↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の猫はバレてません!〜猫又であることを隠して、ご主人さまと子育てしますニャ!〜  作者: 陰陽@4作品商業化(コミカライズ・書籍・有料連載)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/43

第30話 黒い猫又と対決ニャ!

 その夜も、あちしは屋敷を抜け出した。子どもたちはすやすやと眠り、ハルトは書斎で書類に向かっている。「一人で調べる」と決めた以上、もう迷う理由はなかった。


 猫の姿に変わって森に入る。精霊たちが教えてくれた古い遺跡のあたり。前回、黒い毛と赤い光の残滓を見つけた場所だ。


 あちしは静かに魔力を広げ、気配を探った。

『……いる。近くにいるニャ。』


 精霊たちも葉の間から小さく囁いてくる。

「黒い猫又の気配が、また近くにあるよ……。」

 だけど、姿が見えない。


「あいつは一度捕まったんだよ。」

「封印されていたんだよ。」

「でも逃げたんだよ。」

「そして捕まらないんだよ。」

 精霊たちが、その赤いまがまがしい魔力の残滓の相手について教えてくれる。


 あちしはまず遺跡の中心から探し始めた。苔むした石柱の一本一本の影を丁寧に確認し、地面の割れ目に鼻を近づけ、古い石の隙間に前足を突っ込んでみる。


 赤い魔力のまがまがしい光の残滓は確かに残っているのに、本体の気配はすぐに薄れて消えてしまう。


『……今、ここにいたはずニャ。なのに、もういない。』

 次に、遺跡の周囲を大きく円を描くように歩き始めた。低い茂みを分け、倒木の下を覗き、高い木の幹をよじ登って上から見下ろす。


 風の流れを読み、土の匂いを嗅ぎ、魔力の痕跡を何度も追う。一時間近く経っても、何も見つからない。


『……おかしいニャ。気配はあるのに、姿がない。まるで煙みたいに消える。』

 さらに森の奥へ足を伸ばした。川のほとりまで行き、水音に足音が紛れていないかと耳を澄ます。


 古い獣道を辿り、岩陰を一つ残らず確認する。小さな洞窟のような隙間にも潜り込んでみたが、そこにはただ冷たい空気があるだけだった。


 二時間。

 三時間。


 足が重くなり、息が少し荒くなる。猫の姿だから、力を使い切れずに、見つけることが出来ないのか。


 そう思い、猫又の姿になってみるも、既に九本の尻尾が、疲れたようにゆっくりと揺れる。


『……なんで見つからないニャ。こんなに強い気配なのに、簡単に姿を消す。だから今まで、誰にも捕まったりせずに生き延びてきたのかも知れない……。一度閉じ込められても、逃げ出せたっていう理由がわかった気がするニャ。』


 結局、どこにもいなかった。あちしは遺跡の中心に戻って、石の上に座り込んだ。耳がくたりと垂れ、小さく息を吐く。


『きっとここで何かをするつもりなのに……もう、今日は諦めようニャ。いくら探しても見つからない。また明日の夜、来ればいいかも……。』


 そう思って、立ち上がろうとした瞬間だった。空気が、ふわりと変わった。

「──ようやく会えたわね。銀色の、九本の尻尾を持つ子。」


 後ろから、低く滑らかな声がした。あちしはぎょっと体を強張らせ、一気に振り返った。


 黒い毛並みが月光を吸い込み、赤い瞳が静かに光っている。優雅に、まるで最初からそこにいたかのように、一匹の猫又が立っていた。


「……!いつの間に……!ずっと探していたのに……!」


「探していたでしょう?でも、簡単には見つからないわよ。私はそういう生き方をしてきたから。」


 黒い猫又はゆっくりと微笑み、一歩近づいてくる。敵意というより、興味を持った猫が相手を観察するような目つきだった。


「あなた、グランディック家の心臓のことが気になって、夜な夜な調べているのでしょう?感心だわ。無駄なことをして。」


 あちしは本能的に九本の尻尾を広げ、警戒の姿勢をとった。

「……お前が、黒い毛の猫又かニャ。」


「ルナよ。あなたは……なんていうのかしら?ミシェル、でしたっけ?ずっと気になっていたの。この土地に、こんなに強い九尾がいるなんて。」


 ルナはグランディック伯爵家を観察しているのだ、ということに気付く。


「教えてあげる。あなたの恋人の父親と妹の心臓は、すでに私がいただいた。」

「──恋人?誰のことニャ!?」


「あら、恋人じゃないの?あなたが一緒に暮らしている、グランディック伯爵家の、次代の党首よ。」

「ハルトはあちしのご主人さまニャ!」


「あらそう、まあ、どっちでもいいわ。」

 ルナは嫣然と目を細めた。


「聖女の血を引く家系の心臓は、本当に上質だったわ。あと三人……あなたの恋人と、その子どもたちさえ手に入れば、私は完全体になれる。」


 あちしの体が、びくりと震えた。

「……ハルトたちを、殺すつもりニャ?」


「そのつもりはないけど、人間は心臓を抜かれたら死んでしまうから、結果的にはそうかしらね。でも、いい話があるの。」


 ルナがミミに一気に距離を詰める。

 赤い瞳が、あちしの九本の尻尾をじっと見つめた。





────────────────────


X(旧Twitter)始めてみました。

よろしければアカウントフォローお願いします。

@YinYang2145675


少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。

ランキングには反映しませんが、作者のモチベーションが上がります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。