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隣の芝生に逃げた人から詰みはじめる ――こっちの水は甘いぞ、と囁かれた時代の現物戦争―― 

✦隣の芝生に逃げた人から

 詰みはじめる


――こっちの水は甘いぞ、  

 と囁かれた時代の現物戦争―― 


………


紙幣は、

平和な時代の約束手形じゃ。

けど約束が切れた日、

最後にものを言うんは、

現金やのうて、

ガソリンと軽油と食べ物と、

それを運べる順番なんじゃ。


………


★目次


■第一章 入学式の次の日、

     先輩の国が止まり始めた

■第二章 資源国なのに、

     ガソリンがない

■第三章 早苗ちゃんは、

     なぜ豪州へ飛ぶのか

■第四章 世界はもう、

     ブツブツ交換を始めとる

■第五章 マッドオーストラリアは

     静かな顔でやって来る

■第六章 紙幣では買えない

     時代の前夜

■第七章 ダサい制服の方が、

     まだましだった春


★あとがき


ホームズとワトソンの

やすきよ漫才

――笑うて終わるけど、

 あとで背中が寒うなる版――


………


■第一章 

 入学式の次の日、

 先輩の国が止まり始めた


ゆづきは、

入学式の次の日の朝から、

もう少しだけ後悔しとった。


九州のどこかの県立進学校。

県名は伏せる。

制服は地味。

校舎はめちゃくちゃ 古い。

ザ・青春無理との投稿多数。


第一志望には落ちた。

推薦まで貰うたのに落ちた。

少しだけ気になっとった男子も、

たぶんあっちを受けとった。


受かったんか、落ちたんか、

今の学校に来とるんか、

それも分からん。


昨日までは

「もう絶対友達できん」と

思うとった。


でも入学式で、

前か後ろの席の女の子が

プリントを配りながら、

「そのシャーペン、かわいいね」

と言うてくれた。


たったそれだけで、

世界は少しだけ助かった。


けど夜になると、

やっぱりスマホを開いてしまう。


中学のブラスバンド部の先輩。

英語ができて、

外の世界が似合う人。

留学先はオーストラリア。


前までの投稿は、

海と芝生とカフェと夕焼けじゃった。

その夜の投稿は、違うた。


一枚目。給油待ちの長い列。

二枚目。棚の一部だけが

    ごっそり抜けたスーパー。

三枚目。止まった信号。

四枚目。黒い背景に白い字。


「資源国って、

 “掘れる国”のことなんじゃね。

 “使える国”とは違った。」


ゆづきは、そこで指を止めた。

スクロールする指が、

微かに震えた。


この先輩は、いつも

「こっち来いよ、芝生が青いぞ」

って笑ってた。


その芝生が、今、乾き始めとる。


■第二章 

 資源国なのに、

 ガソリンがない


「じいちゃん」


茶の間で珈琲を飲みよった

六十七歳のじいちゃんが

顔を上げた。 


元証券マン。

人の顔色と、

数字の嘘だけは

長う見てきた男じゃった。


「資源国なのに、

 ガソリンないことってあるん?」


じいちゃんは

ちょっとだけ笑うた。


「あるで。ある国と、

 使える国は違うけえな」


「でも原油あるんじゃろ」


「ある。けど今、世界が足りんのは

 『地面の下の原油』やのうて、

 『今すぐ回せる軽油とガソリン』

 なんじゃ」


じいちゃんは

新聞みたいに数字を並べた。


「豪州は今、

 燃料の約九割を輸入に頼っとる。

 備えは政府説明ベースでも

 ガソリン三十九日、

