世界人口減少論が、いま始まる ――燃料、移民、税、爆発。その全部が最後は 子どもを減らす――
✦世界人口減少論が、いま始まる
――燃料、移民、税、爆発。
その全部が最後は
子どもを減らす――
………
本当に怖い時代は、
戦争で始まらん。
先に減るんは、
子どもと、燃料と、
我慢なんじゃ。
………
★目次
■第一章 2.2の地球
■第二章 1.5の先進国
■第三章 1.8のラテンアメリカ
■第四章 1.481の
オーストラリア
■第五章 右でも左でもなく、
人数の話
■第六章 2.1を割った文明
■第七章 300人の工場
■第八章 40%の限界自治体
■第九章 68%のため息
■第十章 24万バレルの炎
■第十一章 20〜30%のゴム
■第十二章 50億個の
静かな値上げ
■第十三章 2か月かかる箱
■第十四章 88ユーロの空
■第十五章 1.03の最後の帳尻
★あとがき
ホームズとワトソンの
やすきよ漫才風
❥Z世代のあなたへ
………
■第一章
2.2の地球
わしは六十七歳、
元証券会社勤務の
おじいちゃんじゃ。
昔は、
世界いうたら簡単じゃった。
原油が上がる。
株が下がる。
景気が悪うなる。
それでだいたい
説明できる思うとった。
けど今は違う。
ホルムズ海峡が詰まる。
製油所が燃える。
飛行機が減る。
石化製品が高うなる。
移民で町が割れる。
税金は重なる。
そのうえ若い人が、
静かに言う。
✲「この社会で
子ども持つんは、
あまりに高すぎる」
そこでやっと分かるんよ。
別々の顔をしたニュースは、
別々の話で終わっとらん。
全部が最後は
人口減少へ流れ込んどる。
✲「国連系の整理では、
世界の合計特殊出生率は
1994年の2.9から、
2024年には2.2まで下がった。
もう地球全体が、
『自然に次の世代が
増える世界』
から外れ始めとるんじゃ」
(Reuters)
■第二章
1.5の先進国
先進国は豊かじゃ。
豊かなら、
安心して子どもが増える。
そんな時代も
あったんかもしれん。
けど今の先進国は、逆じゃ。
✲「OECD平均の出生率は、
1960年の3.3から
2022年には1.5まで落ちた。
つまり、豊かさはそのまま
出産の追い風には
ならんかった」
(Reuters)
なぜか?
✲家賃が高い
✲教育費が高い。
「良い親」であるための
基準が高い
✲仕事を休むのも怖い
✲将来は見えん
✲自由はある
でも、
✲その自由を維持する
値段が高すぎる
だから子どもは、
祝福である前に、
見積書になる。
若い人が冷たいんやない。
むしろ逆じゃ。
今の社会が、
真面目な人ほど
子どもを持つのが
怖い構造になっとるんよ。
■第三章
1.8のラテンアメリカ
少子化いうたら日本。
そう思いたがる人は多い。
けど、世界は
もうそんな段階やない。
✲「ラテンアメリカ・
カリブ地域の
合計特殊出生率は1.8」
Reutersは、
この地域で起きとる出生低下を、
1950年以降でもっとも
劇的な変化の一つとして
伝えとる。
これが意味するんは大きい。
宗教が違う。
文化が違う。
家族観も違う。
でも、
都市化し、
生活費が上がり、
女性が働き、
国家支援が弱いままやと、
最後に出る答えは似てくる。
✲「産みたいけど、産めん」
ここまで来たら、
少子化は文化の話やない。
文明の話なんじゃ。
■第四章
1.481のオーストラリア
オーストラリアは違うじゃろう。
土地が広い。
資源もある。
東京みたいな息苦しさも少ない。
そう思いたくなる。
でも数字は逃がしてくれん。
✲「オーストラリア
統計局によると、
2024年の出生率は1.481、
出生数は292,318人じゃ」
(Australian
Bureau of Statistics)
ここまで来ると、
日本だけの特殊事情では
説明できん。
問題は国土の広さでも、
国民性でもない。
もっと深いところ、
文明の設計図そのものが、
次の世代を作る方向に
できてないんよ。
資源があっても減る。
広くても減る。
豊かでも減る。
つまり人類は今、
外から壊される前に、
