表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/72

家を百軒守ったばあさんは、自分のSOSだけ守れなかった ――100年デフレ鬼の十訓と、金利3.238%の真綿――

✦家を百軒守ったばあさんは、

 自分のSOSだけ守れなかった


――100年デフレ鬼の十訓と、

 金利3.238%の真綿――


………


本当に怖い呪いは、

墓場から来るんじゃない。


台所で言われた一言。

仏壇の前で聞かされた家訓。

嫁いだ日に渡された鍵。

義母の細い目。


そういうものが、

何十年も女の中に残って、

やがて

金利より重い鎖になる。


百軒ばあさんは、

家を

百軒持っていたのではない。


義母の言葉を百本、

心に

打ち込まれていたのだ。


そしてその言葉は、

長いデフレの時代には、

家を守る知恵に見えた。


けれど令和になり、

金利が上がり、

原油が上がり、

為替が揺れ、

職人が来なくなり、

借主がAIを連れて来る

時代になると、


その知恵は、

ゆっくりと

呪いに変わった。


百軒ばあさんを

壊したのは、

金利だけではなかった。


「大丈夫」

と言い続けた心と、


「分からん」

と言えなかった人生だった。


………


★目次


■第一章

 母が死んだ日、

 義母の声だけが残った


■第二章

 100年デフレ鬼の十訓


■第三章

 大丈夫と言う女


■第四章

 夜中にだけ崩れる奥様


■第五章

 住宅ローンは

 固定費の顔をした変動費


■第六章

 笑顔は無料、

 金利差は244万円


■第七章

 地元の銀行という

 ぬるい檻


■第八章

 ◯山県、

 年収333万円の部屋


■第九章

 東京より

 133万円薄い財布


■第十章

 マクロ経済は

 玄関まで来ていた


■第十一章

 AIバブルの空と、

 給湯器のない部屋


■第十二章

 分からんと

 言えない人たち


■第十三章

 黙って考える人


■第十四章

 百軒ばあさんは

 分かった顔で鍋に座った


■第十五章

 分からんと言える出口


❥Z世代のあなたへ


★あとがき

 ホームズとワトソンの

 やすきよ風・笑いと涙の締め


………


■第一章

 母が死んだ日、

 義母の声だけが残った


百軒ばあさんは、

中国地方の

田園都市に住んでいた。


古い町だった。


田んぼの名残。

大きな家。

古い蔵。

細い用水路。

昔からの檀家。

昔からの銀行。

昔からの信用金庫。

昔からの呼び名。


町の人は、

彼女を今でも

「奥様」

と呼んだ。


借家百軒。

土地。

駐車場。

古い倉。

田んぼの跡。

畑の跡。


それらを全部合わせれば、

外から見れば資産家だった。


だが、

百軒ばあさんの中身は、

資産家というより、

一つの古い家訓で

できていた。


その家訓を植え込んだのは、

義理の母だった。


嫁いだ日、

義母は言った。


「この家は、

 女の情で守れるほど

 軽い家ではありません」


百軒ばあさんは、

まだ若かった。


実家の母は、

やさしい人だった。


「無理せんようにな」

「嫌なことがあったら

 …戻っておいで」

「体を大事にしなさい」


そんな言葉で育った。


けれど嫁ぎ先では、

別の言葉が待っていた。


「土地は売るな」

「借主を甘やかすな」

「家賃は下げるな」

「修繕は最後まで粘れ」

「情をかけると家が傾く」


義母の言葉は、

最初は怖かった。


けれど、

怖い言葉ほど、

毎日聞かされると

正しい言葉に見えてくる。


百軒ばあさんは、

少しずつ変わっていった。


母の娘ではなく、

義母の嫁になった。


やさしい人ではなく、

家を守る人になった。


そしてある日、

実母が死んだ。


葬儀の日、

百軒ばあさんは

泣かなかった。


親戚は言った。


「さすが奥様は気丈じゃ」


けれど違った。


泣けなかったのだ。


泣く場所が、

もう心の中になかった。


実母の声は、

死んでからようやく

胸の奥に戻ってきた。


「無理せんようにな」


その一言だけが、

夜中に何度も戻ってきた。


けれど朝になると、

百軒ばあさんはまた言った。


「大丈夫!」


その日から、

彼女の中には

実母のやさしい声よりも、

義母の家訓だけが残った。


………


■第二章

 100年デフレ鬼の十訓


百軒ばあさんの義母は、

紙には書かなかった。


けれど、

百軒ばあさんの心には、

はっきり刻まれていた。


✲100年デフレ鬼の十訓


第一訓。

土地は売るな。


第二訓。

家賃は下げるな。


第三訓。

