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死亡扱いの最強冒険者、13歳の姪として再登録しました ――“故人”のままバレずに現役復帰します――  作者: HIME-HIRO


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第2話 やり直しの条件(前編)

本日2話更新いたします。

よろしくお願いします。

なお、この話以降一話ごとの文章量が多くなります。

どうかご了承ください。

「……で…?」


 腕を組んだまま、ケイトはシャロンを睨める。


「詳しく聞かせろ。どういう仕組みなんだ? これ……」


 鏡の前で一頻り騒いだ後――


 ようやく落ち着いたケイトの声は、さっきよりもだいぶ低い。


 無断でおちょくられたことを怒っていないわけではない。


 だが――もう後戻りする気もない。


「仕組みって言われてもねぇ……」


 シャロンはテーブルの上で足をぶらぶらさせる。


「若返り+調整+隠し味をひとつまみ……って感じ?」


「雑すぎる説明だな……それに隠し味? 

 ――怖ろしく不安を煽る言葉だな」


 ため息をつく。


「――どうせ、“ひ・み・つ……”とか言って白状する気はないんだろ?」


 そう…半目で問うと、挙げかけていた右手の人差し指をそっと降ろすシャロン――


 ふうっ…とため息をつきながらケイト……


「年齢はどこまで戻ってるんだ?」


「だいたい十二、三くらいかな…?」


「だいたい三十年くらいか……やりすぎだろ………

 ――まあ。ギリで冒険者登録は可能か………」


 即答したシャロンから目を離し頭をかきむしりながら言う。。


「……ったく、お前は加減って言葉を知らないのかよ」


「だって、あまりにもしょぼくれちゃっててさあ……

 見てらんないから……元気出るようにって思ったら……つい」


「つい…で、人の人生いじるなよ」


「でも元気出てるじゃんか……」


 にやにやしている。


 否定は――できない。


「……まあ、それはそうだが」


 そこで、ふとケイトは目を細めた。


「……それだけか?」


「ん?」


「どうせ……あれだろ?」


 じっとシャロンの胸を見る。


「胸のサイズ、自分と同じくらいにしたかっただけじゃないのか?」


 一瞬――


 ほんの一瞬だけ……

 シャロンの視線が、すっと逸れた。


「……なに言ってんのさ――」


 明後日の方向を見ながら、そっけなく返す。


「……図星か」


「違うし……」


――即答。


 だが顔は、微妙にそっぽを向いたままだ。


「……まあ、いいけど…………」


 ケイトは諦めたように小さくため息をついた。


「それで……さっきのあれだ――」


 右手の人さし指を目の前に出して、天井を向ける。


 軽く意識を流すと、ぱん、と火花が弾ける。


「……完全に、外に出せるようになってるな」


「通り道、整えたからね」


 あっさりと言う。


「もともと全部の属性試してたでしょ? 多分、ちゃんと使えるようになってるはずだよ」


「……」


 じっと自分の手を見る。


「……あれだけ手を尽くして、うんともすんとも反応しなかったのにか――」


「……まあ、体質だったからねぇ……

 それに、焦ってたろ? あれじゃあ出口を探さずに壁ばかりぶん殴ってたようなもんだからね」


 軽く言う――


「なるほどな……」


 小さく息を吐く。


 理屈は何となく分かった。

 納得も、している――してしまっている。


(だったら、あのとき言えよ……)