内側から次の椅子を
減らし始めとる。
■第五章
右でも左でもなく、
人数の話
ここで日本人は、
すぐラベルを貼る。
イーロン・マスクが
移民を語る。
すると、
「あれは右翼だ」
「いや反左翼だ」
「危ない思想だ」
そんなふうに処理したがる。
けど、
そこだけで終わらせたら、
肝心なものを見失う。
マスクの言葉は
確かに乱暴じゃ。
煽る。
過剰じゃ。
腹も立つ。
でも、
乱暴な言葉の奥にある
視線を冷たく読むと、
彼は案外、
政治思想より先に
人数の帳尻
を見とるように見える。
子どもが減る。
働く人が減る。
税を払う人が減る。
老人を支える側が減る。
そこで国家は外から人を入れる。
でも受け皿は足りん。
町が割れる。
さらに税と物価高で
若者がしんどくなる。
そしてまた子どもが減る。
これは右左の話か。
いや、もっと冷たい。
算数の破綻なんよ。
マスクは、
政治を語っているようで、
本当は
この算数が壊れる未来に
怯えとる男として
読むこともできるんじゃ。
■第六章
2.1を割った文明
✲「人口置換水準は、
だいたい2.1」
この数字を下回る社会は、
長い目で見れば、
自分の数を自分で維持できん。
ローマ人がローマを作って、
ローマ人が消えた。
そんな言い方は少し乱暴じゃ。
けど、感覚としては分かる。
文明は剣だけで
滅びるんやない。
✲先に家族が小さくなる
✲都市が重たくなる
✲税が重なる
✲生活が高くなる
そのうえで
✲戦争や疫病や
物流ショックが来る。
その時初めて、
「あれ、この文明、
自分で次を作れんなっとる」
と分かる。
ホルムズ海峡は、
その最初の原因やない。
むしろ、
もう前から弱っとった
文明の内臓を、
外から押して
痛みを見せる指なんよ。
■第七章
300人の工場
ドイツでは、
使われていない工場に
300人の難民を入れる
計画が争点になった。
三百人。
数字だけ見たら小さい。
でも地方の町にとっては、
数字は人数だけではない。
病院、
住宅、
学校、
行政、
治安への不安まで含めた
重さを持つ。
✲中で子どもが減る。
✲働き手が減る。
✲だから外から人を入れる。
理屈は分かる。
でも町の器がもう細っとる。
ここで
「移民が悪い」
で止まると浅い。
本当は、
人口減少で開いた穴を、
社会基盤を直さんまま、
別の人口で
埋めようとしたことが
争点になっとるんよ。
人口減少のツケは、
人口の穴埋めを急ぐほど、
別の顔をして噴き出す。
■第八章
40%の限界自治体
✲「ドイツでは自治体の
**約40%**が、
難民受け入れ状況を
危機的と答えた」
(Reuters)
四割。
会社なら、かなり赤信号じゃ。
数字の上では
まだ制度は回っとる。
でも現場はもう、
息切れを始めとる。
日本は欧州ほど
表で爆発しとらん。
じゃあ健全なんか。
そうでもない。
日本は日本で、
外から埋める以前に、
内側だけで静かに老い続ける
苦しさを抱えとる。
欧州は、人口減少を
移民で埋めようとして軋む。
日本は、埋める力も弱く、
静かに細る。
入り口は違う。
でも行き先は同じじゃ。
人口減少は
人口の話で終わらん。
行政の話になり、
住宅の話になり、
学校の話になり、
町の空気の話になる。
■第九章
68%のため息
✲「これ以上の受け入れに反対。
ドイツでは、その世論が
**68%**に達した。
これは一部の
過激派の叫びやない。
町のため息そのものじゃ」
(Reuters)
人は、急に
排外的になるんやない。
その前に、
✲家賃が上がる
✲税が重い
✲病院が混む
✲学校が苦しい
✲自分の子どもの未来も見えん
そういう条件が積み重なる。
そこで
「これ以上は無理じゃ」
と言い始める。
マスクの言葉が刺さるのは、
彼が正しいからだけやない。
その前に、
生活の赤字が積もっとる
からなんじゃ。
そこを見ずに、
右だ左だのラベルだけで
終わらせると、
いちばん大事な
人口問題の芯から遠ざかる。
■第十章
24万バレルの炎
数週間のうちに、
湾岸、ロシア、
豪州、インドで、
製油所、LNG基地、