借主を甘やかすな。


第四訓。

修繕は最後まで粘れ。


第五訓。

税金は借金で圧縮せよ。


第六訓。

銀行は敵ではない。

道具にせよ。


第七訓。

嫁は家のために笑え。


第八訓。

情をかけると家が傾く。


第九訓。

先祖代々を絶やすな。


第十訓。

女の幸せより

家の存続を選べ。


この十訓は、

デフレ時代には強かった。


✲物価は上がらない。

✲金利は眠っている。

✲借主は大家に遠慮する。

✲修繕費は値切れる。

✲職人は電話一本で来る。

✲銀行は担保を見て

 いつでも貸してくれる。


その時代には、

冷たさは知恵に見えた。


修繕を遅らせることは、

節約に見えた。


家賃を下げないことは、

経営に見えた。


借金を使うことは、

相続税対策に見えた。


土地を売らないことは、

先祖への忠義に見えた。


百軒ばあさんは、

義母の十訓で勝った。


だから疑わなかった。


けれど時代が変わった。


✲金利が上がる。

✲物価が上がる。

✲修繕費が上がる。

✲職人が来ない。

✲材料が来ない。

✲借主は写真を撮る。

✲AIに相談する。

✲銀行は担保を見直す。


あのホルムズ海峡

封鎖以降、

十訓は逆回転を始めた。


✲土地は売るな。

→だから

 借金が減らない。


✲家賃は下げるな。

→だから 

 借主が逃げる。


✲借主を甘やかすな。

→だからSNSと

 AIで反撃される。


✲修繕は粘れ。

→だから家賃減額と

 退去が増える。


✲銀行は道具にせよ。

→だから銀行に

 首輪を引かれる。


✲情をかけるな。

→だから誰も

 助けてくれない。


義母の十訓は、

デフレ時代には

金庫の鍵だった。


しかし令和の

インフレ時代には、

鍵ではなくなった。


首輪になった。


百軒ばあさんは、

先祖代々の家を

守っているつもりだった。


けれど本当は、

先祖代々という

名前の首輪を、

毎日きれいに

磨いていただけだった。


………


■第三章

 大丈夫と言う女


百軒ばあさんは、

人前ではいつも言った。


「大丈夫です」


「なんとかします」


「昔から、

 うちはそうやって

 乗り越えてきましたから」


その言葉は、

町の人には強さに見えた。


銀行員には

信用に見えた。


親戚には

頼もしさに見えた。


借主には

冷たさに見えた。


けれど

本人だけは知っていた。


その大丈夫は、

本当の大丈夫では

なかった。


不安を消すための

呪文だった。


言えば言うほど、

一瞬だけ

胸の奥が静かになる。


けれど夜になると、

その静けさの下から、

黒い水のようなものが

じわじわ上がってくる。


百軒ばあさんには、

心が出している

SOSがわからなかった。


「疲れていませんか」

と聞かれると、


「大丈夫です」


「無理しないでください」

と言われると、


「昔からこうですから」


反射で答えた。


まるで古い

玄関チャイムのように、

押されれば必ず鳴る。


大丈夫です。

大丈夫です。

大丈夫です。


けれど、

一人になると違った。


台所の椅子に座ったまま、

急に手が動かなくなる。


何をしようとしていたのか、

わからなくなる。


通帳。

固定資産税の通知。

銀行の封筒。

給湯器の見積書。

空室一覧。


全部が、

自分の体より 

重く見える。


それでも彼女は、

自分に言い聞かせた。


私は昔から、

困難をど根性で

乗り切ってきた。


義母にも耐えた。

家も守った。

借主にも負けなかった。

銀行とも渡り合った。


だから今回も大丈夫。


そう言うたびに、

心の奥の小さな声が、

また一つ黙った。


百軒ばあさんは、

強かったのではない。


強いふりをする

自動モードから、

降りられなくなっていた。


………


■第四章

 夜中にだけ崩れる奥様


百軒ばあさんは、

夜中に目を覚ますことが

増えた。


午前二時十八分。


時計の赤い数字が、

天井に貼りついている

ように見えた。


隣の部屋は暗い。

仏壇の花も暗い。

冷蔵庫の音だけが、

妙に大きい。


その瞬間だけ、

彼女は

奥様ではなくなった。


地元の名士でもない。

百軒の大家でもない。

先祖代々の家を守る

女でもない。


ただの、

疲れた一人の女だった。


本当は怖い。


金利が怖い。

銀行が怖い。

空室が怖い。

修繕が怖い。

借主が怖い。

AIが怖い。


孫に何も

残せないことが怖い。


そして何より、

自分がもう頑張れない

かもしれないことが

怖かった。


けれど朝になると、

また言う。


「大丈夫!」


その一言で、

夜中の自分を

