく、覚悟の色が濃く浮かんでいる。


「一緒に守ろう。君はもう、一人じゃないんだ。」

 その言葉が、胸の奥に深く染み込んでくる。あちしは小さく息を吸い、ゆっくりと頷いた。


「……自己犠牲は、選ばないニャ。あちしのも、みんなのも、心臓は渡さない。戦ってでも、守る。みんなで、守るニャ。」

 ハルトが少しだけ、柔らかく微笑んだ。


「ああ。そうしよう。きっと何か方法がある筈だ。それと、少しでも寝よう。子どもたちはまたきっと、君と遊びたがるだろうからね。」

「ハルトも寝て下さいね。私に付き合って、寝てないんですから。」


 ハルトと別れて、あちしは自分の部屋に向かって歩いていた。子どもたちの寝息が、遠くの廊下から微かに聞こえてくる。あちしは心の中で呟いた。

『あいつは封印されてた過去があるニャ。きっと何か方法がある筈なのニャ。……絶対に、守るニャ。ランディスも、リリアナも、ハルトも。誰一人、失わせない。』




────────────────────


X(旧Twitter)始めてみました。

よろしければアカウントフォローお願いします。

@YinYang2145675


少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。

ランキングには反映しませんが、作者のモチベーションが上がります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。