 ディーゼル二十九日、

 ジェット燃料三十日。

 三月にはガソリン六日分、

 軽油五日分を

 緊急備蓄から出した。

 それでも四月に入って

 二百四十一カ所の

 給油所が欠品した。

 政府が『落ち着け』言う時はな、  

 たいてい市場は

 もう落ち着いとらんのじゃ」


ゆづきは先輩にDMした。


「先輩、大丈夫ですか?」


返事はしばらくして来た。


「大丈夫……って言いたいけど、

 空気が変なんよ。

 映画みたいに暴走族が

 走っとるわけじゃない。

 でも

 『まだ普通の顔してる人たち』

 の中で、

 判断だけ先に荒れてきた感じ。

 こっち、広いじゃろ。

 ガソリンないと

 学校もバイトも病院も、

 全部『遠くなる』んよ。

 並べば入ると思ってた。

 でも今は

 『次の便が来たら』

 が合言葉。」


ゆづきは、その言葉の意味が

最初よう分からんかった。


広い国。自由な国。

海のきれいな国。


でもじいちゃんは

ぽつりと言うた。


「広い国いうんは、

 自由な国の顔をしとるけど、

 ほんまは燃料がないと

 切れる国なんじゃ」


■第三章 

 早苗ちゃんは、

 なぜ豪州へ飛ぶのか


翌朝、じいちゃんは

新聞を広げながら言うた。


「早苗ちゃんが、

 なんで今オーストラリアへ

 飛ぶと思う?」


「レアアースとか?」


「それもある。

 ホルムズ海峡の船の安全もある。

 でも小説なら、

 もっと嫌な読み方ができる」


じいちゃんは声を落とした。


「日本は豪州から

 LNGの約四割を貰うとる。

 その豪州がもし、

 『ガスは出す。でも自分らの

 飛行機とトラックを先に守る』

 いう空気になったらどうなる。

 日本の電気、工場、物流、病院。

 ぜんぶ次の話になる」


「じゃあ早苗ちゃんは、

 助けに行くん?」


「助けに行くいうより、

 パニックを先に起こすなと

 言いに行くんかもしれん。

 あるいは逆に、

 『日本はまだガソリン価格を

 抑え込んどる。

 その政治の余力を使う間、

 豪州はLNGを切らさんでくれ』

 いう取引かもしれん」


それは推測じゃ。

けど、ただの妄想でもない。


公開情報では

高市首相の豪州訪問は

レアアースと航路安全協力。


でも、それだけで

このタイミングの重さは

説明しきれん。


隣の資源国が先に息切れしとる時、

首相が飛ぶんは

友好のためだけやない。


自国の停電を避けるためでもある。


そして、ゆづきが

夜中にニュースを見た時、

港の映像が流れた。


神戸のコンテナ埠頭から

出港するタンカー。

甲板に積まれた巨大なタンク。

白い文字で

「GASOLINE」「DIESEL」。


日本から豪州へ向かう、

ガソリンと軽油を満載した船。

公式発表は「緊急支援物資」。


でもじいちゃんは

スマホの画面を睨みながら呟いた。


「これが、

 ブツブツ交換の始まりじゃ」


■第四章 

 世界はもう、

 ブツブツ交換を始めとる


ゆづきは、ここで初めて

じいちゃんの言うことが

少しだけ怖うなった。


「でも、お金で買えば

 ええんじゃないん」


じいちゃんは首を振った。


「平和な時代はそうじゃ。

 けど今は、

 紙幣より先に

 現物が偉うなり始めとる」


「現物?」


「そうじゃ。ガソリン、軽油、

 LNG、石炭、注射針、

 包装材、エチレン、肥料。

 今、世界は

 『何円出すか』やのうて、

 『何と何を交換できるか』

 の入口へ入っとる」