なかったことにする。


彼女には、

助けてください、

という七文字が

言えなかった。


借主には言えない。

銀行には言えない。

親戚には言えない。

孫には言えない。


実母には、

もっと言えなかった。


なぜなら彼女は、

ずっと

助ける側の顔をして

生きてきたからだ。


土地のある家の奥様。

百軒の大家。

先祖代々を守る嫁。

孫に財産を残す祖母。


その肩書きの中に、

助けてほしい女は

入っていなかった。


百軒ばあさんは、

家を守ろうとして、

自分の心を

担保に入れてしまった

女だった。


………


■第五章

 住宅ローンは

 固定費の顔をした

 変動費


ある朝、

67歳の元証券会社勤務の

おじいちゃんが

百軒ばあさんの家に来た。


おじいちゃんは、

白い紙を一枚出した。


そこには、

こう書いてあった。


確認すべき三つ。


① 今の金利

② 総返済額

③ 借り換え候補


百軒ばあさんは、

少し眉をひそめた。


「そんなことは、

 銀行さんがちゃんと

 見てくださっています」


おじいちゃんは、

首を横に振った。


「ばあさん、

 そこが怖いんじゃ」


「何がですか」


「住宅ローンや

 不動産ローンはな、

 固定費の顔をしとる」


「毎月

 払うものですから」


「そうじゃ。

 毎月払うから

 固定費に見える。

 けど変動金利で

 借りとるなら、

 本当は人生最大の

 変動費なんじゃ」


百軒ばあさんは、

よくわからない

顔をした。


おじいちゃんは、

小学生に説明するように

言った。


「金利は、

 銀行からお金を借りる

 レンタル代じゃ」


「レンタル代?」


「そうじゃ。

 自転車を借りたら

 レンタル代を払う。

 お金も同じじゃ。

 銀行から借りとる間は、

 お金の使用料を払う」


「それが金利」


「そうじゃ。

 そして総返済額は、

 最後まで払う

 本当の値段じゃ」


おじいちゃんは、

紙に太く書いた。


月々の

支払いだけを見るな。

最後まで

払う総額を見ろ。


「月々払えているから

 大丈夫、

 これが一番危ない」


百軒ばあさんは、

少し黙った。


おじいちゃんは続けた。


「借り換え候補も

 見る。

 今の銀行だけを

 見るな。

 ほかの銀行なら、

 もっと

 条件がいいかもしれん」


「うちは昔から、

 地元の銀行さんです」


「そこじゃ」


おじいちゃんは、

少し強い声で言った。


「昔からの付き合いで、

 未来の支払いは

 軽くならんのじゃ」


百軒ばあさんは、

言葉を返せなかった。


住宅ローンは、

固定費の顔をした

変動費だった。


百軒ばあさんは、

その顔に

気づかなかった。


………


■第六章

 笑顔は無料、

 金利差は244万円


おじいちゃんは、

次の紙を出した。


借入三千万円。

三十五年返済。


◯BI新生銀行。

金利〇・七七二%。

総支払額、

三千四百二十四万

四千六百八十円。


JAバンク。

金利一・一八九%。

総支払額、

三千六百六十八万

八千四百二十円。


差額、

二百四十四万

三千七百四十円。


百軒ばあさんは、

数字を見た。


「たった

 〇・四%くらいの

 違いでしょう」


おじいちゃんは、

首を横に振った。


「たった〇・四%が、

 三十五年かけて

 二百四十四万円に

 なるんじゃ」


二百四十四万円。


その数字を聞いても、

百軒ばあさんは、

すぐには驚かなかった。


なぜなら、

彼女の頭の中では、

お金より先に

地元の顔が

浮かんだからだ。


銀行の支店長。

信用金庫の担当者。

昔からの付き合い。


町内会の噂。

義母の言葉。

先祖代々の看板。


「でも、

 昔からの付き合いが

 ありますから」


おじいちゃんは、

静かに言った。


「ばあさん、

 付き合いで

 二百四十四万円

 払うんか」


百軒ばあさんは黙った。


「二百四十四万円

 あれば、

 給湯器が

 何台替えられる。

 屋根の

 応急修理もできる。

 空室対策もできる。

 孫の学費にもなる」


百軒ばあさんは、

まだ言った。


「でも、

 ネット銀行なんて

 怖いでしょう」


おじいちゃんは言った。


「怖いのは

 ネット銀行じゃない」


「何ですか」


「比べないことじゃ」


部屋が静かになった。


百軒ばあさんは、

スーパーの大根十円には

厳しかった。


けれど、

銀行の金利差

二百四十四万円には

鈍かった。


大根十円には怒るのに、

金利二百四十四万円には

地元銀行に

笑顔で判を押す。


おじいちゃんは、

