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東京はまだ平和だった。けど、フィリピンと豪州は先に終わり始めていた

✦東京はまだ平和だった。

 けど、フィリピンと豪州は

 先に終わり始めていた


――スカボロー礁

 352メートルの柵、

 豪州日量12万バレルの炎、

 栃木672キロリットルの

 入札不調。 

 それでも日本は

 「まだ大丈夫」と言った――


………


世界が壊れ始める時、

最初に鳴くんは

東京の警報じゃない。


フィリピンの鍋の火と、

豪州の

ガソリンスタンドの数字と、

栃木で落ちなかった

重油の入札なんじゃ。


………


✦目次


■第一章 

 夜十一時四十七分の通知


■第二章 

 日量12万バレルの炎


■第三章 

 352メートルの柵


■第四章 

 三つの海に

 首を絞められた国


■第五章 

 家賃20万円、年収600万円


■第六章 

 栃木672キロリットルの穴


■第七章 

 Amazonの静かな配給


■第八章 

 仕事が消えるんじゃない、

 幅が消える


■第九章 

 止めんためのIT


■第十章 

 ハローワークへ行く朝


■第十一章 

 まだ大丈夫と言う国


■第十二章 

 東京へ届いた最後の平和


★あとがき

 ホームズとワトソンの、

 やすきよ漫才風


❥Z世代のあなたへ


………


■第一章 

 夜十一時四十七分の通知


さおりのスマホが鳴ったのは、

夜の十一時四十七分じゃった。


東京、練馬区。

家賃は月20万円。


その数字だけで、

もう十分都会じゃった。


さおりは三十七歳。

ゲームの翻訳家。

年収は600万円。


数字だけ見たら、

まだ何とか

生きていけそうな女じゃ。


けど最近は、

数字が安心の材料やのうて、

首を締める縄みたいに

見えてきた。


電気代。

ガス代。

食費。

通信費。

保険。


どれも一気に

三倍や四倍にはならん。


ただ、

毎月ほんの少しずつ、

逃げ道だけを削っていく。


その夜の通知は、

オーストラリアの友だち

エミからじゃった。


Fuel lines are getting longer.

Don’t trust the calm faces

on TV.


(スタンドの列が、

 目に見えて長うなっとる。

 テレビの中の

 “落ち着いた顔”を、

 そのまま信じたらいけん)