ガス施設、燃料インフラの
火災、爆発、
攻撃、操業停止が、
立て続けに並び始めた。
クウェートでは
製油所が撃たれ、
カタールでは
LNG施設が傷み、
UAEでは
ガス施設が止まり、
豪州では
ジーロング製油所が燃え、
ロシアでは
トゥアプセ製油所が止まり、
インドでも
大型製油所火災が起きた。
ここまで短期間に重なると、
人はつい
「何か大きな見えざる手が
動いとるんじゃないか」
と言いたくなる。
気持ちは分かる。
けど、もっと怖い見方もある。
世界のエネルギー網
そのものが、
老朽化と戦争と過負荷で、
事故にも攻撃にも
弱うなっとる、
いう見方じゃ。
つまり陰謀やなくても、
陰謀論みたいに見えるほど、
文明の土台が
薄うなってきたんよ。
そして、その火は
ガソリン代だけを
焼くんじゃない。
物流を焼き、
包装を焼き、
航空便を焼き、
生活の余裕を焼き、
最後には、
子どもを持つ気力そのものを焼く。
そしてその炎は、
現場だけで終わらん。
✲燃料が上がる
✲物流が乱れる
✲食卓が痩せる
✲将来設計が崩れる
その先でまた、子どもが減る。
炎は、最後には出生率に届く。
■第十一章
20〜30%のゴム
✲「世界最大級の
コンドームメーカー
Karexは、
価格を**20〜30%**
引き上げる計画を示した」
(Reuters)
理由は、
イラン戦争に伴う供給網混乱で、
合成ゴム、ニトリル、
潤滑材、包装材、
輸送費が上がったからじゃ。
これを笑う人もおる。
でもここ、
めちゃくちゃ大事なんよ。
石油が高くなる。
するとガソリンだけやない。
合成材料が上がる。
包装が上がる。
最後は、
✲性と生殖のコストまで上がる
人口の問題は、
出生率のグラフだけで
起きるんやない。
その前に、
恋愛、結婚、避妊、
妊娠、子育て、
その全部を取り巻く
物の値段がじわじわ上がる。
つまり、
石化値上がりの末端症状も、
ちゃんと
人口減少の上流なんじゃ。
■第十二章
50億個の静かな値上げ
✲「Karexの供給量は
年間50億個超」
(Reuters)
これだけの規模の企業が
値上げを言い出すいうことは、
局地的な異常やなく、
石化原料と包装と
物流の流れ全体が
傷んどるということじゃ。
しかも、
こういう異変は見えにくい。
原油はニュースになる。
株価もニュースになる。
けど、
包装フィルムや医療手袋や
コンドームや潤滑材は、
文明の中で透明に扱われる。
でも、本当は逆なんよ。
文明は、
見えにくい部材から先に壊れる。
出生率は、
そのかなり後に出てくる
決算書なんじゃ。
■第十三章
2か月かかる箱
✲「KarexのCEOは、
欧州や米国向けの船便が、
従来の約1か月から、
今は2か月近く
かかるようになったと
語った」
(Reuters)
高いだけならまだええ。
怖いのは、
高い、遅い、読めない。
この三重苦じゃ。
人生も同じなんよ。
家賃が高いだけなら、
まだ耐えられる。
育児費が高いだけなら、
まだ工夫できる。
でも、
高い、
先が読めない、
社会の支えも薄い。
こうなると、
出産は先送りされる。
物流と出生率は遠いようで、
よう似とる。
どっちも
「次が来る」という信頼
で回っとる。
その信頼が切れた時、
箱も届かんし、
子どもも増えん。
■第十四章
88ユーロの空
✲「欧州発の長距離便では、
乗客一人あたり
平均88ユーロの
燃料コスト増という
試算が出た。
一部路線では
129ユーロ増とも報じられた」
(Reuters)
たかが飛行機代。
そう思うかもしれん。
けど違う。
✲留学
✲就職
✲遠距離恋愛
✲家族に会いに行く
✲推しを見に行く
そういう
「人生を前に動かす移動」
の値段が
上がるいうことなんよ。
恋愛は感情だけで
できとるんやない。
結婚もそうじゃ。
交通費と時間と
余裕でできとる。
空が痩せると、
人生の選択肢が痩せる。
その先でまた、
家族形成が細る。
つまり航空燃料の話も、
最後は人口減少へつながる。
■第十五章
1.03の最後の帳尻
最後に残るんは、静かな数字じゃ。