最後に言った。


「笑顔は無料。

 金利差は

 二百四十四万円じゃ」


その言葉は、

白い封筒よりも

百軒ばあさんの胸に残った。


………


■第七章

 地元の銀行というぬるい檻


百軒ばあさんは、

ローンを

比べたことがなかった。


地元の銀行。

地元の信用金庫。

同じ支店。

同じ応接室。

同じお茶。

同じ担当者の笑顔。


それだけで安心していた。


「うちは昔から、

 ここの銀行さんなの」


その一言で、

すべてを終わらせていた。


彼女は、

自分が銀行を選んでいると

思っていた。


けれど本当は違った。


昔からそうだったから、

そのままに

していただけだった。


百軒ばあさんは、

家を百軒持っていた。


けれど、

銀行を一つしか

知らなかった。


おじいちゃんは言った。


「ばあさん、

 地元を大切にするのは

 悪いことじゃない」


「でしょう」


「けどな、

 地元の顔と、

 金利の計算は別じゃ」


「冷たいことを

 言いますね」


「冷たいのは、

 金利の方じゃ」


おじいちゃんは、

資料を指で叩いた。


「金利は、

 地元の顔を見て

 遠慮してくれん」


百軒ばあさんは、

それでもまだ、

地元の銀行を

悪く言いたくなかった。


なぜなら、

その銀行は

彼女にとって、

ただの

金融機関ではなかった。


町の信用。

家の格式。

義母から受け継いだ関係。

先祖代々の看板。


それらが全部、

銀行の応接室に

溶け込んでいた。


だから彼女は、

比較できなかった。


比較することは、

古い家を

裏切ることのように

感じていた。


けれど、

時代は裏切りとは

呼ばない。


それを、

見直しと呼ぶ。


………


■第八章

 ◯山県、

 年収333万円の部屋


百軒ばあさんは、

家賃を

五千円上げるつもりだった。


百軒で月五十万円。

一年で六百万円。


彼女の電卓では、

それは必要な数字だった。


金利が上がる。

修繕費が上がる。

給湯器が高い。

エアコンが来ない。

火災保険も上がる。


だから家賃を上げる。


大家の側から見れば、

その理屈は

間違っていなかった。


けれど、

おじいちゃんは

別の紙を出した。


そこには、

都道府県別の年収が

書かれていた。


東京都、

四百六十六万円。


神奈川県、

四百二十一万円。


千葉県、

三百九十二万円。


愛知県、

三百八十五万円。


そして◯山県。


三百三十三万円。


おじいちゃんは言った。


「ばあさん、

 あんたのアパートに

 住んどる人は、

 東京の財布で

 暮らしとるんじゃない」


百軒ばあさんは、

眉を寄せた。


「どういう意味ですか」


「◯山の財布で

 暮らしとるんじゃ」


◯山県の年収は、

三百三十三万円。


月に直せば、

ざっくり

二十七万七千円。


そこから

税金や社会保険が

引かれる。


手取りはもっと少ない。


家賃。

電気代。

ガス代。

水道代。

食費。

ガソリン。

スマホ代。

保険。

子どもの費用。

親の病院代。


それを

払ったあとに残るお金は、

東京のニュース番組が

想像するよりずっと薄い。


おじいちゃんは続けた。


「東京の五千円と、

 ◯山の五千円は、

 同じ五千円じゃない」


百軒ばあさんは、

黙っていた。


「数字は同じでも、

 刺さる深さが違うんじゃ」


百軒ばあさんは、

百軒の家を見ていた。


けれど、

その中にある

百個の財布の薄さを

見ていなかった。


………


■第九章

 東京より

 133万円薄い財布


東京の平均年収は、

四百六十六万円。


◯山県は、

三百三十三万円。


差は、

百三十三万円。


東京と◯縄なら、

四百六十六万円と

二百八十七万円。


差は、

百七十九万円。


おじいちゃんは、

百軒ばあさんに言った。


「ばあさん、

 同じ日本でも、

 財布の厚みが違うんじゃ」


「でも、

 物価はどこも

 上がっているでしょう」


「そうじゃ。

 そこが怖い」


おじいちゃんは、

ゆっくり言った。


「同じ物価高を、

 違う厚みの財布で

 受け止めとるんじゃ」


✲百七十九万円。


それは、

ただの数字ではない。


✲家賃なら、

 月七万円の部屋に

 約二年住めるお金。


✲スマホ代なら、

 月一万円として

 約十五年分。


✲食費なら、

 月五万円として

 約三年分。


✲軽自動車なら、

 一台買えるかも

 しれない金額。


同じ一年。

同じ日本。

同じ物価高。


それなのに、

住む県が違うだけで、

一年分の財布の厚みが