さおりは、

思わず息を止めた。


ニュースより先に、

生活が壊れ始める時の

英語じゃった。


■第二章 

 日量12万バレルの炎


添付されとった動画には、

暗い空を焦がすような

赤い炎が映っとった。


「……ジーロングじゃ」


ひろしが言うた。


「ジーロング?」


「オーストラリア

 南東部の港町じゃ。

 メルボルンの西にある。

 そこで今、

 大きい製油所が燃えとる」


ひろしは画面を指で止めた。


「ここ、日量十二万バレル。

 ビクトリア州の

 燃料の半分以上、

 豪州全体でも

 約一割を支える場所じゃ」


さおりは息をのんだ。

ただの遠い火事じゃない。


生活の燃料を作る釜が、

目の前で燃えとるんじゃと、

その数字が教えてきた。


ひろしは四十歳。

理工系大学卒。

頭は切れる。


IT業界では欲しがられる人材。

パズルも手品もチェスも得意。


断片を見たら、

その裏で何が起きるかを

先に組み立ててしまう男じゃ。


けど人

間関係は苦手じゃった。


営業は無理。

雑談で空気を支配する

人間も苦手。

お局さんみたいに、

笑顔のまま

人を追い込むタイプには

もっと弱い。


二度会社を辞めて、

今はやっと、

鬱っぽい症状から

這い上がりかけとる

ところじゃった。


ひろしは動画を止め、

すぐにXのタイムラインを

スクロールし始めた。


「見てみ。これ、

 ただの火事やない」


画面には、

豪州の庶民の悲鳴みたいな

投稿が並んどった。


@TruckerOz87 


「Geelongの

 精製所が燃えた夜、 

 スタンドの列が3時間。

 ディーゼルは

 1リットル3.8豪ドル。

 トラック出せん。

 スーパーの棚が浅い。

 政府は“在庫十分”って

 言うけど、

 こっちは給料で

 生きとるんや」


@MelbourneSingleMom


「学校バスが燃料不足で運休。

 職場まで自転車で1時間。

 卵1パック12ドル。

 これで落ち着けって、

 どうやって?」


@SydneySmallBiz


「物流費が1週間で2.5倍。

 値上げしたら客が来ん。

 値上げせんかったら

 店が死ぬ。

 豪州経済、

 静かに終わり始めとる」


さおりは、

喉の奥が冷たうなった。


ひろしは淡々と言うた。


「ここ、日量12万バレル」


「……」


「ビクトリア州燃料の半分以上」


「……」


「豪州全体でも約1割」


「そんなに」


「しかも豪州は燃料需要の

 約80%を輸入に頼っとる」


「資源国なのに?」


「資源国いう看板では

 車は走らん」


「……」


「原油があるのと、

 ガソリンがあるのは別じゃ」


それが、

ひろしの怖いところじゃった。


火を見て終わらん。

次に並ぶ人間の顔まで見える。


数字の先に、

庶民の列を見てしまう。


■第三章 

 352メートルの柵


次に届いたんは、

フィリピンの

知り合いからの写真と、

大量のスクリーンショット

じゃった。


青い海。

白い波。


その中に、

不自然なほどまっすぐな線。


「これ、何」


 「スカボロー礁の入口」


ひろしが言うた。


「確認されたバリアは

 352メートル」


「たったそれだけで?」  


さおりが聞くと、

ひろしは首を振った。


「長さの問題やない」


「じゃあ?」


「“自分の海ですら

 自由やない”と

 見えてしまうことが

 問題なんよ」


フィリピンからの画面には、

地政学や

軍事評論なんかより、

もっと生臭い言葉が

並んどった。


@ManilaFisherman


「中●海警で漁船出せん。

 LPGも買えん。

 今日も鍋に火がつかん」


@QuezonMomOf3


「市場の値段が 

 昨日から3割上がった。

 父親の工場は

 今週で止まった。

 ニュースは国の話ばかり。

 うちは

 今日の晩飯の話をしとる」


@DavaoDriver


「港でコンテナが遅れよる。

 スーパーの棚が半分浅い。

 LPG税停止って言うけど、

 火がつかん台所は

 もう止まっとる」 


そして最後に、

知り合い本人の

短い一文があった。


People don’t talk about

geopolitics.

They talk about LPG. 


(地政学の話なんか、

 誰もしとらん。

 みんな話しとるんは、

 LPGの値段と、

 今日の鍋の火のことじゃ)


