第22話 ご主人さまが受け入れてくれたのニャ
なんで?あちしは今、猫又の姿なのに。完全な状態ではないけど、猫の耳もしっぽも、見えている筈ニャ。それに何より、撫でてくれている手に、あちしの耳が触れているニャ。
ご主人さま……ご主人さまは、あちしが怖くないニャ?
猫又なんて魔物ニャ。猫から魔物になってしまったのニャ。
魔法だって使えるニャ。
ご主人さまを爪でひと裂きに出来る化け物ニャ。
ただの猫だったら、どれだけいいかと思ったニャ。
飼ってもらえなくても、ご主人さまより先に死ぬとしても、堂々とご主人さまの前に、本来の姿でいることが出来るから。
「君が内緒にしたいなら、今はまだ、君の正体には触れないでおくよ。子どもたちが君の正体を知っても、逃げ出さないと、君が安心出来た時に、本当のことを言っておくれ、ミミ。僕からは、それまでは黙っておくから。」
ご主人さまは優しくそう言ってくれた。
それから、ご主人さまは毛布をはいで、ランディスの体をまさぐると、何やら服の下から取り出した。
月明かりの下で光るそれは、紐の先にペンダントのようにつけられた、鍵のようだった。
「……やっぱりランディスが持っていたか、マスターキー。まったく。女性の部屋を勝手にあけて侵入するだなんて、いくら子どもだからって……紳士として許されることじゃないぞ?後できっちり叱っておかないとな。」
そうため息とともに呟いた。
「大体、僕だってまだ一緒に寝ていないのに……先を越されるなんて……。」
とか、ぶつぶつ言っている。
──?
あちしとご主人さまは、何度も一緒に寝てるのニャ。
ご主人さまが小さい時の話だから、大人になったご主人さまと、一緒に寝たことはないけれど。
誰かと一緒に眠るのなんて、あちしのしっぽの数が増えてからは一度もなかったことだった。それまでは、寒い夜はみんなで体を寄せ合って、暖を取って、冬を越したりしたものだけど。
誰かのぬくもりに包まれて眠るのは、とっても幸せな時間だったニャ。
それが大好きなご主人さまのぬくもりだったから、あちしはご主人さまと寝る時間が大好きになった。
普段は夜に活動してるから、ご主人さまが寝ている時間に、眠ることはなかったけど、ご主人さまと一緒に寝たかったから、飼ってもらってる時期は、夜になるとご主人さまと一緒に寝ていて、昼間は起きていたことを思い出す。
猫の時は、昼も夜も寝ていたけど、猫又になってから、夜は全然眠くなくなっちゃったのニャ。というか、あんまり寝なくてよくなったのニャ。「
でも、なぜか人間の姿になると、夜眠くなってしまう。
とっても不思議ニャ。
猫又の姿でいるよりも、疲れるからかも知れないニャ。
ご主人さまは、猫又の姿のあちしを受け入れてくれた。
考えても見なかったことだけれど、とっても嬉しかった。
ランディスとリリアナも、いつか受け入れてくれたらいいけど……。
それよりも、ご主人さま、あちしと一緒に寝てくれるのニャ!?
そんなの、最初に拾われた時以来なのニャ!
抱っこしてナデナデしてもらうのニャ。
さっそく明日にでも頼んでみるのニャ!
ご主人さまは、ランディスととリリアナをベッドから、起こさないように気を付けながら、そっと抱き上げて部屋から連れ出した。
あちしの猫又の姿に気付かぬよう、寝ているうちに二人の部屋に戻してくれるつもりなんだろう。ご主人さまがあちしの部屋から出て、鍵をかける音がする。
あちしは一度思いっきり猫又の姿に戻ると、人間の姿で寝るのに慣れる為に、人間の姿に変化して、それからまた眠りについたのだった。
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家族しかいない朝食の席。明るい朝の光が差し込むダイニングルームに、四人の食事が並んでいた。
ランディスとリリアナはいつものようにミシェルの隣を奪い合い、今日はリリアナが座ることになった。
ハルトはミシェルの向かい側で食事を口に運んでいた。
「ランディス、リリアナ。」
ハルトが低い声で二人を呼んだ。子供たちは食事をする手を止めて、ぎこちなく顔を上げる。
「昨夜、ミシェルの部屋に勝手に入ったね?それも、マスターキーを盗んでまで。」
ハルトの声は優しいが、しっかりと叱責の色が含まれていた。
ランディスが少し拗ねたように唇を尖らせ、リリアナが小さく俯いた。
「……だって、確認したかったんだもん。」
リリアナが小さな声で呟く。
「確認?何をだい?」
ハルトが眉を寄せた瞬間、ランディスが思い切ったように口を開いた。
「ミシェルお姉ちゃんが……猫耳、出してた。尻尾も……触った気がする、昨日、ベッドで一緒に寝てた時に、」
その言葉を聞いた瞬間、ハルトの動きが完全に凍りついた。ハルトは目を大きく見開き、息を呑んだまま固まっている。
普段は落ち着いた彼の顔から、一瞬で血の気が引いていくのがはっきりとわかった。
「……は?」
掠れた声が漏れる。ハルトは手にしたナイフとフォークを動かすのも忘れたまま、子供たちを交互に見つめていた。
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