百万円以上違う。


これは、

小さな地域差では

なかった。


人生のスタート位置の

差だった。


百軒ばあさんは、

家賃五千円を

小さく見た。


けれど地方の五千円は、

米であり、

ガソリンであり、

子どもの靴であり、

親の薬代だった。


東京の五千円は、

カフェを一回我慢する

痛みかもしれない。


地方の五千円は、

米を買うか、

ガソリンを入れるか、

子どもの靴を

来月にするかの

痛みだった。


百軒ばあさんは、

そこを見ていなかった。


彼女の目には、

百軒の家が映っていた。


けれど、

百個の生活は

映っていなかった。


………


■第十章

 マクロ経済は

 玄関まで来ていた


百軒ばあさんは、

証券業界のことなど

何も知らなかった。


米国債利回り。

原油先物。

為替。

インフレ期待。

AIバブル。

リスクプレミアム。


テレビで専門家が

話していても、

言葉は耳の上を

すべっていくだけだった。


けれど、

彼女にも

わかることはあった。


ガソリンスタンドの

看板が、

また上がっている。


電気代の請求書が、

昔より厚く見える。


工務店の見積書に、

「価格は変動します」

という一文が増えた。


✲給湯器の納期が、

 はっきりしない。


✲エアコンの部品が、

 すぐ来ない。


✲塗料が高い。


✲シンナーが読めない。


✲職人が、

 前より強気になった。


そして銀行から来る封筒だけは、

なぜかいつも予定通り届いた。


朝のニュースでは、

原油が百二十ドルに近づき、

為替が一ドル百六十円を超え、

米国債利回りが上がり、

AI関連株はまだ上がっていると

言っていた。


百軒ばあさんには、

意味がわからなかった。


けれど、

そのわからない数字は、

少し遅れて

彼女の玄関まで来ていた。


給湯器の納期未定として。

職人の返事の遅れとして。

銀行員の声の硬さとして。

借主の家賃五千円への

震えとして。


おじいちゃんは言った。


「百軒ばあさんは、

 マクロ経済を知らなかった」


そして、

小さく続けた。


「けれど、

 マクロ経済は

 百軒ばあさんを知っていた」


原油百二十ドルも、

為替百六十円も、

彼女には遠い数字だった。


けれどその遠い数字は、

給湯器の納期未定となって、

彼女の玄関まで来ていた。


(今朝の10年国債金利は

 2.5%を超えている…)


………


■第十一章

 AIバブルの空と、

 給湯器のない部屋


不思議な時代だった。


AI関連株は上がっていた。


データセンター。

半導体。

生成AI。

クラウド。

電力インフラ。


東京のマーケットでは、

未来が光っていた。


けれど、

百軒ばあさんの町では、

未来ではなく、

給湯器が止まっていた。


AIは文章を書ける。

絵も描ける。

契約書も読める。

初期費用の

交渉文まで作れる。


でも、

壊れたエアコンを

梯子に登って

直してはくれない。


雨漏りした屋根に

防水シートを

張ってはくれない。


詰まったトイレを

夜中に直しには来ない。


借主はAIを連れて来た。


内見の見積書を写真に撮り、

AIに聞いた。


✲仲介手数料は

 交渉できるか。


✲礼金は必要か。


✲鍵交換代は

 誰が払うのか。


✲消毒代は任意か。


✲原状回復の特約は

 妥当か。


百軒ばあさんは、

それを生意気だと思った。


けれど違った。


若者は、

遊びで

AIを使っていたのではない。


生き残るために

使っていた。


物価は上がる。

給料は伸びない。

家賃は高い。

奨学金もある。

スマホ代もある。

将来も見えない。


だからAIに聞く。

検索する。

写真を撮る。

契約書を読む。


AIバブルは

空で花火を上げ、

地方の借家は

床下で水漏れしていた。


その二つは、

同じ令和の景色だった。


………


■第十二章

 分からんと言えない人たち


おじいちゃんは、

百軒ばあさんに

古い本の話をした。


「ばあさん、

 オルテガいう人が昔、

 大衆について書いとる」


百軒ばあさんは、

少し嫌な顔をした。


「大衆って、

 貧しい人とか、

 学のない人の

 ことでしょう」


おじいちゃんは、

首を横に振った。


「違うんじゃ」


「違う?」


「大衆いうんはな、

 貧乏人のことでも、

 低学歴のことでもない」


おじいちゃんは、

銀行の封筒を一枚、

テーブルに置いた。


「自分が

 分からんことを、

 分からんと言えん

 人間のことじゃ」


百軒ばあさんは黙った。


「金持ちでも

 大衆になる。

 大学の先生でも

 

