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私の猫はバレてません!〜猫又であることを隠して、ご主人さまと子育てしますニャ!〜  作者: 陰陽@4作品商業化(コミカライズ・書籍・有料連載)


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第26話 これは猫又の呪いニャ

「な、なんだ!?なにが起きた?」

 ボールはあちしの手にあるから、それが当たったとは思っていないみたいニャ。

「さあ、子どもと遊ぶより、魅力的な女性にはこういう花やアクセサリーが似合う。これを受け取ってくれないか?」


 あちしはボールを両手で抱えたまま、無表情でヴィルヘルムを見た。

「いりません。今、子どもたちと遊んでいますし。」

「子どもと遊んでる場合じゃないだろ!君は俺の真剣な気持ちをわかって……。」


 ヴィルヘルムが一歩踏み込んで、あちしの手首を掴んでグイッと引っ張った瞬間、あちしが手にしていたボールがぽろっと地面に落ちた。


 あちしの手から離れたボールは──ぽんっ。ボールは地面に落ちたはずなのに、なぜかその場でふわりと跳ね上がった。

 そして次の瞬間──ビュンッ!ボールが勝手にヴィルヘルムの額を直撃した。


「ぐあっ!?」

 ヴィルヘルムがよろめく。ボールは彼の頭から跳ね返り、空中でくるくると回転しながら、また彼の鼻先に向かって飛んできた。

 ぱこっ!


「なっ……!?何だこれは!?」

 ヴィルヘルムが手を振って払おうとするが、ボールはまるで生き物のように彼の手をすり抜け、今度は彼の尻に正確に当たった。

 ぱしっ!


「うおっ!?」

 ボールは地面に落ちるどころか、跳ねてはまた飛び、跳ねてはまた飛び……ヴィルヘルムの周囲をぐるぐると回り始めた。


 左の頬に当たる。

 右の肩に当たる。

 後ろからふくらはぎにぶつかる。

 前からまた額を狙う。


「やめろ!やめろぉぉぉ!!」

 ヴィルヘルムが両手で顔を覆って逃げ回る。だがボールは彼から離れない。まるで怒った蜂の群れのように、彼の体のあちこちを狙って次々とぶつかってくる。


「なんでだ!?なんでボールが追いかけてくるんだ!?」

 ヴィルヘルムが全速力で庭を駆け巡る。ベンチの周りを一周し、木の陰に隠れようとすると、ボールが木の上から落ちて頭に直撃。花壇に飛び込めば、ボールが花の間を縫って彼の背中をパンパン叩く。


「ひゃあああっ!やめてくれ!誰か止めてくれぇぇぇ!!」

 あちしはボールが飛び回る様子を、静かに眺めていた。ランディスとリリアナは目を丸くしながらも、くすくす笑っている。


「ミシェルお姉ちゃん、ボールがすごい……。」

「……ボールが、ずいぶんと元気ですね。」

 リリアナとランディスは、これをあちしがやっているとわかっていて、笑いながらそう言った。ヴィルヘルムはもうパニック状態だった。


 ボールが自分の顔を狙って一直線に飛んでくるたびに、彼は悲鳴を上げて逃げる。走りながら花束やアクセサリーを落とし、指輪も芝生に転がしてしまった。


「呪いだ!これは呪いだ!ボールが生きてるぅぅぅ!!この屋敷は呪われているんだあ!」


 その様子を、あちしは静かに眺めていた。一方、ランディスとリリアナはもう大はしゃぎだった。

「あははっ!ボールがすごい!ボールが生きてるみたい!」

 ランディスが腹を抱えて笑い転げながら叫ぶ。


「ミシェルお姉ちゃん、ボールがヴィルヘルムおじさんを追いかけてる!おもしろい!もっと飛んで!ヴィルヘルムおじさんを追い出して!」

 リリアナも小さな手をパチパチと叩きながら、目をキラキラさせて喜んでいる。


「ふふっ、ボールさん、がんばって!おじさん、逃げても無駄だよ〜!」

 二人はボールが跳ねるたびに「よしよし!」「当たった当たった!」と歓声を上げ、まるでボールを応援しているかのようだった。


 ヴィルヘルムは門の方へ全力で走り出した。だがボールは彼の後をぴったりついてくる。門をくぐる直前、最後に大きく跳ね上がったボールが、ヴィルヘルムの尻に思い切り、屋敷から押し出すようにぶつかった。どすんっ!


 ヴィルヘルムは前のめりに転がり、門の外まで投げ出された。ボールはそのままぴたりと止まり、静かに芝生に転がった。ヴィルヘルムは泥だらけの服で立ち上がり、震える指でボールを指差した。


「あ、あのボール……!あのボールが……!俺を……!」

 だがボールはもう動かない。ただ普通のボールとして、そこに転がっているだけだった。ヴィルヘルムは何か言いたげに口を開いたが、結局何も言えず、悲鳴に近い声を上げながら馬車に飛び乗って、逃げるように去っていった。


「うわあああああっ!もう二度と来ない!来るもんかぁっ!!」

 馬車が遠ざかる音を聞きながら、あちしは転がっていたボールをゆっくり拾い上げ、ニヤリと笑った。

「……ボールが、ちょっと元気すぎたみたいニャ。」


 リリアナがくすくす笑いながら、あちしの袖を引っ張った。

「お姉ちゃんがやってたんでしょ?わかってるよ~!でも秘密だよ、ね!」


 ランディスもニヤリと笑って頷く。

「うん、秘密!でもめちゃくちゃ面白かった!」

 ランディスが「あははっ!」と笑い、リリアナが「ボール、すごいね!」と手を叩く。あちしはただ、無表情のままボールを軽く弾ませた。

 ……これでしばらくは来ないだろうニャ。そう思って、また子どもたちと普通にボール遊びを再開したのだった。




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