じいちゃんは数字を並べた。


「韓国は国家備蓄原油の

 スワップ制度を始めた。

 つまりお金で買う前に、

 『今ある備蓄を貸すから、

  あとで同量返せ』

 いう現物ベースの

 回し方へ入っとる。

 米国の燃料輸出は

 三月に過去最高。

 つまり、世界中が

 『使える精製品』を

 奪い合っとる。

 マレーシアはエネルギー高で

 政府職員の在宅勤務まで始めた。

 豪州では専門家が

 『国が自国向けに

  石油を抱え込む』 

 動きが出ると警告しとる。

 これもう、

 ブツブツ交換の

 前哨戦じゃろうが」


ゆづきは息をのんだ。


じいちゃんは続けた。


「第二次大戦の

 末期に近い空気は、

 まず通貨が弱るんじゃない。

 通貨で買えるはずの品が、

 順番待ちになるんじゃ。

 ほんで次に、

 『金は出す』より

 『うちの軽油を出すから、

 お前のガスを出せ』になる。

 『注射針が欲しいんじゃろ。

  なら石炭を回せ』

 みたいな話が、

 表に出んまま増え始める」


紙幣は、平和な時代の信用じゃ。

でも信用が細ると、

世界は札束を数えるより

ドラム缶とボンベと

冷蔵庫の在庫を数え始める。


そして、

ゆづきが見た最新のニュース。


日本から豪州へ向かうタンカーは、

もう三隻目。

神戸、横浜、川崎の港から、

夜通し出港しとる。

表向きは「友好支援」。


でもじいちゃんは言った。


「これで豪州は

 LNGを優先的に回す。

 日本は

 『現金じゃ買えん順番』

 を買うとるんじゃ」


■第五章 

 マッドオーストラリアは

 静かな顔でやって来る


その夜、

先輩から長いDMが来た。


「マッドマックスって

 あるじゃろ」


「でも今のこっちは、

 トゲ付きの車とか

 暴走族とかじゃない」


「もっと静か」


「みんな普通の顔しとる。

 でも

 『次に見つけたら

  多めに入れとこ』

 『この店のことは

  知らん人に言わんでおこ』

 『うちの車だけ

  先に満タンにしよう』

 そういう判断が

 街を変え始めた」


「多民族の国って、

 平時は豊かでおもしろい。

 でも有事は、

 『まず自分の家族の分』

 が思った以上に速い。」


「それが悪いんじゃない。

 ただ、速い。」


じいちゃんは

その文を読んで言うた。


「マッドマックスいうんはな、

 革ジャン着た

 暴走族で始まるんやない。

 皆が

 『普通の顔で、普通をやめる』

 そこから始まるんじゃ」


豪州は

二千八百万人規模へ近づき、

都市はなお膨らみ、

SydneyやMelbourneには

高層ビルが立ち並ぶ。


けど高い暮らしほど、

電気とポンプと

配送の上に立っとる。


水の少ない国で、

もし燃料と電気が細れば、

高く積んだ文明ほど

先に苦しくなる。


それは、

ちょっと未来の日本にも似とる。


先輩の最後のDM。


「昨日、近所のスーパーで

 棚が空いた瞬間、

 おばちゃんが無言で

 他人のカゴから

 パン一個奪った。

 誰も止めんかった。

 ただ、

 みんな目を逸らしただけ。」


ゆづきはスマホを握りしめた。


青い芝生の国が、

静かに腐り始めとる。


■第六章 

 紙幣では買えない時代の前夜


じいちゃんは

味噌汁をすすりながら言うた。


「現物原油が百五十ドル近い。

 軽油は二百三ドル。

 ジェット燃料は二百二十六ドル。

 こうなると、

 世界でいちばん偉いんは

 紙幣でも、株価でも、

 為替でもない。