大衆になる。

 銀行員でもなる。

 大家でもなる」


「大家でも?」


「そうじゃ。

 土地を持っとる。

 家を持っとる。

 昔からの付き合いがある。

 自分は分かっとる。

 自分は間違えん。

 そう思うた瞬間、

 人間は大衆になる」


百軒ばあさんは、

目をそらした。


彼女は、

証券市場を知らなかった。


米国債も知らない。

原油先物も知らない。

為替も知らない。


インプライド・

フォワードレートも

知らない。


AIを持った

借主の怖さも知らない。


けれど、

知らないとは

言えなかった。


なぜなら彼女は、

地元の名士だった

からだ。


奥様と呼ばれてきた

からだ。


先祖代々の

土地を守る人間が、

「分かりません」

などと

言ってはいけないと、

心のどこかで思っていた。


おじいちゃんは言った。


「ほんまに怖いのは、

 知らんことじゃない」


「じゃあ何ですか」


「知らんのに、

 知っとる顔をする

 ことじゃ」


百軒ばあさんは、

大衆ではないと

思っていた。


自分は土地を持っている。

家を百軒持っている。

銀行が頭を下げに来る。

町では奥様と呼ばれる。


だから、

自分は普通の人とは違う。


そう思っていた。


けれど、

分からないものを

分からないと

言えないという点では、

彼女は鍋の中の誰よりも

大衆だった。


………


■第十三章

 黙って考える人


百軒ばあさんのまわりには、

よくしゃべる人が多かった。


銀行員は言った。


「大きくは

 上がらないと思います」


不動産屋は言った。


「まだ需要はあります」


親戚は言った。


「土地がある家は強い」


テレビの専門家は言った。


「影響は限定的でしょう」


SNSの人たちは言った。


「騒ぎすぎ」

「日本は大丈夫」

「AIで未来は明るい」

「不動産は最後に残る」


みんな、

分かった顔をしていた。


けれど、

おじいちゃんだけは、

すぐにはしゃべらなかった。


黙っていた。


百軒ばあさんは、

少し苛立った。


「何か言ったら

 どうですか。

 証券会社に

 いたんでしょう」


おじいちゃんは、

湯呑みを

両手で包んだまま、

小さく言った。


「わしにも、

 よう分からんのじゃ」


百軒ばあさんは、

あきれた顔をした。


けれど、

その沈黙は

逃げではなかった。


おじいちゃんは、

分からないから

黙っていた。


黙って、

金利表を見た。


黙って、

原油価格を見た。


黙って、

◯山県の年収

三百三十三万円を見た。


黙って、

借主の顔を思い出した。


黙って、

銀行員の声の硬さを

思い出した。


黙って、

給湯器の納期未定という

四文字を見た。


そしてようやく言った。


「ばあさん、

 しゃべる前に、

 ちょっと

 怖がった方がええ」


「怖がる?」


「そうじゃ。

 分からん時に、

 分かった顔で

 しゃべる人間が

 一番危ない」


おじいちゃんは続けた。


「分からん時は、

 黙ってええんじゃ。


 黙るいうんは、

 負けることじゃない。


 考える場所を

 作ることなんじゃ」


分かった顔で

しゃべる人より、

分からん顔で

黙って考える人の方が、

時代の変わり目では

出口に近い。


百軒ばあさんは、

その言葉を笑えなかった。


………


■第十四章

 百軒ばあさんは

 分かった顔で鍋に座った


おじいちゃんは、

自分のことを

賢い人間だとは

思っていなかった。


むしろ最近は、

難しい言葉が

すぐ出てこない。


米国債。

原油先物。


インプライド・

フォワードレート。


AIバブル。

変動金利。


どれも聞いたことはある。


けれど、

若い頃のように

すぱっと説明できない。


だからおじいちゃんは、

よく言った。


「わしには、

 難しいことは

 よう分からん」


百軒ばあさんは、

その言葉を

少し見下していた。


分からんと言う人間より、

分かった顔をしている

人間の方が

立派に見える。


地元の名士。

先祖代々の土地。

百軒の借家。

銀行の応接室。

奥様という呼び名。


百軒ばあさんの

まわりには、

分かった顔をするための

道具が

たくさんあった。


けれど、

おじいちゃんには

違う才能があった。


それは、

分からんことを

分からんと知っている 

才能だった。


昔、

古代ギリシャに

ソクラテスという人がいた。


その人は、

自分は何でも知っているとは

言わなかった。


むしろ、

自分は知らないということを

知っていた。


だから、

分かった顔をしている人たちに

問いかけた。


本当に分かっているのか。

それは正しいのか。

その言葉は、

ただの思い込みではないのか。


おじいちゃんは、

哲学者ではなかった。


白い布をまとって

広場を歩いたわけでもない。


証券会社で三十八年、

馬車馬のように働いた

ただのじいさんだった。


けれど、

相場の世界で何度も見た。


「大丈夫」

と言いながら

逃げ遅れる人。


「昔からこうだから」

と言って

損を広げる人。


「銀行が言うから」

と信じて

自分の頭で

考えなくなる人。


