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新神田川(Z 世代編)――昭和は恋、令和は見積もり。そして東京砂漠――

✦新神田川(Z 世代編)


――昭和は恋、令和は見積もり。

 そして東京砂漠――


………


四畳半で七万円。

学費を月で割れば八万円台。

食べて通えば、

月二十六万円級。


令和の東京は、

夢を見る前に、

先に値札を見せてくる。


そして今、

ホルムズ海峡の影が落ちて、

東京は静かに

砂漠になり始めている。


ゆづきはその春、

初めて東京の部屋を見た。

そして思った。


こんなん、

恋が始まる部屋やない。

家計が終わる部屋じゃ。


それに、この街はもう、

電気すら安心して

使えんようになってる。


………


★目次


■第一章 

 桜のあとに来る請求書と、

 砂漠の予感


■第二章 

 四畳半、七万円、

 日当たりなし、

 エネルギー高騰


■第三章 

 ひろしおじちゃんは

 東京で折れた


■第四章 

 月二十六万円の自由、

 そして東京砂漠


■第五章 

 大学へ行く、

 という古い正解


■第六章 

 三谷産業が、

 高専に札を貼った朝


■第七章 

 ゆづき、

 自分の“好き”を数え直す


■第八章 

 新神田川は、

 東京ではなく地元を流れる


★あとがき

 ホームズとワトソンの、

 やすきよ漫才風・

 三谷産業入り完全版

   (ホルムズ砂漠編)


