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私の猫はバレてません!〜猫又であることを隠して、ご主人さまと子育てしますニャ!〜  作者: 陰陽@4作品商業化(コミカライズ・書籍・有料連載)


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第14話 怪しい美女ニャ!

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 その頃、とある貴族の古い屋敷では、別の会話が交わされていた。中年の貴族らしき男が、傍らに赤い瞳に黒髪のロングヘアーを優雅に揺らした美女をはべらせ、ソファーに深く腰掛けていた。


 ヴィルヘルムは向かいのソファに座り、落ち着きなく指を絡めていたが、それでも女のあまりの美しい顔と体に、目線を向けずにはいられない。


 アマンダを選んだのだって、この女に似ていたからだ。この女のあまりに美しい黒髪に、魅了されてしまったから。


 だから、アマンダにも髪の毛を伸ばすように言っているのだが、女のカンで別の女のイメージを押し付けようとしていることがさとられているのか、アマンダはかたくなに髪を伸ばそうとはしなかった。


 それでもこの女を思わせる、黒髪にきつい目つきのスタイルのいい美女だけに、ヴィルヘルムとしてはアマンダを気に入っているのだった。


「で、グランディック伯爵家をどうにかする件は、どうなっている?」

 男の声は低く、苛立っているのがわかった。


「え、ええ……何度か手を打ったんですが……どうも上手くいかなくて。毒を入れたワインも、なぜか猫に邪魔されて……それに、崖からの岩も、どういうわけだか化け物に跳ね返されて……。」


 ヴィルヘルムが汗を拭きながら言い訳する。化け物が岩を跳ね返してきたなど、ヴィルヘルム自身、信じているわけではないが、こうしてこの人物を目の前にすると、そう言い訳する他ないと感じる。


 男の傍らに寄り添っていた美女が小さく鼻で笑った。赤い瞳が細められる。

「言い訳は結構。この方はただ、奴らに死んで欲しいだけなのよ。それはあなたの望みと同じでしょう?グランディック伯爵家がお前のものになるのだから、さっさとどうにかしなさい。」


 美女が冷たく言い放つと、ヴィルヘルムはビクッと肩を震わせた。

「は、はい……わかりました。次は必ず……。」


 ヴィルヘルムが恐る恐る部屋を出て行くと、男は大きく息を吐いた。すると、急に態度を変えて、傍らの美女に深々と頭を下げる。


「申し訳ありませんでした、ルナ様……。」

 美女——ルナは、男が差し出した高級ワインのグラスを優雅に受け取った。赤い瞳で男を眺めながら、ゆっくりとワインを口に運ぶ。


「国王を騙した時のほうが、よっぽど簡単だったわね。あれは美しくて、権力もあって、欲も深かったから……少し甘い言葉を囁いてやれば、すぐに戦争を起こしてくれた。兵士たちの心臓を、戦いの混乱に紛れて奪うのも楽だったわ。」


 ルナがグラスを置いて、ため息をつく。

「でも今は違う。権力も金も持っていない、ただの男を操ろうと思うと、働きが悪くて困るわ。ヴィルヘルムみたいな男は、脅せば動くけど、肝心の実行力が足りないのよね。」


 男は恐縮した様子で頭を下げ続けた。

「申し訳ありません……ですが、ルナ様の計画通り、グランディック家の一族の心臓さえ手に入れば……。」


「ええ、わかっているわ。聖女の血を引く家系……一つの心臓で、二千人分の価値があるのよ。父親と妹の分で、もうだいぶ取り戻せた。あと三人……ハルトと、その子どもたちさえ手に入れば、私は完全体に戻れる。」


 ルナが赤い瞳を細めて、窓の外を眺めた。

「でも……ヴィルヘルムが言っていた、猫と化け物のことも、気になる存在ね。グランディック伯爵家を守る存在なんていたかしら?」


「特に伝承上は存在していないようですが。」

「……この土地にも、猫又はいるわ。都合よくワインを駄目にした猫というのが気になるわ。少し調べてみてちょうだい。」


「かしこまりました。猫又が見方をしている可能性を含め、調べてまいります。」

 男はお辞儀をして、部屋の外へと出て行く。


「この土地の猫又……ねえ。この私に、勝てると思っているのかしら?猫又の頂点に立つ、この私に。それが猫又なら、そいつから殺してやろうかしら……いいえ、むしろ、猫又であるのなら、利用できるかもしれない。」


 ルナがグラスを傾けながら、冷たい笑みを浮かべた。

「グランディック伯爵家の心臓をすべて手に入れて、私は伝説ではなく、本当の九本の尻尾を持つ猫又になる。そうすれば、九尾の狐にだって負けやしないわ。伝説の主は狐から、猫に正しく書き換えられるのよ。」


 ルナは猫又の姿に変毛した。黒く美しい毛を持ち、赤い目をした猫又の姿。しっぽで机の上に置かれたナイフを掴むと、ヒュッと壁に向かって放り投げる。


 するとそれは、壁に飾られた大陸の地図にきれいに刺さった。ルナが今いるこの国を現す場所に、ナイフがささっていた。


「──まずはこの国から手に入れるわ。今度は失敗しない。その為に、グランディック伯爵家の心臓を必ず手に入れなくてはね。」

 ルナは楽し気にしっぽをゆらゆらと揺らしていた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



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