「私は分かっている」

と言った瞬間に、

本当の危険を

見なくなる人。


百軒ばあさんは、

知っている顔で

鍋に座った。


おじいちゃんは、

分からん顔で

鍋のふちを見た。


その差が、

二人の運命を

分け始めていた。


………


■第十五章

 分からんと言える出口


百軒ばあさんは、

最後まで家を守ろうとした。


土地を守ろうとした。

孫に残そうとした。

義母の十訓を守ろうとした。


地元銀行との

付き合いを守ろうとした。

奥様という顔を 

守ろうとした。


けれど、

守れば守るほど、

自分が減っていった。


夜中に眠れない。

朝に大丈夫と言う。 


昼に銀行へ行く。

夕方に借主から電話が来る。


夜に仏壇の前で固まる。


そしてまた、

午前二時十八分に目が覚める。


その日、

百軒ばあさんは、

おじいちゃんに初めて言った。


「私、

 何が正しいのか

 分からなくなりました」


声は小さかった。


奥様の声ではなかった。


百軒の大家の声でもなかった。


一人の女の声だった。


おじいちゃんは、

静かにうなずいた。


「それでええ」


百軒ばあさんは、

驚いた。


「ええんですか」


「ええ。

 そこからしか始まらん」


「分からないのに?」


「分からないからじゃ」


おじいちゃんは、

白い紙を一枚出した。


そこには、

三つだけ書いてあった。


今の金利。

総返済額。

借り換え候補。


その横に、

もう三つ書いた。


守る家。

売る家。

直す家。


そして最後に、

一行だけ書いた。


助けを求める人。


百軒ばあさんは、

その文字を見て

しばらく黙っていた。


助けを求める人。


その中に、

自分の名前を入れることが、

彼女には何より難しかった。


けれど、

その日だけは、

紙を破らなかった。


百軒ばあさんは、

家を百軒持っていた。


けれど、

「分かりません」

と言える部屋を

一つも持っていなかった。


おじいちゃんは、

家を百軒持っていなかった。


けれど、

分からんと言える出口を

一つ持っていた。


時代を生き残る才能とは、

何でも分かることではない。


✲分からんと認めて、

 一度黙り、

 出口を探すことだった


百軒ばあさんは、

その日初めて、

義母の声ではなく、

自分の心の声を聞いた。


小さな声だった。


けれど、

まだ消えてはいなかった。


………


❥Z世代のあなたへ


この物語は、

百軒ばあさんだけの話

ではありません。


あなたが借りる部屋。

あなたが払う家賃。

あなたが見る初期費用。

あなたが検索する原状回復。

あなたが撮る入居時写真。

あなたがAIに見せる契約書。


それら全部が、

令和の生活防衛です。


でも、

それだけではありません。


この物語は、

大人がよく言う

「大丈夫」

という言葉の怖さの

話でもあります。


大丈夫。

なんとかなる。

昔からこうだった。

銀行が言うから平気。

土地があるから安心。

家賃収入が

あるから大丈夫。


そういう言葉は、

安心の毛布に見えます。


でも使いすぎると、

思考停止の

ふたになります。


Z世代のあなたへ。


頭がいい人だけが

生き残るわけでは

ありません。


分からないことを

分からないと言える人。


一度黙って考えられる人。


✲地元の付き合いだけで

 決めず、

 比べられる人


✲月々の支払いだけでなく、

 総返済額を見られる人


✲家賃の五千円が、

 誰かの米やガソリンや

 子どもの靴になると

 想像できる人


そういう人が、

令和のサバイバーに

なります。


金利は小さく見えます。


でも、

0.3%の差でも、

三十五年では

百万円単位で

未来を変えます。


住宅ローンや

不動産ローンは、

固定費の顔をした

変動費です。


まず見るのは三つ。


今の金利。

総返済額。

借り換え候補。


これだけでも、

未来の支払いは変わります。


そして、

もう一つ大事なことが

あります。


分からない時は、

分からないと言っていい。


黙って考えていい。

人に聞いていい。

AIに聞いてもいい。

比べていい。

逃げ道を探していい。


分かったふりをして

鍋の中に座り続けるより、


分からん顔で

鍋のふちを見る人の方が、


時代の変わり目では

出口に近いのです。


………


★あとがき

 ホームズとワトソンの

 やすきよ風・笑いと涙の締め


✲ワトソン


先生、

今回の敵は誰ですか?

金利ですか?

銀行ですか?

義母ですか?

AIですか?


✲ホームズ


全部じゃ。


✲ワトソン


全部?


✲ホームズ


正確には、

分からんのに

分かった顔をする心じゃ。


✲ワトソン


それ、

いちばん手強いやつですね。


✲ホームズ


しかも本人の中に住んどる。


✲ワトソン


追い出しにくい!


✲ホームズ


家賃も取れん。


✲ワトソン


百軒ばあさんでも

無理ですか。


✲ホームズ


無理じゃ。

自分の心の借主は、

退去立会いが一番難しい。


✲ワトソン


うまいこと言いますね。


✲ホームズ


うまいこと言うても、

給湯器は来ん。


✲ワトソン


また給湯器!