 胸の内で毒づきかけて、すぐに諦めた。


 目の前の女が、そんな親切に手取り足取り教えてくれるような性格でないことくらい、昔から嫌というほど知っている。


 だからこそ、こうして今さら“ついで”のように面白半分に改造されているわけで――


 納得はしている。しているのだが――


 やはり、何となく釈然としない。

 ブツブツブツ…………


「……で、その“薬”だ」


 視線を上げ、シャロンの真紅の瞳をじっと見据える。


「いったい、何を混ぜた」


「あー、それね……」


 シャロンは少しだけ考えるふりをしてから――


 やけに軽い調子で言った。


「若返り草の精製液に、古竜の血をちょっとと、時逆流蝶の鱗粉……え〜っと、それから――」


「待て――」


 即座に制止が入る。


「嫌な予感しかしないぞ……なんだ、その天文学的な価値の品々は」


「えー、まだ半分も言ってないよ?」


「いい……もういい」


 思わず片手でこめかみを押さえ、そのまま手を上げて制した。


 ――これ以上聞けば、頭痛が悪化する未来しか見えない。


「……で、飲んだらこうなると」


「うん」


「……副作用は」


「特にないよ?」


「………“特に”ってなんだ! “特に”って……!?」


「まあ、人によっては……ちょっと内臓がびっくり返って飛び出てくるくらい吐くかも――」


「――それを、副作用って言うんだよ!!」


 ついに堪えきれず、ケイトの怒声が家中に響き渡った。


 そして一拍――

 顔をしかめる。


「……いや、待て――」


 ……じっとシャロンを見る――


「今の説明、全部本当か?」


「さあ…?」


 にこっと笑う。見た目だけなら、紛うことなき天使様だ……


「どれが本当でどれが嘘でしょう……?」


「…………」


 実態は地獄のケルベロスも真っ青の悪魔なんだが………


 眉間を押さえ、深いため息をつく。

 じろりとシャロンを睨んで――


「……オエッ〜〜〜」


 わざとらしく口元を押さえ、大げさに顔をしかめてみせた。


「え……今?」


 シャロンが目を瞬かせる。


「……予行演習だ」


 ――低く吐き捨てる。


「そんな副作用、御免だからな」


 半分は当てつけだ――


 だが、内臓が飛び出すだの何だのと聞かされたせいで、もう半分は本気で胃がむかついていた。


「よりによってこんなわけのわからないバカ高いもん混ぜやがって……!」


「効き目は保証するよ?」


「――してるな、確かに……!」


 はっきり言って、効きすぎだ。求められる代価が怖ろしい……。


 その言葉を最後に、部屋にふっと沈黙が落ちた………

 さっきまでの軽口が嘘のように途切れ、窓の外で揺れる木々のざわめきだけが、やけに耳につく。


 ケイトはしばらく黙り込んだまま、自分の小さくなった手を見下ろしていた。


「……なあ」


 ケイトは一度だけ言葉を切り、少しためらうようにシャロンを見る。


「これ……途中で戻ったりしないよな」


 その問いだけは、先ほどまでの軽口とは明らかに重みが違っていた。


 もし戦闘の最中、剣を振るその瞬間に身体が元へ戻ったら――

 一瞬の狂いが、そのまま死につながる世界だ。


「戦ってる最中に元に戻るとか、洒落にならんぞ」


「しないよ〜」


 即答だった――


「私がそんな半端なもの作ると思う?」


「……思わないな」


 間髪入れずに返す。


「……それでも、確認しときたかった」


「ちゃんと完成品だから、安心しといてよ――」


 人の気も知らずに――いや、たぶん全部分かった上で、こいつはこういう言い方をしているのだろうな――


 いともあっさりと言う。


 だがその言葉に、張り詰めていたものが少しだけほどけた。


「……そうか」


 小さく頷く――


 それだけで、妙に腹が据わった。


 ケイトはゆっくりと立ち上がり、改めて鏡の前に立つ――


 映っているのは、見慣れない小柄な少女の姿。


「……まあ、いい」


 短く吐き出したその言葉は、諦めではなく――受け入れるためのものだった。 


 そして、ぽつりと呟く――


「せっかくだから、ありがたくこのまま使わせてもらう」


 口の端が上がる。


「――やり直しだ。面白そうだしな」


 その言葉に、シャロンは目を細める。


「……戻らなくて、いいんだね?」


 ――ふと、そんな問いを投げかけてきた。


 軽い声のまま……

 だが、どこか試すように――


 ケイトは一瞬だけ考えて……、

 すぐに鼻で笑った。


「今さらかよ!」


 肩をすくめる。


「こんだけ面白い門出を用意してもらったのに、戻る理由がどこにある」


「……そっか」


 シャロンは満足そうに笑った。


「――んで、これからどうすんの?」


 張り詰めていた空気をほぐすように、シャロンが軽く首を傾げる。


 その問いに、ケイトは小さく肩を回した。

 新しくなった身体の感触を確かめるような、半ば無意識の仕草だった。


「――予定は変えない」


 迷いなく答える。


「イプザ行くの?」


「ああ――」


 今度は、はっきりと頷いた。


「妹んところに顔を出す。もう手紙も出してるしな……」


「ふーん」


 興味のなさそうな曖昧な返事――

 だが視線は、ちゃんとこちらを見ている。


「そこで色々と手続きをして……そのあと、少し鍛え直す」


 軽く拳を握る。


「せっかく新品の身体と魔法があるんだ。慣らさないともったいない」


「――で、最終的には?」


「クルドに戻る――」


 迷いはない。


「愛着のある…拠点があるからな」


 その言葉に、シャロンは一瞬だけ目を細めた。


「……そっか」


 短く、しかしどこか納得したように頷く。


「じゃあさ……はい、これ」


 ぽい、と投げられたのは小さな革のウエストバッグだった。


「なんだ……これ…?」


「餞別だよ〜〜

 アイテムウエストバッグ――今ならペアの指輪とセットで、いちいちバックに入れなくとも、念じただけで、なんでもいくらでも収納できる機能付きですの〜」


「……どこの行商人の売り口上だよ、それは――」


 受け取ると、頑丈そうな割に見た目の割に軽いくしなやかだ。


「あとこれも……」


 続いて差し出されたのは、二の腕くらいの長さの短い鞘。


「……拳の鞘…か?

 アタシの大剣にゃあ、短すぎるし細すぎるだろ?入んねえよ?」


「まあ、まあ……

 まずは試してみてよ――」


 首を傾げながらも、言われるままに大剣を近づけると……すっと吸い込まれるように収まる。


「……ほう」


 腰に差して抜いてみる。長大な大剣がなぜか引っかかることなく問題なくスルッと抜ける。


 不思議だ…………


「圧縮収納鞘。身体小さくなったからさぁ……便利でしょ?」


「……やりすぎだろ、お前――」


 思わず笑いがでる。


「旅が楽になるじゃん」


「……まあ、確かに――」


 それは否定はできない。


「……で?」


 改めて、シャロンを見やる。


「何を企んでる?」


「え……?」


「長い付き合いだ……

 代価もなしでここまでやる奴じゃないだろ――お前」


 ケイトは受け取ったままのバッグを手に、じっとシャロンを見据える。

 軽口で流すつもりはない――そう伝えるような、逃がさない視線だった。


 シャロンはその目を受け、ほんの一瞬だけ視線を逸らす。


 ――だが、すぐにいつもの笑顔を作った。


「べ〜つにぃ…?」


「嘘つけ――」


「ほんとだってばぁ」


 にこにこと笑う。


(……何かあるな)


 確信はある――だが、こうなっては

ミノタウロスが押しても動きゃあしない……


「……まあいい」


 肩をすくめる――


「請求が来たら、そのとき考えるさね」


「うん、それでいいよ」   


 あっさり頷く。


「……ほれ、見ろ……やっぱりだ」


 そう毒づくケイトの横で――


(少し到着予定を読み違えてたけど……まあ、五十年程度なら誤差、誤差。長く生きてれば、そのくらいは無問題――)


 シャロンは胸の中だけで、そっと舌を出した。

本日15時10分に2話目を更新いたします。

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