❥Z世代のあなたへ


………


■第一章 

 桜のあとに来る請求書と、

 砂漠の予感


入学式の季節いうんは、

みんなが希望の話をしたがる。


桜が咲く。

写真を撮る。

新品の靴を履く。

新品のカバンを持つ。


「がんばれよ」という言葉が、

まるで祝福みたいに

飛んでいく。


けれどな。

ほんまに先に届くんは、

希望やのうて、

請求書なんよ。


ゆづきは十八歳。

高校三年生。


料理が好き。

花が好き。

音楽が好き。

絵や図工も得意。

ベランダの鉢を

いじる時間が好き。


人見知りやけど、

数字は嫌いじゃない。


むしろ、

数字で未来を測るのが、

自分を守る術やと

思ってる。


進学校へ行った以上、

なんとなく

大学の話の中におった。


東京の大学。

東京の専門学校。

一人暮らし。

自由。

新しい人生。


そういう言葉は、

だいたい値段が

書いてない。


けれど令和六年春、

ホルムズ海峡が

事実上封鎖された。


イラン情勢の激化で、

中東原油の

九五%が止まった。


原油価格は

一時百二十ドル超。


日本に届くガソリンは

一八〇円台。


電気代は

前年比三割アップ。


物流は滞り、

スーパーの野菜も

値上がり。


ニュースは毎日

「東京砂漠化」

を報じとる。


オフィス街のネオンが減り、

夜のコンビニは薄暗く、

「節電お願いします」

の貼り紙が街中に貼られる。


夢の街が、

砂のように乾いていく。


ゆづきはまだ、

その歌の意味を半分しか

分かっておらんかった。


でも、スマホの

ニュースを見ながら、

心の中でつぶやいた。


「東京って、

 ほんまに大丈夫なん?」


■第二章 

 四畳半、七万円、

 日当たりなし、

 エネルギー高騰


「どうも、お世話になります」


ひろしがそう言うて、

不動産屋の男が鍵を出した。


「じゃ、開けますね」


かちゃり。


その音の先にあったんは、

夢ではなかった。


狭い。

暗い。

壁が近い。

窓が小さい。

風呂は古い。

日当たりが悪い。


部屋全体が、

「我慢してください」と

先に言うとるみたいじゃった。


四畳半。


これで七万円。

管理費三千円。

光熱水道……

今は一万五千円。


ホルムズの影響で

電気代が

跳ね上がっとるから。


ここまでで、

八万八千円。


まだ住んでもない。

まだ通ってもない。

まだ食べてもない。

それでももう、

九万円近くかかる。


「これで……

 七万ですか?」


ゆづきが、

やっと口を開いた。

不動産屋は、

慣れた顔で言うた。


「いま東京、

 かなり上がってましてね。

 この辺だと、

 まだ頑張ってる方です。

 電気もガスも、

 来月からまた

 値上げの話が

 出とるし……」


ひろしは、

その言葉に腹が立った。

でも、怒れんかった。


東京の高専や大学へ

出す子の親は、

みんな

この“頑張ってる方”を

飲み込まされるからじゃ。


ゆづきは、 

何も言わんかった。

けれど心の中で、

はっきり思っとった。


こんなん、

鳥小屋じゃないか。


しかも、

砂漠の真ん中の鳥小屋や。


ひろしの頭の中で

また替え歌が鳴る。


♪「四畳半の窓ひとつ

  日なたは今日も

  来ませんね

  夢を置くには狭すぎて

  家賃だけなら立派です」


■第三章 

 ひろしおじちゃんは

 東京で折れた


ひろしは四十歳。

長野県出身。

東京の理工系大学を出て、

ITの技術もかなり高い。


頭は悪くない。

仕事もできる。

機械もシステムも、

理屈で話せば筋が通る。


けれど、

東京で生き残るんに

必要なんは、

理屈だけじゃなかった。


人と馴染むこと。

空気を読むこと。

少し笑うこと。

少し黙ること。


自分と違う人間の横で、

器用にやり過ごすこと。


ひろしは、

そこがどうしても

下手じゃった。


優しい男じゃった。

優しいけえ、

押しの強い人間の横では

少しずつ削られる。


気がついたら、

人間関係で折れとった。


いまは失業中。

就職活動を始めたばかり。


二年前に恋愛結婚した

さおりと二人暮らし。

さおりは翻訳家。

年収は六百万円くらい。

家計はほぼ

彼女の収入で回っとる。


「東京なんか来たって、

 ええことばっかり

 じゃないよ」


物件を出てから、

ひろしは優しく言うた。


「夢がかなう前に、

 固定費が来るからね。

 今はそれに、

 エネルギー代が加わった。

 ホルムズが封鎖されて、

 東京はもう

 『砂漠』になり始めてる。

 電気代が

 月五千円上がるだけで、

 家計が悲鳴を上げる時代や」


それは愚痴ではなかった。


長い独身時代を

四畳半で過ごした男の、

乾いた実感じゃった。


■第四章 

 月二十六万円の自由、

 そして東京砂漠


喫茶店へ入って、

ひろしは紙ナプキンの裏へ

数字を書いた。


✲家賃 70,000

✲管理費 3,000

✲光熱水道 15,000

   (ホルムズ後)

✲定期代 20,000〜30,000

✲学費 80,000前後

✲食費 45,000〜60,000

   (物流高騰で)