海の争いが、

最後には鍋の火になる。 


その落ち方が、

さおりには一番怖かった。


■第四章 

 三つの海に首を絞められた国


ひろしは、

メモ帳に三つの名前を書いた。 


✲ホルムズ。

✲紅海。

✲南シナ海。


「フィリピンは三重苦なんよ」


「三重苦」


「ホルムズで値段が上がる」


「うん」


「紅海で日数と保険が重うなる」


「うん」   


「ほんで南シナ海では、

 自分の珊瑚礁に柵が立つ」


さおりは、

なんだか首のあたりが

苦しゅうなった。


「どれか一つだけなら

 まだ耐えられる?」


「たぶん」


「三つ重なると?」


「台所から先に死ぬ」


ひろしは、

数字を並べた。


「輸送部門物価は

 前年比9.9%上昇」


「……」


「ディーゼルは59.5%上昇」


「……」


「ガソリンは27.3%上昇」


「そんなに」


「政府はLPGと灯油の税停止。

 ASEANに燃料融通まで要請」


それはもう、

国家の冷静な管理やなかった。  


台所の火を守るための、

必死の延命措置じゃった。


「領土問題って、

 最後は鍋の火に

 なるんじゃな」


さおりが言うた。

ひろしはうなずいた。


「戦争って、

 ニュースで始まるんじゃない」


「うん」


「先に家計簿で始まる」


そしてその家計簿の未来が、

日本にもじわじわ近づいとる。


■第五章 

 家賃20万円、年収600万円


「うちも他人事じゃないよね」


さおりが言うた。


家賃は月20万円。

年にしたら240万円。

年収600万円のうち、

家賃だけで四割を食う。


数字だけ見たら、

まだ平気そうに見える。


そこが一番危ない。


「豪州では家賃が

 所得の三割超で  

 住宅ストレスって

 言うじゃろ」


ひろしが言うた。


「うん」  


「うちはもう、

 数字だけ見たら

 普通に見えるだけで、

 十分怖い」


「……」


食費。

光熱費。

通信費。

保険。

ひろしの就活費。


そこへ、

燃料高と物流高が乗る。


「家賃って、

 すぐ倍にはならん」


ひろしが言うた。


「でも、それが逆に怖い」


「なんで?」


「固定費が重いまま、

 他が全部じわじわ上がるから」


「……」


「人間って、

 ゆっくり首を締められる方が

 気づかんのよ」


一発で殴られたら叫べる。 


けど、

毎月三千円ずつ削られたら、

人は静かに痩せていく。


■第六章 

 栃木672キロリットルの穴


「東京はまだ大丈夫」


そう言う人は多い。


ひろしはその夜、

一枚のニュース記事と、

関係者から回ってきたメモを

さおりに見せた。


✲栃木県。

✲下水汚泥焼却の

 助燃剤として使う重油。

✲4〜6月分。

✲672キロリットル。 


入札。

全社辞退。   


「……東京の隣じゃん」


さおりが言うた。


「そう」


ひろしは静かに答えた。


「遠い戦争の話やない」


「でも重油って、

 工場とかの話じゃないの?」


「もっと嫌らしい」


「え?」


「下水じゃ」


さおりは言葉を失うた。


町の上はまだきれいじゃ。

店も光る。

電車も走る。


けど町の下、

うん●と汚泥とポンプと

焼却の世界が、

重油ひとつで詰まり始める。


ひろしは続けた。


「日本は石油備蓄228日分ある」


「うん」  


「国家備蓄は143日分」


「じゃあ大丈夫?」


「数字が大きいから

 安心するんよ」


「……」


「でも栃木では、

 もう風穴が開いとる」


さらに、

メモに走り書きされた

一行を見せた。


✲“落札ゼロ。

 焼却停止なら

 汚泥が積み上がる” 


