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私の猫はバレてません!〜猫又であることを隠して、ご主人さまと子育てしますニャ!〜  作者: 陰陽@4作品商業化(コミカライズ・書籍・有料連載)


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第17話 ご主人さまに疑われてるニャ……!

 おやつのクッキーも食べて、お墓参りも終えたので、グランディック伯爵家の屋敷に戻って、庭で遊ぶことにした。

 ランディスが「次のかくれんぼの為に、僕ももっと高くまで、木に登れるようになるんだ!」と言って、庭の大きな古木に登り始めた。


 枝を掴み、どんどん上へ上へと登っていく。

 リリアナが下から「危ないよ、おにいちゃん!」と叫ぶ。

 猫でもあんまり高いところに登ると、自力で降りられなくなるニャ。

 ランディスはどこまで登るつもりニャ?


 あちしは少し離れたところで様子を見ていたけど、突然ランディスの足元がぐらついた。細い枝が折れかけ、体が大きく傾く。

「おにいちゃん!」

「──ランディス!」


 そこにご主人さまの声が響いた。書類を抱えたまま、書斎の窓を飛び越えて、そこから走り出してきたのだ。あちしも同時に飛び出した。ご主人さまが抱えていた書類を放り投げると、下から両腕を広げて受け止める態勢を取る。


 あちしは走りながら、小さく魔法を唱えた。

「ゆっくり落ちるニャ……!」

 ランディスの体が一瞬だけふわりと浮き、落ちる勢いが和らいだ。


 そのままランディスはご主人さまの腕の中に落ちてきた。

「わっ……!」

「危ないだろう!もう少しで……大けがするところだ!」


 ご主人さまが息を荒くしてランディスを強く抱きしめる。あちしも胸を撫で下ろした。ランディスの膝が少し擦りむけていたが、大事には至っていない。ご主人さまがランディスを下ろし、あちしの方を向いた。ご主人さまと目が合う。


「……ミシェル、ひょっとしてさっき、魔法を使ったかい?ランディスが、凄くゆっくり、木の上から落ちて来たよ。」

 あちしはそれを聞いてビクッとする。


 あちしが魔法を使えることは、ご主人さまたちに言っていないから。

「ミシェルお姉ちゃん、魔法が使えるの!?」

「すごーい!」


 ランディスとリリアナは、無邪気に感心している。

「えと……その……黙っていてごめんなさいニャ。実は魔法が……使えます。」

 魔法が使えるのは、人間でも希少な存在らしい。


 魔物だって、あんまりいない。だから人間の姿で魔法が使えるってことを、人間に知られても、あんまりいいことがないニャ。昔は魔物の化身だと、疑われた時代もあったくらいニャ。

「他の人には内緒にしておいて欲しい……です。」


「もちろんだよ。魔法が使えることは、人に知られて、あんまりいいことはないからね。でも、君が一緒にいてくれて、本当に助かった。」

 その言葉が、あちしの胸にじんわりと染みた。


「ランディスもリリアナも、このことは内緒にするんだよ?」

「はい、わかりました。」

「はーい!」


 夜。子供たちがようやく寝静まったあと、あちしはご主人さまに呼ばれて、書斎の近くにある小さな応接室へ向かった。ランプの柔らかい明かりが、部屋を優しく照らしている。


 ご主人さまはソファに深く腰を下ろし、あちしが向かい側の椅子に座るのを待っていた。少しの沈黙のあと、ご主人さまが口を開いた。

「……最近、君がいてくれて、本当に助かっている。」


 ご主人さまは少しだけ疲れた顔で、でも真っ直ぐにあちしを見ていた。

「あの子たちの母親が亡くなってから、正直に言うと……どうしていいかわからなかった。領地の仕事も、子どもたちの世話も、全部一人で抱え込もうとして……夜もろくに眠れなくて。リリアナは一人にすると泣いてしまうし。ランディスもずっと暗かった。」


「妻と妹を亡くしたときもそうだったけど、領地の仕事を一緒にやっていた父が亡くなって、誰も助けてくれる人がいなくなって。今回はもっと……孤独だった。」


 ご主人さまが自分の手をじっと見つめる。

「でも、君が来てくれてから、少しずつ変わった。ランディスが君に懐いて、よく笑うようになった。リリアナも、君の膝の上で眠るようになった。……僕も、君がいるだけで、肩の力が抜ける瞬間が増えた。」


 あちしは少し息を飲んだ。

 ご主人さま……そんなにつらかったのニャ。

 やっぱり、人間になって、お手伝いしてよかったニャ。


 ご主人さまが少し照れたように、言葉を続ける。

「正直、最初は君の存在に戸惑ったけど……君は昔、僕の前に現れた女の子なんだろう?僕に、僕の妹だと名乗った。僕はそれを、婚外子の妹だと思ったから、今も君をそう、ヴィルヘルムに紹介しているけれど。」


「はい……そうです。」

 あちしはそう言って、こっくりとうなずく。あちしが昔助けた猫又だとまでは、気付いていないようニャ。


「本当に、僕の妹なの?その……父の子なのかい?」

 ご主人さまが、確信をついたことを言ってくる。あちしは本当は、妹でもなんでもないニャ。それを正直に言うべきだろうか?


「その……あの……。」

 あちしはもじもじしながら、何も言い出すことが出来ないでいた。

「正直僕は、違うと思っているんだよね。」

 ご主人さまは、優しいけれど厳しい目であちしを見て来る。



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