「これで……」


ゆづきが小さく言った。


「二十七万……」


「そう。

 だいたい二十七万円級。

 ただ生きて学校へ行くだけで」


ひろしは続けた。


「これ、参考書も入ってない。

 ノートも、スマホも、

 細かい日用品もまだだよ。

 しかも今、原油高で

 食料品が一〇%上がってる。

 東京砂漠って、

 ただの比喩やない。

 街灯が減って、

 コンビニの冷蔵庫が

 薄暗くなって、

 若者が『もう無理』って

 地元に帰り始めてる。

 Z世代の君らにとっては、

 『夢の東京』じゃなくて、

 『固定費の地獄』

 なんや」


ゆづきは黙った。


「自由って、高いんだね」


ゆづきが言うた。


ひろしは笑わなかった。


「高い。

 しかも狭い。

 そして脆い」


それから、

また変な替え歌が出てくる。


♪「一緒に暮らそう言う前に

  家賃の桁を見ておくれ

  冷たいねって言う前に

  光熱費まで見ておくれ」


ゆづきは、少しだけ笑った。

でもその笑いは、

自分の未来に対する

うすい絶望も混じっとった。


でも、絶望だけじゃない。


「なんか、数字で測ったら、

 東京って脆いんやな」


そう思った瞬間、

彼女の背筋が少し伸びた。


■第五章 

 大学へ行く、

 という古い正解


ゆづきは、

大学が嫌いな 

わけじゃなかった。


ただ、

進学校へ行った以上、

大学へ行くのが

当然みたいな

空気の中におっただけじゃ。


東京へ出る。

大学へ行く。

一人暮らしを始める。


その流れは、

ずっと昔からの

正解みたいに見えていた。


けれど、

ひろしと一緒に

数字を並べてみると、

その正解が急に細うなる。


「大学が悪いんじゃない」


ひろしは優しく言うた。


「東京で

 高い金を払ってまで

 そこへ行く意味を考えろ、

 ってことなんだよ。

 ホルムズ封鎖で、

 東京の電気代が

 跳ね上がってる今、

 『みんなが行くから』は

 もう通用せえへん」


「でも、みんな行くし」


「みんなが行くから、

 みんな苦しいんだよ」


✲大学進学率は

 五八・三%。


✲大学・短大進学率は

 六一・四%。


みんな行く。

その一方で、


✲私立大学の

 五九・二%が定員未充足。


大学へ行くこと自体は

珍しくなくなった。


「大学生」であるだけでは、

昔ほどの値打ちには

なりにくい。


「大学へ行くのが古い、

 って言いたいんじゃない」


ひろしは続けた。


「“東京へ出ること自体が価値”