さおりはその時、

東京近郊の地面の下に、

小さなひびが

走る音を想像した。 


ミサイルより先に、

町の下が止まり始める。


それが今の時代の

兵糧攻めなんじゃと思うた。


■第七章 

 Amazonの静かな配給


「見て」


さおりはAmazonの

決済画面を見せた。


「十個入れたはずなのに、

 四個になっとる」


トイレットペーパー。

電池。

保存食。

乾麺。


ひろしは笑わんかった。


「静かな配給じゃな」


「やっぱり?」


「表では自由市場」


「うん」


「裏では数量調整」


「……」


「この時代らしいやり方や」 


さおりは苦笑した。


「怖いこと言うね」


「怖いんじゃなくて、

 手品みたいなんよ」


「手品?」


「見えるところでは 

 自由に見せる」


「うん」  


「ほんで、

 見えんところで数だけ消す」


ひろしは、

チェスやパズルと同じ目で

世界を見とる。 


配給です、

とは表示せん。 


でも、

決済の時だけ現実が顔を出す。


「配給って、

 配給ですとは書かんのじゃな」


さおりが言うた。


「書いたら反発される」


ひろしは言うた。


「だから“あれ?”だけ残す」


「……」  


「文明が痩せる時は、 

 だいたいそうや」


■第八章 

 仕事が消えるんじゃない、

 幅が消える


「就職も同じなんよ」


ひろしが言うた。


「何が?」


「仕事そのものは、

 すぐゼロにならん」


「うん」


「でも選べる幅は先に消える」


厚労省の数字では、

有効求人倍率は1.19倍。

一見、まだある。


でも

✲新規求人は

 前年同月比7.8%減。

✲卸売・小売は17.9%減。

✲宿泊・飲食は14.7%減。

情報通信も9.5%減。


「つまり?」


さおりが聞いた。


「“仕事はあるよ”って

 顔をしながら、

 未来の薄い求人だけが残る」


「未来の薄い求人?」


「そう。採る気の弱い求人」


ひろしは、

求人票を盤面みたいに見とる。


一手先。

二手先。

三手先。


海峡封鎖。

原油高。

物流高。

融資の慎重化。

採用の慎重化。

生活費上昇。


「仕事が消えるんじゃない」


ひろしは言うた。  


「生活と両立できる

 仕事の幅が先に消える」


その言葉は、

さおりの胸に重う落ちた。


■第九章 

 止めんためのIT


ひろしはノートを開いた。


✖営業、消す。

✖顧客折衝、消す。

✖PM、消す。

✖ベンチャー、消す。

✖受託調整、消す。


「そんなに消すん?」


「最初に消せるもんは、

 早う消した方がええ」


残るんは、


△データセンター監視

△通信監視

△サーバー保守

△物流システム

△病院

△自治体

△電力

△水道

△ガス

△設備保全 


「夢がないね」


さおりが言うた。


「夢はある」


ひろしが言うた。  


「どこに?」


「止まらんことに」


さおりは笑うた。

でも少し泣きそうでもあった。


「便利にするITは減る」


ひろしは続けた。


「止めんためのITは残る」


「……」


「世界が細るほど、

 仕事は増えるんじゃなくて、

 濃くなる」


それは、

ひろしらしい

言い方じゃった。


数を見て、

裏の構造を見る男の

言葉じゃった。


そしてその言葉は、

Z世代の読者にも

刺さる気がした。


今の時代、

やりたい仕事より、

止まったら困る仕事の方が強い。


それを受け入れるかどうかが、

次の時代の

分かれ目になるんじゃろうと。


■第十章 

 ハローワークへ行く朝


翌朝、

ひろしは久しぶりに早う起きた。


「行けそう?」


「たぶん」


「無理せんでよ」


「無理せんでも、

 行かんと無理になる」


さおりは、

その言葉が胸に刺さった。


玄関で、

また通知が来た。


オーストラリアから。

We still have fuel.

That’s not the point.

The point is nobody knows

for how long.


(まだ燃料はある。

 問題はそこじゃない。

 いつまであるか

 誰もわからんことが

 問題なんだ)


ひろしは二回読んで、

小さく笑うた。


「就職も一緒じゃな」


「え?」


「求人はまだある」


「うん」


「問題は、

 それがいつまで

 “まだある”で済むか

 分からんことじゃ」 


そして、

フィリピンからの

通知も続けて来た。


Factory stopped this week.

Father lost his job.

Market prices up again.


(工場が今週止まった。

 父親が仕事を失った。

 市場の値段が

 また上がった)


