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私の猫はバレてません!〜猫又であることを隠して、ご主人さまと子育てしますニャ!〜  作者: 陰陽@4作品商業化(コミカライズ・書籍・有料連載)


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第20話 猫又バレのピンチニャ!

 その夜、屋敷の廊下は静まり返っていた。あちしは自分の部屋に戻り、ベッドに横になった。

 今日も一日、子どもたちとたくさん遊んだ。ランディスが失敗したものの、今までで一番高く登れた木登りを自慢げにし、リリアナがクッキーのことを何度も話してくれた。


 ご主人さま——ハルトも、夕食のときに少しだけ優しい笑顔を見せてくれた。そして、あちしがいてくれて助かっていると言ってくれた。

「……みんな、優しいニャ。ずっとここにいたいのニャ。」

 あちしは小さく呟いて、ベッドで丸くなり、目を閉じた。そして思わずハッとする。


 人間の姿のまま寝るのは、まだ慣れない。力の抜き方がよくわからなくて、つい猫のときのように丸くなって眠ってしまう。でも、ここにいる限りは、慣れて行かないといけない。


 勝手に部屋に入られることはないとはいえ、いつ誰に見られるかわからないし。今夜は、ちゃんと人間のまま寝ようと思った。万が一、ご主人さまや子どもたちに変なところを見られたら困るから。ベッドに潜り込み、毛布をしっかり被る。


 徐々に意識が遠のいていく。……どれくらい経っただろう。あちしがうとうとと眠りに落ちた頃、部屋のドアがそっと開いた。

「……ミシェルお姉ちゃん、寝てる?」

 小さな声。リリアナの声だった。


 あちしはそれを夢の中で聞いていた。鍵を開けられるわけがないから、これは夢ニャ……夢でリリアナが呼んでる……でも眠いのニャ。明日にして欲しいのニャ……。


 その後ろに、ランディスの半分寝ぼけた声もする。

「リリアナ……ミシェルお姉ちゃんは、きっと寝てるよ。マスターキーを借りて、起こさないように部屋に入ろうって言っただろう?」


 リリアナがあちしの顔を覗き込んだのか、吐息が頬に当たる。

「……ぐっすり寝てるみたい。これなら一緒に寝ても、起きるまで気付かないね!」

 妙にリアルな夢ニャ……むにゃむにゃ。


 月明かりが薄く差し込む窓辺を頼りに、ベッドのそばまで近づく。靴を脱ぎ、ランディスが先に、ベッドに這い上がった。リリアナも後からよじ登ってくる。ベッドの両サイドから、挟まれたかっこうだ。


 ランディスがあちしの隣に体を寄せ、リリアナが反対側からぎゅっと抱きつくようにくっついてきた。

「……あったかい。ミルクのにおいがする。」

「ミシェルお姉ちゃん、何度言っても一緒に寝てくれないんだもん。これでようやく一緒に寝られる……。」


 子どもたちは満足そうに目を閉じた。あちしの体温と、優しいミルクの臭いに包まれて、二人はすぐに眠りに落ちていった。そして——あちしは完全に気を抜いていた。人間の姿を維持するための緊張が、眠りの中でほどけていく。


 銀色の長い髪の間から、ふわりと柔らかい猫耳が姿を現した。

 毛布の下では、九本のふわふわした尻尾が、ゆっくりと伸びて、毛布を押し上げながら動いている。さらに、眠りが深くなるにつれて、あちしの体は少しずつ本来の姿に近づいていった。


 それが半分夢うつつの中でわかっていたけど、眠たすぎて体を動かすことも、変化をもとに戻すことも出来ない。


 まあいいニャ。明日からまた頑張るニャ。ランディスとリリアナが、鍵のかかったあちしの部屋に、くるわけなんてないんだから、このまま寝るニャ……。


 人間の肌の部分が薄っすらと銀色の毛に覆われ始め、指先がわずかに丸みを帯びていく。完全に猫又に戻る一歩手前——そんな中途半端な状態で、あちしは穏やかに眠り続けていた。


 部屋の中は、静かな寝息と、時折リリアナが、ミシェルお姉ちゃん、ふわふわ……と寝ぼけたような声を出している音が響いている。


 やがて、廊下から足音が近づいてきた。

「ランディス?リリアナ?……まったく、いったいどこに行ったんだ……。」

「ご主人さま、大変申し訳ございません。鍵を管理しているところから、マスターキーが紛失していることが発覚しました。」


 マスターキー?なんの話ニャ?というかうるさいニャ……静かにしてニャ……。


「マスターキーが?外部から侵入された形跡は?」

「いえ、それはまったく。」

「ということは、屋敷内の人間が持ち出したということか。……まさか、あの二人、ミシェルの部屋に行ったんじゃないだろうな?」


「ご令嬢の部屋です、メイドを起こして、見に行かせましょうか?」

「いや、いい。それには及ばない。僕が直接見に行こう。彼女も寝ているだろうし、忍び込んでいる子どもたちを、連れて出るだけだしね。」


 たぶん彼女のところにいるだろうから、君ももう休んでくれ、と話す、ご主人さまの声が聞こえる。

 ご主人さまがあちしの部屋に来る?でも鍵がかかっているから、入れないのニャ。だからだいじょうぶニャ。というかもう、眠すぎて何も……考えられな……。

 あちしが完全に寝落ちしそうになった瞬間、ガチャリとドアノブの回る音がした。



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