 という考え方が、

 もう古くなってきとるんだよ。

 特に今、

 エネルギー危機で

 東京が砂漠化してる時代に」


その言葉は、

ゆづきの胸の中で

重たく沈んでいった。


でも、沈むだけじゃなかった。


「じゃあ、私の正解は……?」


彼女は初めて、

自分で問い始めた。


■第六章 

 三谷産業が、

 高専に札を貼った朝


「しかもね」


ひろしはスマホを見せた。


「企業の方も、

 だいぶ変わってきとる」


そこに出とったんは、

三谷産業のニュース

じゃった。


✲高専本科卒 23.5万円。

✲高専専攻科卒 24.5万円。

✲大卒 23.0万円。


ゆづきは目を見張った。


「高専の方が高いの?」


「そう。

 これが大きいんよ」


ひろしは、

指で画面をなぞりながら

言うた。


「昔はな、

 大学の方が上、

 という値付けが

 当たり前じゃった。

 けど今は違う。

 専門性と実践力に、

 企業がちゃんと

 金を払う流れが

 出始めたんよ。

 三谷産業は、

 高専卒の専門性を評価して、

 大卒より

 高い初任給を出した。

 これは話題作りやなくて、

 採用思想の変化

 そのものじゃ」


「つまりね」


ひろしは続けた。


「東京で高い金を払って

 “大学生”になるより、

 地元に近い町で

 ちゃんと技術を持った方が

 強い時代になってきとる。

 ホルムズ封鎖みたいな

 危機が来ても、

 地元の工場や技術職は

 『現場力』で生き残れる。

 東京砂漠で消耗するより、

 自分の手で作れる未来を

 選ばない?」


ゆづきは、

その数字を何度も見た。


23.5万円。

24.5万円。

23.0万円。


数字そのものは、

小さいようで大きかった。


それは、

世の中の値札が変わり始めた

ということじゃった。


「高専って、

 地味だけど、強いんだね」


「うん。

 派手じゃない。

 でも出口が強い」


✲高専卒業生には

 10〜20倍の求人があり、


✲就職率はほぼ100%。


企業が学校へ人を探しに来る。

それはもう、

きれいごとじゃなく

現実なんじゃ。


そこでまた、

ひろしの頭の中に

替え歌が流れる。


♪「昭和の歌は恋でした

  令和の歌は求人票

  背広より先に見るものは

  初任給欄と勤務地」


ゆづきは、

今度は少し長く笑った。


そしてその笑いのあとで、

初めて本気で思った。


大学へ行くより、

高専へ行く方が

私には自然なんじゃないか。


■第七章 

 ゆづき、

 自分の“好き”を数え直す


帰りの電車の中で、

ゆづきは考えた。


私は、

何が好きなんじゃろう。


料理。

花。

音楽。

絵。

図工。

ベランダの菜園。

鉢の土の匂い。

小さな命を育てる時間。


ただ、

それだけでは食えん。


でも、それだけを

遊びのまま置いとってええんか。


料理が好きなら、

食品や発酵や衛生へ

つながるかもしれん。


植物が好きなら、

環境や生命の仕組みへ

つながるかもしれん。


音楽が好きなら、

感性や集中力や丁寧な手へ

つながるかもしれん。


私は、

東京の大きな大学で

器用に立ち回る子

ではないんかもしれん。


でも、

手を使う道なら

あるんじゃないか。


ホルムズ封鎖で

東京が砂漠化してる今、

「夢を追う」より

「生き抜く技術」を持つ方が、

ずっと骨太や。


そこで初めて、ゆづきは

高等専門学校の編入試験

という言葉を、

自分の進路として

考え始めた。


東京を

嫌いになったんじゃない。

ただ、

東京の値段と脆さを

見てしもうたんじゃ。


そして、

三谷産業の数字を見て、

世の中の流れが

変わっとることを

知ったんじゃ。


その二つが重なって、


「私は何を学べば

 食べていけるんか」


という問いが、

初めて本物になった。


彼女は

窓の外の景色を見ながら、

静かに背筋を伸ばした。


Z世代の私に、

もう「みんなと同じ道」は

要らん。


■第八章 

 新神田川は、

 東京ではなく地元を流れる


九州の地元の町には、

東京みたいな派手さはない。


けれど、

自転車で通える道がある。


e-bikeでもええ。

駐輪場もある。

少し広い部屋に住める。

ベランダで菜園もできる。

空が見える。


東京で四畳半に

閉じ込められて、

毎月二十七万円級を

燃やすより、

自分の好きと技術を

地元の近くでつないだ方が、

自然なんじゃないか。


そう思う若者が

増えてもおかしくない。


昔は、

地方から東京へ出ること

自体に意味があった。


けれど今は違う。


ホルムズ封鎖で

証明されたように、

東京で高い金を払って

肩書きを買うより、


地元の町で

暮らしと技術を結びつけた

強い子が出てくる

時代なんかもしれん。


ひろしは

駅のホームで言うた。


「東京へ来るな、

 とは言わんよ。

 でもな、

 東京へ来んでも

 生きられる道があるなら、

 そっちをちゃんと

 考えるんは

 逃げじゃない。

 むしろ、

 自分の数字を

 ちゃんと見つめて、

 骨太に生きる道を

 選ぶんは、

 Z世代の君らにしか

 できん強さや」


ゆづきは、

小さくうなずいた。


桜は、もうほとんど

散っていた。


けれどその日から、

ゆづきの中では

新しい川が

流れ始めとった。


昭和の神田川みたいに、

東京の狭い部屋で

若さを 

すり減らすんじゃない。


新しい川は、

地元の町を静かに

流れ始めとった。


そして最後に、

ひろしが笑いながら

言うた。


♪「古い歌なら

  赤いマフラー

  今の時代は家計簿じゃ

  風呂屋へ行くより

  先に見る

  学費と家賃と初任給と

  エネルギー代」


ゆづきは、

そこで初めて、

ちゃんと笑った。


………


★あとがき

ホームズとワトソンの、

やすきよ漫才風・

三谷産業入り完全版

(ホルムズ砂漠編)


✲ワトソン


先生、

今回めちゃくちゃ

切ないですやん。

四畳半で七万円。

月二十七万円級。

ホルムズ封鎖で

東京砂漠……

青春やのうて、

固定費とエネルギー危機の

地獄ですやん。


✲ホームズ


君、令和の東京ではな、

恋より先に請求書が来る。

そして今、

原油高で電気代が来る。

夢より先に「砂漠」が

来るんだよ。


✲ワトソン


身も蓋もないなあ。


✲ホームズ


蓋どころか、

風呂場にも蓋が付いてない

可能性が高い。

しかもガス代が

跳ね上がってる。


✲ワトソン


そこ笑うとこですか。


✲ホームズ


笑わんとやっとれん。

昔はな、

“若かったあの頃、

何も怖くなかった”