✲ホームズ


令和の怪談は、

幽霊より給湯器じゃ。


✲ワトソン


先生、

金利0.4%の違いで

244万円ですか?


✲ホームズ


そうじゃ。


✲ワトソン


ばあさん、

大根10円には怒るのに。


✲ホームズ


金利244万円には

笑顔で判を押す。


✲ワトソン


地元銀行の笑顔、

怖っ。


✲ホームズ


笑顔は無料。

金利差は有料じゃ。


✲ワトソン


名言出ました!


✲ホームズ


ただし請求書つきじゃ。


✲ワトソン


先生、

◯山県の年収3

33万円という数字も

効きましたね。


✲ホームズ


東京466万円とは、

133万円違う。


✲ワトソン


◯縄287万円とは、

東京との差が179万円。


✲ホームズ


同じ日本でも、

財布の厚みが違うんじゃ。


✲ワトソン


東京の五千円と、

◯山の五千円は、

刺さる深さが違う。


✲ホームズ


そうじゃ。

五千円は、

米にもなる。

ガソリンにもなる。

子どもの靴にもなる。


✲ワトソン


ばあさんは、

百軒の家は見ていたけど、

百個の財布は

見ていなかった。


✲ホームズ


そこじゃ。


✲ワトソン


先生、

オルテガの大衆の話も

出てきましたね。


✲ホームズ


大衆は、

貧乏人のことではない。


✲ワトソン


学歴がない人でもない。


✲ホームズ


分からんことを

分からんと言えん人の

ことじゃ。


✲ワトソン


東大教授でも大衆になる?


✲ホームズ


なる。


✲ワトソン


銀行支店長でも?


✲ホームズ


なる。


✲ワトソン


百軒ばあさんでも?


✲ホームズ


もちろんじゃ。


✲ワトソン


じゃあ先生は?


✲ホームズ


わしも油断したらなる。


✲ワトソン


急に正直!


✲ホームズ


分からんと言えん時点で、

もう鍋の中じゃ。


✲ワトソン


茹でガエル王国ですね。


✲ホームズ


鍋の中で一番危ないのは、

熱くないと言い張る

カエルじゃ。


✲ワトソン


先生、

今回のおじいちゃんは

ソクラテスっぽかった

ですね。


✲ホームズ


未来が

見えたわけではない。


✲ワトソン


では何がすごいんですか?


✲ホームズ


自分が見えていないことを

知っていたんじゃ。


✲ワトソン


分からんと言える才能。


✲ホームズ


そうじゃ。


✲ワトソン


Z世代にも必要ですか?


✲ホームズ


必要どころか、

これからの命綱じゃ。


✲ワトソン


勉強ができるだけでは

ダメ?


✲ホームズ


勉強は大事じゃ。

けど、

分からんと言えん秀才は

危ない。


✲ワトソン


逆に、

成績が普通でも?


✲ホームズ


分からんと言えて、

調べて、

比べて、

出口を探せる人は強い。


✲ワトソン


それが令和のサバイバー。


✲ホームズ


そうじゃ。


✲ワトソン


では最後に、

百軒ばあさんへ一言。


✲ホームズ


土地は守った。

家も守った。

けれど、

自分のSOSを守れなかった。


✲ワトソン


泣けますね。


✲ホームズ


大丈夫という言葉は、

時々、人を助ける。


✲ワトソン


はい。


✲ホームズ


けれど、

使いすぎると、

心の消音ボタンになる。


✲ワトソン


心の消音ボタン。


✲ホームズ


だから、

たまには言うんじゃ。


✲ワトソン


何を?


✲ホームズ


分からん。

助けて。

一緒に考えて。


✲ワトソン


それは弱さですか?


✲ホームズ


違う。


✲ワトソン


じゃあ何ですか?


✲ホームズ


出口の入口じゃ。


✲ワトソン


きれいに締まりましたね。


✲ホームズ


いや、まだじゃ。


✲ワトソン


え?


✲ホームズ


給湯器の見積もりが

まだ来とらん。


✲ワトソン


最後までそこ!


✲ホームズ


令和の人生はな、

哲学と金利と給湯器で

できとるんじゃ。


✲ワトソン


笑ってええのか、

泣いてええのか

分かりませんね。


✲ホームズ


それでええ。


✲ワトソン


え?


✲ホームズ


分からんと認めた時、

人は少しだけ

鍋のふちに近づく。


✲ワトソン


令和の茹でガエル王国、

これにて一件落着!


✲ホームズ


いや。


✲ワトソン


またですか?


✲ホームズ


まだ一件目じゃ。


✲ワトソン


……それ、

一番怖いやつですやん。


………


         完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