ひろしは、

ハローワークの 

待合室を想像した。 


✲世界の海が詰まる。

✲燃料が上がる。

✲企業が採用を絞る。

✲工場が止まる。

✲職が薄くなる。


「俺の将来…… 

 これ全部つながっとる」


そう思いながら、

ひろしは家を出た。 


■第十一章 

 まだ大丈夫と言う国


東京はまだ平和じゃった。


電車は走る。

信号はつく。

コンビニは明るい。

ネットも速い。 


けどさおりには、

それが逆に不気味じゃった。


豪州では、

日量12万バレルの

製油所が燃えた。


フィリピンでは、

352メートルの柵が

海に立った。


栃木では、

672キロリットルの

重油が落ちんかった。


全部、

まだ日本全体を

止める数字ではない。


でも全部、

「もう一部では始まっとる」

という数字じゃった。 


「日本って、

 壊れてないふりが上手いね」


さおりがつぶやいた。


夜、帰ってきたひろしは、

少し疲れた顔でうなずいた。


「遅れて来る国じゃけえな」


「遅れて来る」


「先に痛む国を見ながら、

 まだ大丈夫言うてしまう」


TVは備蓄十分と言う。

画面は明るい。

駅も動く。


けど、

その温度差こそが、

静かな崩壊の始まりなんじゃろうと、

さおりは思うた。


■第十二章 

 東京へ届いた最後の平和 


ひろしは鞄を置いて言うた。


「求人はあった?」


「うん」


「でも狭い」


「……」


「俺が入れそうな席は、

 もっと狭い」


それでもゼロではなかった。


✲監視。

✲保守。

✲設備。

✲倉庫。

✲病院。

✲自治体。


「この時代にな」


ひろしが言うた。


「残るのは、

 やりたい仕事や

 ないかもしれん」


「……」  


「でも、

 誰かが止まったら

 困る仕事は残る」


さおりは黙って聞いとった。


窓の外では、

東京の夜景が

まだきれいじゃった。


でもその光は、

もう前みたいに

無邪気には見えんかった。


フィリピンの鍋の火。

豪州のガソリンスタンド。

栃木の入札不調。

家賃20万円。

年収600万円。

求人1.19倍。

新規求人7.8%減。


数字は、

全部つながっとる。


ひろしは、

パズルの最後の一片を

置くみたいに言うた。 


「世界が壊れるんはな」


「うん」


「爆発で

 一気に来るんじゃない」


「うん」


「先に、

 生活の選べる幅から消える」


さおりはそれをメモに書いた。

そして思うた。


東京はまだ平和だった。


けど、

フィリピンと豪州は

先に終わり始めていた。


その通知は、

ちゃんと届いとるんじゃ。


先に干上がる国から。

東京へ。

もう。

十分に。


………


★あとがき

 ホームズとワトソンの、

 やすきよ漫才風


✲ワトソン


「ホームズ君、

 今回ほんまに

 嫌な数字とSNSの悲鳴

 ばっかりやったで」


✲ホームズ


「数字と生の声は

 嘘つかんからな」


✲ワトソン

「いや、

 家賃二十万の時点で

 もう泣きそうや! 

 三海峡の兵糧攻めまで

 ついてきとる!」


✲ホームズ


「そこへ栃木の

 672キロリットルや。

 泣く順番は正しい」


✲ワトソン


「褒めるなや! 

 ミサイルより重油の

 入札不調が怖いって

 何やねん!」


✲ホームズ


「文明いうんは、

 だいたい地味なもんから

 壊れる」


✲ワトソン


「Amazonで

 十個が四個になるのも

 文明崩壊か」


✲ホームズ


「かなり初期症状やな」


✲ワトソン

「ほんで、

 ひろし君の

 “止めんためのIT”が

 切ないわ」


✲ホームズ


「切ないけど強い」


✲ワトソン


「何がや」


✲ホームズ


「夢の仕事やなくても、

 人が必要とする席へ

 向かうんは強い。

 しかも、

 自分が壊れにくい場所を

 選ぼうとしとる」


✲ワトソン 


「……それ、ずるいわ。

 最後にええこと言うなや」


✲ホームズ


「君が泣く係やけえな」


✲ワトソン


「勝手に配役決めるな!」 


………


❥Z世代のあなたへ


未来は、

派手な爆発より先に、

小さい数字と短い悲鳴で  

やって来る。


家賃。

運賃。

LPG。

ガソリン。

就職の幅。

買い物かごの数量。

町の下を支える重油。


どうか、

「まだ大丈夫」

という言葉だけを

信じすぎんでほしい。


ちゃんと違和感を拾うこと。

ちゃんと怖がること。

ちゃんと、

自分の席を早めに考えること。


それは弱さやない。

生き延びる力じゃ。


ひろしみたいに、

断片をつないで、

未来を少し先に読むこと。


世界はもう、

静かに茹ではじめとる。


気づいた者から、

静かに動ける。

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