第1話 ご主人さまが狙われてるニャ!?
あちしはミミ。何千年と生きている猫又ニャ。
本来猫又っていうのは、しっぽが二股に分かれるそうにゃけと、あちしは何千年と生きているせいで、しっぽがここのつに分かれている。
普段は目立つからかくして、普通の猫のふりをして生きているけど。
なんと魔法も使えるし、人間の姿になることも出来るニャ!
あちしは凄いのニャ。
ここはあちしのご主人さまである、ハルトの住む家の納屋の近く。
ご主人さまは子どもの頃に、傷付いたあちしを救ってくれた恩人なのニャ。
あちしはその昔、ケガをして、たまたまご主人さまの家が管理する森の中で倒れていた。
そんなあちしをご主人さまが見つけて、こっそり自分の部屋に連れ帰って、ケガを手当して看病してくれたのニャ。
猫又は長生きニャ。ずっと生きて来たから、友だちがいない……というより、出来るけどみんな死んでしまうのニャ。
もちろん、いない理由はそれだけじゃないけど……。
だからあちしは友だちを作らないようにしていた。
そもそもしっぽがここのつもあるから、今は猫からも猫又からも怖がられている。
ふん、勝手に嫌っていればいいのニャ。
人間になれること、魔法が使えることがバレると、冒険者だとかが、あちしを好き勝手利用しようとして近付いてくる。
だからあちしは人間が嫌いニャ。
でも……時々ちょっぴり、一人はさみしい。
そんな時、ご主人さまに出会ったのニャ。
ハルトはご主人さまだから、友だちとは違う。
友だちじゃないから、ご主人さまと仲良くするのはオッケーなのニャ。
ご主人さまは、ケガでしっぽを隠せなくて、ここのつもしっぽがあるのを見られても、態度をまったく変えなかった。
普通の猫として愛してくれたのニャ。
だからあちしも時々人間の姿になって遊びに行ったりした。
ご主人さまと遊んだり、こっそり手助けしたりしていた。
とっても楽しかったのニャ。
あとで水たまりを見たら、ちょっと興奮し過ぎて耳としっぽが出てたけど、ご主人さまは何にも言ってなかったから、あちしが猫又だとはバレてないのニャ。うん。
でもご主人さまが段々大きくなって、大人になった時に、ご主人さまの親に怪しまれたことがあった。
ご主人さまの妹とお嫁さんが、同時に事故で亡くなった時の話ニャ。
ご主人さまは泣いていたニャ。あちしは放って置けなかった。
だから久しぶりに人間の姿で会いに行った。
ここの領地の者ではないな、誰だ、とご主人さまの親に言われてしまったニャ。とっても怖い顔だった。だから慌てて逃げたニャ。
だからもう会えないニャって言ったんニャけど、ご主人さまが寂しそうに、「また来てくれるよね?」って言ったから、離れられなくなってしまった。
妹さんも猫のあちしを可愛がってくれた。
あちしは一人でこっそり泣いた。
ご主人さまの気持ちがとってもよくわかったのニャ。
もう人間の姿で会いに行くのはやめたけど、猫の姿で影から見守ることにしたわけなのニャ。
えーと、ハルトは今は伯爵令息というやつらしい。
よくわかんないけど、たぶん凄いのニャ。
なんで凄いかって言うと、たくさんの人間に頭を下げられているのニャ。
あちしはハルトに飼われてるわけじゃないけど、エサが取れなかった時に遊びに来ると、必ずエサがもらえる。
だから冬なんかはよく遊びに来る。おかげで飢えずに済んでいるニャ。
いくらあちしが強いとはいえ、冬眠されて食べ物自体が目につくところにいないと、狩りもままならない……。
そこは何千年生きている猫又と言えども、他の生き物と同じニャ。
人間の姿になったり、猫の姿で人間から食べ物を盗めばいいだろうって?
ふん、ばかめ、なのニャ。
そんなことをすれば、追われて住むところがなくなるニャ。
追いかけまわされるより、優しい人間からエサをもらったほうが安心、安全なのニャ。これは生活の知恵ニャ。
危険にさらされる生活をしていると、その分、ストレス(?)とかいうやつで、命が縮まってしまう。
人間に媚びることを嫌って、早死にした奴らをたくさん見て来たニャ。
あちしは生きるのびことを選んだニャ。
だからこんなに長生きなのニャ。
あちしはエサをもらって、満足して眠たくなって、納屋の近くで眠っていた。
そうしたら、変な声が聞こえて目が覚めてしまった。
なんニャ?うるさいのニャ。
発情期の猫と同じ声がする。
納屋の中から声がする。そう思ってのぞいてみると、人間が2人、交尾をしていた。
こいつらアホニャ。猫だってこんな真昼間っから交尾なんてしない。誰に見られるかわからないから。
人間は猫と違って年がら年中発情期ニャ。だからたまにこういう節操のないのがいる。嘆かわしいニャ。
交尾しながら、あいつらがなんか喋っていたけど、立ち去ろうとしたあちしは、そこにご主人さまである、ハルトの名前が聞こえて立ち止まった。
もっとよく声を聴こうと、納屋の屋根の上に飛び乗る。
「ほんとにそれでグランディック伯爵家を本当に乗っ取れるの?」
「ああ、もちろんさ。義父が亡くなって、こんなに早く家督相続の必要が出て来たのがラッキーだった。義兄であるハルトと、その子どもたちを殺せば、ハルトの妹の入り婿である俺に、伯爵家の家督が転がり込むって寸法さ。」
グランディック伯爵家というのは、ご主人さまの家の名ニャ。
それにしてもこいつら、聞き捨てならないことを言った。
ご主人さまとその子どもたちを殺す?
ご主人さまは御貴族さまというものらしい。
あちしの知識によると、御貴族さまというのは、人間たちのボスニャ。
ボスは群れの中で一番たくさん美味しいご飯がもらえる。
なんなら独り占めしても怒られないニャ。
だからご主人さまを殺して、ボスになり替わろうと言うこと?
ニャ―!
そんなのあちしが絶対許さないのニャ!
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