✲「チリの
2024年の出生率は1.03。
しかもこの10年で
**42%**も下がった」
(FT)
✲「ラテンアメリカ・
カリブ地域全体でも、
2024年の合計特殊出生率は1.8」
(ECLAC)
この静かな数字を見た時、
ホルムズ海峡封鎖も、
移民反発も、
製油所の炎も、
税への怒りも、
コンドームの値上げも、
飛行機代の上昇も、
もうバラバラのニュースには
見えんようになる。
チリだけが
壊れとるんやない。
日本だけが
老いとるんやない。
オーストラリアだけが
細っとるんやない。
世界じゅうで、
別々の危機が、
最後は同じ出口へ
流れ込み始めとる。
✲人口減少
右とか左とか、
移民賛成とか反対とか、
戦争が悪いとか
政府が悪いとか、
そういう話ももちろんある。
けど、その全部の奥で、
もっと冷たいことが
起きとる。
文明の全部の赤字が、
最後は子どもの数へ
出始めとるんじゃ。
見えざる神の手が
あるようにも見える。
けど、ほんまはもっと地味じゃ。
住宅費。
教育費。
燃料高。
税負担。
物流遅延。
将来不安。
移民をめぐる分断。
その一つ一つが、
世界中で、
子どもの椅子を
一つずつ片づけとる。
そして、
そういう世界を見て、
イーロン・マスクはこう叫んだ。
「This collective suicide
of humanity
needs to turn around!」
――人類のこの集団的自殺は、
ひっくり返さないといけない!
あの男の言葉は乱暴じゃ。
誇張もある。
腹も立つ。
けど、
右とか左とかいう前に、
彼はたぶん
この一点を怖がっとる。
文明が、
敵に滅ぼされる前に、
自分で次の世代を
消し始めることを。
だからチリの1.03は、
ただの数字やない。
どんな演説よりも冷たく、
どんな陰謀論よりも静かに、
人類の危機を語っとるんじゃ。
………
★あとがき
ホームズとワトソンの
やすきよ漫才風
✲ワトソン
ホームズ、今回は重たいで。
少子化、移民、ホルムズ、
税金、爆発、飛行機、ゴム。
盛り込みすぎじゃろ。
✲ホームズ
違うな、ワトソン。
これは盛り込みではない。
文明崩壊の定食だ。
✲ワトソン
食いたないわ、そんな定食!
✲ホームズ
だが現代人は、
毎日それを少しずつ
食わされている。
朝に出生率、昼に移民対立、
夕方に原油高、
夜にセール広告だ。
✲ワトソン
最後の広告が
いちばん腹立つな。
✲ホームズ
現代は、
滅びかけても
広告だけは元気だからね。
✲ワトソン
いや、笑えんわ。
✲ホームズ
人類は賢くなりすぎたんだ。
賢いから
将来不安を計算できる。
計算できるから
子どもを減らす。
賢さが文明を弱らせるとは、
実に皮肉じゃないか。
✲ワトソン
つまりアホの方がええんか?
✲ホームズ
そこまで単純に
言うと怒られる。
だが、計算が鋭すぎる
社会は命に厳しい。
✲ワトソン
……それ、
今日いちばん刺さるで。
✲ホームズ
刺さるだろう。
人類は敵に滅ぼされる前に、
家計簿で自分を
減らし始めるのだから。
✲ワトソン
最後だけ名探偵みたいな
こと言うなや。
途中までずっと
ゴムと燃料の話じゃったぞ。
✲ホームズ
生命は、
いつの時代もその二つに弱い。
✲ワトソン
締めが最低で最高じゃ。
………
❥Z世代のあなたへ
この小説は、
「イーロン・マスクは正しい」
と言いたい話やない。
逆じゃ。
右か左かで片づける前に、
あの男が
何を怖がっとるのかを
一回だけ冷たく見てみよう、
という話なんよ。
それはたぶん、
移民そのものでも、
税金そのものでも、
戦争そのものでもない。
その全部が最後は、
子どもを持てない社会へ
つながってしまうこと。
そこを見た時、
飛行機代の値上げも、
包装材不足も、
税負担も、
移民対立も、
もう別の話ではなくなる。
全部、
未来の人数を削る
方向へ流れとる。
派手な陰謀論に
飛びつかんでええ。
でも、
「全部ただの偶然です」
にも騙されたらいけん。
世界は、
数字の形で先に悲鳴を上げる。
その悲鳴を聞ける人が、
次の時代を先に読む。




