第2話:婚約破棄RTA
「——レティシア・ヴァルモンド。貴様の罪を——」
再び、同じ光景。
同じ声。
同じ配置。
同じ視線。
違うのは、ただ一つ。
——私が、知っているということ。
「……ふふ」
小さく息を吐く。
先ほどの“失敗”は、すでに検証済み。
感情的に反論すれば即座に破滅。
沈黙しても流れは変わらない。
ならば必要なのは——
“最適解”の選択。
王子が一歩、前に出る。
「貴様は、平民である彼女に対し——」
——ここ。
タイミングを、半拍だけ遅らせる。
視線は真正面ではなく、わずかに下へ。
声は張らず、通す。
表情は——冷静に。
「そのお言葉、少々誤解があるようですわ」
一瞬。
空気が、止まる。
前回とは違う“間”。
「……誤解、だと?」
王子の声に、わずかな揺らぎ。
視界の端。
【好感度:32 → 35】
——成功。
続ける。
「確かに、わたくしは彼女と接触いたしました」
「ですが、その場には第三者が存在しております」
視線を、ゆっくりと動かす。
観衆の中の一人へ。
「証言を、お聞きになってはいかがかしら?」
ざわめきが広がる。
「……そんな話は——」
王子が言いかけた瞬間。
「い、いえ……確かに、その通りでございます」
名を呼ばれた生徒が、震えながら前に出る。
——前回、見つけた“鍵”。
記憶はログに残る。
誰がどこにいたかも、すべて。
ならば。
使うだけだ。
「レティシア様は、そのようなことは……」
空気が変わる。
疑念から、困惑へ。
困惑から——評価へ。
「……どういうことだ?」
王子の眉が寄る。
さらに一歩、踏み込む。
「誤解は解けましたかしら」
声は、あくまで穏やかに。
視界の端。
【好感度:35 → 41】
上がる。
確実に。
「……私の早計だったようだ」
王子が、ゆっくりと息を吐く。
——勝ち。
周囲の視線が変わる。
「なんて冷静な……」
「最初から分かっていたのか……?」
「さすが公爵令嬢だ……」
賞賛。
評価。
信頼。
すべてが、意図した通りに動く。
胸の奥に、静かな確信が広がる。
「……簡単ですわね」
誰にも聞こえないように、呟く。
感情を揺らせば負ける。
冷静に組み立てれば勝つ。
それだけの話だ。
視線を落とす。
見える。
数値。
ログ。
選択の積み重ね。
——すべてが、可視化されている。
ならば。
「感情は、制御できますわ」
どんな恋も。
どんな関係も。
積み上げれば、必ず届く。
——そう、思っていた。
(第2話 終)