 今日動けるトラックじゃ」


「トラック……」


「そうじゃ。

 若い子は戦争いうたら

 ミサイルを思い浮かべる。

 でも本当に怖いんは、

 『まだ電気が来とるうちに、

  配る順番が壊れる』

 ことなんじゃ」


東京は、止まってから

砂漠になるんやない。

明かりがついとるうちに、

下の方から砂が入り込む。


オーストラリアも、

日本も、

今はまだ明るい顔をしとる。

でもその明るさは、

供給が続くという

約束の上にのっとるだけじゃ。


約束が切れた日、

紙幣では何も買えん。


そして、ゆづきは知った。


日本から出港したタンカーは、

すでに豪州沖に到着し始めとる。

交換は始まってる。


LNGの優先権と、ガソリンの現物。

紙幣なんか、ただの紙切れ。


■第七章 

 ダサい制服の方が、

 まだましだった春


次の日、ゆづきは制服を着た。

やっぱり、ちょっとダサい。

でも昨日ほどは嫌いじゃなかった。


前の席の子に

「おはよう」と言うてみた。

その子も

「おはよう」と言うてくれた。


たったそれだけで、

ゆづきは思うた。


遠くの芝生の色より、

目の前の一言の方が

人を生かすこともある。


先輩の国は、青い海の下で

燃料の順番を奪い合い始めとる。


早苗ちゃんは、

たぶん笑顔で豪州へ飛ぶ。


ニュースは

友好とか協力とか言うじゃろう。


でもほんまは、その下で

「うちにガソリンを回せ、

 代わりにLNGを出せ」

いう現物の会話が

静かに増えとるんかもしれん。


ゆづきには、

政治の全部は分からん。


けど一つだけ、

高校一年の胸にも分かった。


甘い水を追う蛍は、

光に近づいたつもりで

火に巻かれることがある。


じゃけん今は、

逃げることより見抜くこと。


憧れることより

足元を守ること。


ダサい制服のまま

教室へ向かう朝に、

それだけは少しだけ分かった。


………


★あとがき

ホームズとワトソンの

やすきよ漫才


――笑うて終わるけど、

 あとで背中が寒うなる版――


✲ワトソン


「ホームズ君、今回は完全に

 青春小説か思うたら、

 途中から軽油とLNGと

 ドラム缶とタンカーが

 殴り込んできましたで」


✲ホームズ


「殴り込んできたんやない。

 最初からそこにおったんです」


✲ワトソン


「いやいや、

 主役はゆづきちゃんじゃろ!」


✲ホームズ


「違います」


✲ワトソン


「また違うんかい!」


✲ホームズ


「主役は『順番』です」


✲ワトソン


「地味すぎるわ!

 主人公が順番て!」


✲ホームズ


「文明いうんは、

 石油やガスで

 動いとるように見えて、

 ほんまは

 『誰に先に回すか』

 で動いとるんです。

 今、豪州の港に

 日本からガソリン満載の

 タンカーが着いとる。

 それが順番の始まりです」


✲ワトソン


「なんか今日は賢いなあ」


✲ホームズ


「今日は、です」


✲ワトソン


「そこは毎回にしとけ!」


✲ホームズ


「ブツブツ交換いうのもね、

 昔の闇市の話やと

 思うでしょう」


✲ワトソン


「違うんかい」


✲ホームズ


「違いません。ただ、

 今はスーツ着た人が

 会議室でやるだけです。

 『うちのLNGを回すから、

  そっちの精製品を回せ』

 『うちの備蓄を貸すから、

  同量返せ』

 『注射針が欲しいなら、

  石炭を回せ』

 言葉は上品でも、

 中身はかなり原始的です」

 

