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私の猫はバレてません!〜猫又であることを隠して、ご主人さまと子育てしますニャ!〜  作者: 陰陽@4作品商業化(コミカライズ・書籍・有料連載)


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第21話 猫又の姿を見られたニャ!

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 最近あまりしなくなったとはいえ、リリアナが時々夜泣きをすることを知っていたハルトは、毎晩寝る前にリリアナの部屋をのぞいてから、寝るようにしている。だから今日も念のため様子を見に来たのだ。


 にも拘わらず、リリアナの部屋には誰もいなかった。ベッドに触れると冷たく、まるでベッドに一度も入っていないということがわかる。


 すわ、さらわれたか、という考えが一瞬頭をよぎるも、ランディスの部屋に行き、ベッドにもぐりこんでいた前例もある。


 まずはランディスの部屋を確認しようと思い、次はランディスの部屋へと向かった。だが、そこもリリアナの部屋と同様、ベッドが冷たいままだった。


 これはさすがにおかしいと思い、夜の番を担当していた従者と共に、屋敷中を探し回っていたのだ。従者の部屋に行くとは思い難い。従者の部屋は建物が異なり、こんな暗く、明かりもない中で、子どもだけで隣の建物に行くとは考えにくい。


 となると、マスターキーがないこともかんがみて、ミシェル──ミミの部屋に行った可能性が高いだろうと、ハルトは考えた。

 ミミの部屋の前で足を止め、軽くノックする。


「……ミシェル? 少しだけいいかい?子どもたちが、そっちに来ていないだろうか。」

 返事はない。代わりに、子どもの寝息と、リリアナの寝言が聞こえてきた。ハルトは小さく眉を寄せた。


「やれやれ、やっぱりか……。」

 従者が管理しているものとは別に、当主の管理しているマスターキーがある。ハルトはため息をつくと、それを取り出し、静かにドアを開けた。それでも古い扉のドアノブは、静かな空間において、ガチャリと大きな音を立てる。


 月明かりに照らされた光景が、目に飛び込んできた。ベッドの中で、三人が重なり合うように眠っている。


 ランディスとリリアナが、ミミにぎゅっと寄り添うようにしている。そして──ミミの頭の上に、確かに猫耳があった。

 銀色の毛並みが月明かりを受けて、ふんわりと輝いている。


 毛布の下からは、太くて長い尻尾が一本、ゆっくりと動いているのがはっきりと見えた。いや……一本だけではない。毛布の形からして、複数本あるように見える。ハルトは息を飲んだ。


「……っ。」

 一瞬、動けなかった。

 ハルトは足音を立てないようにベッドに近づき、ミミの頭を撫でた。そうとは知らず、いつもの猫の姿の時のように。寝ている筈なのに、ぴくぴくと動く耳は、それがハルトであることを確認したがっているかのようだった。


 ハルトは子どもたちをベッドから出そうと、毛布をそっと持ち上げようとした。そのとき——ミミの体が小さく震えた。野生の猫又の意識が、ぼんやりと戻り始めていた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ……ん……?なんか、あったかい……ニャ。

 あちしは目を閉じたまま、隣に誰かいることを感じ取った。

 子どもたちの体温。甘い匂い。


 ランディスとリリアナ……?なんであちしのベッドで寝ているニャ?

 嬉しさと、少しの困った気持ちが同時に湧いてくる。でも、次の瞬間——自分の頭の上に、違和感を覚えた。


 耳が、敏感に動いている。さらに、腰の後ろに、複数の重みを感じる。

 尻尾だ。九本全部、出ている。


 にゃ……っ!?にゃにゃにゃにゃ、まずいにゃあああ!

 あちしの心臓が、激しく鳴り始めた。

 全身に冷たい汗が一気に噴き出した。


 猫又の姿に……なりかけてる……!子どもたちに……見られたら……!

 頭の中が真っ白になる。

 追い出される。怖がられる。嫌われる……。


 恐怖が、みるみるうちに膨れ上がった。うまく息ができない。喉が締め付けられるかのようだった。


 気付かれたら、あちし……ここにいられなくなる……みんなと、離れ離れになる……もう、みんなの笑顔を見られなくなる……。


 あちしは必死に体を起こそうとした。人間に変化しなおすには、子どもたちに気付かれない場所で、一度猫又の姿に戻らなくてはならない。


 耳やしっぽだけ出た状態からでも、変化できなくもないけれど、一度完全に猫又の姿になってしまったほうが、部分的に変化させるよりも、早くて確実だ。


 でも子どもたちがぎゅっとしがみついている。動かせない。そのとき——ベッドの端の椅子に、ご主人さまが腰を下ろした。あちしの顔を、じっとのぞき込んでいる。ご主人さまに……見られた……!


 薄目で恐る恐るご主人さまを見ると、ご主人さまは静かに、でも優しい目であちしを見ていた。

 

 ご主人さまはゆっくりと手を伸ばし、あちしの頭をそっと撫でてくれた。猫の姿の時に、してくれるように。




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