第2話 ご主人さまを助けるニャ!
あちしは納屋の屋根の上で、しっぽをフリフリ揺らしながら考える。
どうすればご主人さまの暗殺を阻止できるかについて、ニャ。
この姿では無理があるニャ。
やっぱり人間として潜入するしかないと思う。
……でも、どうすれば疑われずにご主人さまのそばにいれるのか。
!──そうニャ!
昔、人間の姿でご主人さまのところに遊びに行った時ニャ。
あちしが誰か聞かれて、あちしは思わずご主人さまの妹を名乗った。
「お父さまが、外で作った子どもってこと?」
ご主人さまはそうあちしに尋ねた。そうだと答えると納得してくれたのニャ。
その時のことを覚えていれば、ご主人さまの妹を名乗れば、家に潜り込めるのニャ!
何より人間の姿なら、ご主人さまの子育ても手伝える。
ご主人さまは今、一人でランディスという男の子と、リリアナという女の子を育てている。
あいつらが殺そうと言っていた子どもたちは、きっとその子たちのことニャ。
あちしはさっそく人間の姿に化けた。
銀髪にご主人さまと同じ、青い目の人間の女の子の姿。
あれからご主人さまも大人になっているから、それに合わせて年齢も大きくしたニャ。
水たまりに自分を映して、耳としっぽが出ていないことを確認すると、ご主人さまを探して敷地内を走り回った。
庭でランディスが一人でボール遊びをしていた。リリアナの姿は見えない。きっと家の中にいるんだろう。
ご主人さまは……あそこだ。窓辺に立っているご主人さまの姿が見えた。目元が腫れてて、肩が落ちてる。
奥さんと妹に続いて、父親まで亡くしたのだから無理もない。
リリアナを片手で抱っこしながら、もう片方の手で書類みたいなものを見ながら、時々大きなため息をついている。
木の影から様子を伺いつつ、どうやって近付こうかと思っていると、ランディスが掴み損ねたボールが足元に転がって来た。ランディスがボールを追いかけて、こちらに走って来る。
「はい、どうぞ。」
それを拾って笑顔で手渡すと、「誰?」と不思議そうな表情を浮かべている。
ここはご主人さまの家の敷地内だから、ご主人さまに関係のない人がいることはない。
「あち……私はお父さんの妹だよ。」
「──妹?」
興味津々そうに、そして嬉しそうに頬を紅潮させるランディス。
「どうした?ランディス。」
ご主人さまが、木の影を見上げたまま戻って来ないランディスに、いぶかしげな様子で声をかける。
「お父さま!お父さまの妹が遊びに来てくれました!」
「わっ!ちょっ!」
そう言って、思いの他強い力であちしのことを引っ張って歩き出す。
本来子どもに力負けなんてしないけど、人間の姿が久しぶり過ぎて、力の入れ方がよくわからなくて、よろけつつ、引っ張られるがままにご主人さまの前に姿を現してしまった。
こんな風に突然出会う予定じゃなかったのに。えーい、出たとこ勝負ニャ!
「君は……。」
ご主人さまがあちしを見て目を丸くする。
「久しぶり!ハルト!」
あちしはニッコリと微笑んだ。あちしを見たご主人さまの目に涙が浮かぶ。
「あちらにいらっしゃるのはどなたかな?」
そこにさっきの納屋で聞こえた声がする。臭いも同じだから間違いない。確かヴィルなんとかという名前の筈ニャ。隣に連れてる髪の短い黒髪の派手な女を連れてる。
「ヴィルヘルムさん……。また突然いらしたのですか?先ぶれを下さいとあれ程お伝えしたかと思いますが。」
ご主人さまが男の名を呼んだ。
「妻の実家に義父が亡くなったお悔やみを言いに来たのに、ずいぶんじゃないか。いくら従者がいるとは言え、妻も亡くして子育ても大変だろう?だから手伝いに来てやったってのにな。」
「それはありがとうございます……。」
ご主人さまはなんだかとっても嫌そう。たぶんあいつのことが嫌いなのニャ。
「それで?ランディスがずいぶん懐いているようだが、いったい誰なんだ?」
ヴィルヘルムが怖いのか、ランディスがあちしの後ろに隠れて、服の裾をギュッと握っている。
「あち……私はミ──「ミシェルです。父が残した婚外子です。」」
あちしが名乗る前に、ご主人さまがあちしの言葉を遮って、ヴィルヘルムにあちしを紹介した。
「──婚外子?妹?聞いてないぞ?」
ヴィルヘルムは目を丸くしている。
「自分も幼い頃に何度か会ったきりですから、ご存じないのも無理はないかと。」
確かにご主人さまが子どもの頃、ご主人さまの妹だと名乗ったことがある。
ご主人さまはそれを❝婚外子❞と言ったのニャ。
意味はよくわからないけど、納得してくれたのならそれでいいニャ。
「それで、どうしてその婚外子の妹がここにいる?まさか……ここに暮らすつもりじゃあるまい?」
それを聞いてあちしはパッと表情を明るくした。
「ごしゅ……ハルトが子育て大変って聞いて手助けしに来たのニ……です!」
「本当かい?君が一緒に暮らしてくれるの?」
「もちろんです二……よ!」
どうしてもニャって言いそうになるニャ。慣れないニャ。
「彼女がいますから、お手伝いは結構です。どうかお帰り下さい。」
「なんですって!?」
ご主人さまにそう言われた髪の短い女は、キーッと目を吊り上げた。
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