✲ワトソン


「紙幣が負ける世界か」


✲ホームズ


「そうです。平和が長いと、

 人は札束が最強やと思い込む。

 でも有事に最強なんは、

 今日使える軽油です。

 そして日本はもう、

 軽油を積んだタンカーを

 送り出して、

 順番を買うとる」


✲ワトソン


「むちゃくちゃ現実的で

 夢がないな!」


✲ホームズ


「夢は燃料がある時だけ

 見られるんです」


✲ワトソン


「名言みたいで嫌やな!」


✲ホームズ


「しかもね、

 マッドマックスいうのは

 暴走族で始まるんやありません」


✲ワトソン


「ほう」


✲ホームズ


「普通の人が、

 『ちょっと多めに入れとこ』

 『この情報は黙っとこ』

 『知らん人よりうちの番が先』

 そうやって静かに

 順番を噛みちぎる。

 それが一番怖い」


✲ワトソン


「……たしかに」


✲ホームズ


「でもねワトソン君。

 今回いちばん大事なんは、

 早苗ちゃんが

 豪州へ飛ぶことでも、

 現物原油が百五十ドルになる

 ことでもない」


✲ワトソン


「ほう」


✲ホームズ


「ゆづきちゃんが

 前の席の子に

 『おはよう』

 言うたことです」


✲ワトソン


「またそこかい!」


✲ホームズ


「そこです。

 順番が壊れる時代ほど、

 最初に人を助けるんは

 国家備蓄やのうて、

 教室の一言です」


✲ワトソン


「スケールの差がすごいなあ」


✲ホームズ


「世界が現物戦争へ入っても、

 高校一年生を立たせるんは、

 まず教室です」


✲ワトソン


「……それは、そうかもしれん」


✲ホームズ


「じゃけえ読者諸君。

 隣の芝生を見て

 ため息つく前に、

 今日の蛇口、

 今日の味噌汁、

 今日の『おはよう』を

 見てください」


✲ワトソン


「ええこと言うたなあ」


✲ホームズ


「甘い水いう言葉は、

 飲む前だけ甘いんです」


✲ワトソン


「最後にそれ持ってきたか」


✲ホームズ


「持ってきます」


✲ワトソン


「たまにはやるなあ」


✲ホームズ


「たまにです」


✲ワトソン


「毎回やれ言うとるじゃろ!」


✲二人そろって


「それでは皆さん、

 芝生より、まず足元を。」


             (了)


………


Z世代の君へ。


この物語は、

明日の朝のニュースに

なるかもしれない。 


いや、もしかしたら

もう始まっている。


先輩の国が先に息切れし、

日本がガソリンと軽油を

満載したタンカーを

夜通し送り出して

「順番」を買う世界。


紙幣がただの紙切れになる前夜。

君のスマホに映る青い芝生は、

もう幻想だ。


スクロールするたびに

「いいね」が溜まる

海外ライフは、

燃料が尽きた瞬間に

乾いた砂漠に変わる。


行動心理学が教えてくれる、

もっと残酷な真実がある。


危機が迫ると、人間は

「希少性マインドセット」

に支配される。


「足りなくなる」

というただの予感が、

脳の生存本能を直撃する。


すると、論理は吹き飛び、

感情だけが暴走する。


研究が示す通り、

スカーシティ(希少性)は

「知覚されたコントロール」

を奪い、

強い不安パニックを生み、

結果として

「今すぐ自分の分を確保せよ」

という原始的な衝動に変わる。


これはCovid-19や過去の燃料危機で

何度も証明された。


静かに、音もなく。

最初は誰も叫ばない。


暴走族も、略奪も、映画みたいな

大パニックも起きない。


ただ、普通の顔をした人々が、

「次に見つけたら多めに入れとこ」

「この店のことは家族以外に言うな」

「知らん人より、うちの番を先に」

と、心の中で

順番を噛みちぎり始める。


スーパーで他人のカゴから

パンを無言で奪うおばちゃんを、

誰も止めない。


ただ、目を逸らすだけ。

それが一番怖い。


なぜなら、

それは「悪い人」が

やるんじゃなく、

君や僕と同じ、

ごく普通の人間がやるからだ。


多民族の豊かな国も、

平和な日本も、

燃料と食料の

「順番」が狂った瞬間、

同じ道をたどる。


行動心理学はこれを

「社会的信頼の静かな崩壊」 

と呼ぶ。


一人の小さな利己が、

連鎖して社会全体を蝕む。


君たちはZ世代だ。


SNSで

「隣の芝生は青い」

と囁かれ、

FOMO(取り残される恐怖)に

駆られて

遠くの光を追いかける世代。


でもその光は、

燃料が尽きたら消える。


本当の危機は、

ミサイルじゃなく、

「まだ電気が来てるうちに、

 配る順番が壊れる」

ことだ。


だから今、

変えられることがある。


教室で、前の席の子に

「おはよう」と

声をかけること。


それが、

最初に守るべき

「順番」かもしれない。


国家備蓄でも、タンカーでもない。

人間同士の小さな信頼の糸が、

崩壊の波を一瞬だけ遅らせる。


順番が壊れる時代ほど、

最初に人を生かすのは、

スクリーン越しのいいねじゃなく、

目の前の生の声だ。


芝生より、まず足元を。


甘い水を追う前に、

今日の教室を、

今日の人間関係を、

本気で見つめてくれ。


それが、

君がまだ「普通」でいられる

最後の防波堤だ。

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