で済んだ。

今は違う。

“若かったあの頃、

何も買えなかった。

電気も”

だよ。


✲ワトソン


先生、

それ替え歌いうより

家計簿とエネルギー白書の

絶叫ですやん。


✲ホームズ


しかし今回の肝は、

東京の高さだけじゃない。

三谷産業だよ。


✲ワトソン


出ましたな。

高専本科卒23.5万円、

専攻科卒24.5万円、

大卒23.0万円。

ここが

物語の刃物やったんですな。


✲ホームズ


そう。

昔は「大学の方が上」が

値札の常識だった。

ところが令和は、

「使える方に多く払う」

へ静かに変わり始めた。

ホルムズ封鎖で

東京が脆さを露呈した今、

地元の高専で

食える技術を持つ方が

強くなる。


✲ワトソン


つまり、

東京で高い金払って

肩書きを買うより、

地元の高専で

自分の“好き”を

技術に変える方が、

Z世代の

骨太な生き方かもしれんと。


✲ホームズ


その通り。

だからゆづきは

敗北したんじゃない。

時代の変化を、

大人より

早く嗅ぎ取ったんだ。

砂漠の東京で

消耗するより、

自分の川を 

流す道を選んだ。


✲ワトソン


先生、ちょっと

名探偵みたいなこと

言うやないですか。


✲ホームズ


私は名探偵だからね。

家計と未来の名探偵だ。


✲ワトソン


いや、

今回は

エネルギー危機探偵や。


✲ホームズ


よろしい。

令和版

神田川を一節どうぞ。


✲ワトソン


ほな失礼して。


♪「あなたは

  もう見たでしょう

  四畳半でも七万です

  一緒に住もうと言う前に

  初任給から引いてます

  ホルムズの影が落ちてる」


✲ホームズ


だめだ。

まだ甘い。

令和版はこうだ。


♪「あなたは

  もう知ったでしょう

  学費の方が高いんです

  一緒に夢見たその前に

  三谷産業を読みました

  東京砂漠を避けました」


✲ワトソン


先生、

神田川に三谷産業と

ホルムズを混ぜる人、

日本で先生だけや思います。


✲ホームズ


それでよろしい。

笑いの骨頂いうんは、

真面目な数字を

ばかばかしい顔で

差し出すことだよ。


✲ワトソン


笑うてるのに、

最後ちょっと

泣けてきましたわ。


✲ホームズ


それでええ。

喜劇いうんはな、

最後に少し涙が混じって、

ようやく人

間の味になるんだ。


………


❥Z世代のあなたへ


昔の人は、

同じ道を行くことを

安心と呼んだ。


大学へ行く。

東京へ出る。

一人暮らしをする。

就職する。


それはたしかに、

ひとつの正解だった。


けれど、

正解いうもんは、

時代が変われば

値段も意味も変わる。


ホルムズ封鎖で

東京砂漠が広がる今、

大事なんは、

周りと同じかどうかやない。


自分が壊れずに

生きていける道かどうか

なんよ。


阿弥陀経には、

極楽では

白鳥や孔雀や鸚鵡の

声までもが、

やさしく法を語るとある。


大きな先生の

立派な声だけが

真理を運ぶんじゃない。


小さな声にも、

生きる道の

きっかけは宿る。


だから、

あなたが今

少し迷っていてもええ。


人と同じ速度で

歩けんでもええ。


華やかな

東京でなくてもええ。


四畳半の夢より、

自分の手で

作れる暮らしの方が、

あなたを生かすこともある。


どうか、

“みんなが行くから”

ではなく、

自分が生きられる道か

どうかで

進路を選んでほしい。


新神田川は、

東京にしか

流れとらんのじゃない。


あなたの町にも、

あなたの足元にも、

静かに流れ始める川が、

きっとある。


        ――終――

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