水道管が鳴る夜、未来は「子」という名前を選んだ? ――日経平均は七万円。ホルムズ海峡は詰まり、町のラーメン屋は消え、六十七歳はAIと自転車で五十年前の道を走った――
✦ 水道管が鳴る夜、
未来は「子」という名前を選んだ?
――日経平均は七万円。
ホルムズ海峡は詰まり、
町のラーメン屋は消え、
六十七歳はAIと自転車で
五十年前の道を走った――
………
世界は、
戦争をしていた。
でもニュースで見る戦争とは、
少し違った。
ミサイルではなく、
船が止まる。
爆弾ではなく、
保険料が上がる。
兵隊ではなく、
水道管を直せる人がいなくなる。
ホルムズ海峡で、
タンカーがゆっくりになった。
遠い海の話なのに、
日本のある田舎では、
スーパーのサバが薄くなった。
孫のゆづきが言った。
「世界って、
海峡ひとつで
サバまで薄くなるん?」
僕は言った。
「世界は、
思ったより細い管で
つながっとるんじゃ」
その夜だった。
町の古い水道管が、
地下で小さく鳴いた。
コォン。
まるで、
未来からノックする音みたいに。
………
★目次
■第1章
日経七万円と、薄いサバ
■第2章
ホルムズ海峡は世界のレジ前
■第3章
中国を止めるのは、
戦車ではなく電気代
■第4章
ラーメン屋が消える町
■第5章
水道管を直す人がいない
■第6章
AIは人を消すのか、
助けるのか
■第7章
“他力本願指数”という非常口
■第8章
外国人が来る町、
若者が消える町
■第9章
2040年、老人が一番多い日
■第10章
子ども一人に、
町が未来を預ける
■第11章
「子」という一文字が帰ってくる
■第12章
五十年前のラジオを再生する
■第13章
自転車で走る、未来の避難路
■第14章
祖父はAIに、昔話を預けた
■第15章
水道管が鳴る夜、赤ん坊が笑った
………
■第1章
日経七万円と、薄いサバ
「日経平均、
七万円じゃって…」
朝、テレビが言った。
町のパン屋は、
昨日と同じ値段の食パンを
並べていた。
電気代は高い。
ガソリンも高い。
サバは薄い。
それでも株価だけ、
ロケットみたいに上がっていた。
ゆづきは言った。
「株だけ、
宇宙に逃げとるね?」
「そうじゃな…」
僕はうなずいた。
「でもな。
株は、未来を買う人が
増えた時にも上がるんじゃ」
「日本の未来?」
「たぶん。
“日本、案外しぶといぞ”
って
世界のお金が思い始めとる…」
観光客が来る。
半導体の部品が売れる。
海外に出した工場が稼ぐ。
水処理、電池、ロボット、
古い町を支える技術が残っている。
日本は、
若い人が減っている。
でも、
世界中から人と金と仕事が
少しずつ集まり始めていた。
ただし。
町の水道管の下では、
別の未来が鳴っていた。
コォン。
「何の音?」
「知らん…」
僕は言った。
「でもたぶん、
株価より大事な音じゃ…」
………
■第2章
ホルムズ海峡は世界のレジ前
ホルムズ海峡は、
世界の細い通路だった。
石油の船が通る。
ガスの船が通る。
保険会社の不安も通る。
「海峡が閉じたら、
世界が止まるん?」
「完全には止まらん。
でも遅くなる」
「遅くなるだけ?」
「世界はな。
遅くなるだけで、
けっこう壊れる」
船が遅れる。
保険料が上がる。
原油が高くなる。
プラスチックが高くなる。
食品の袋が高くなる。
最後に、
百円ショップの袋が小さくなる。
「戦争って、
サバと袋に来るん?」
「そうじゃ。
戦争はまず、
家計簿に上陸する」
ホルムズ海峡は、
海の高速道路ではなかった。
世界経済の、
レジ前だった。
どの船を通すか。
どの国にいくら払わせるか。
誰のカードが使えるか。
そこで、
世界の大人たちが
にらみ合っていた。
………
■第3章
中国を止めるのは、
戦車ではなく電気代
「アメリカと中国は、
戦争するん?」
ゆづきが聞いた。
「もうしとる」
「えっ」
「ただし、
戦車でなくてな」
中国は、
安いエネルギーで工場を動かす。
安い材料で製品を作る。
安い製品を、
世界へ売る。
アメリカは、
中国の工場を爆撃する代わりに、
安い石油を高くする。
安い鉱物を取りにくくする。
船を通りにくくする。
つまり、
中国の電気代を上げようとする。
「せこいね…」
「せこい。
でも世界の戦争は、
だいたい
せこいぞ…」
戦争は、
相手を一発で倒すためではない。
相手の利益を、
一円ずつ削るためにある。
そして一円は、
毎日削られると怖い。
………
■第4章
ラーメン屋が消える町
町のラーメン屋が、
一軒閉まった。
「人がおらんのじゃ…」
店主は言った。
客はいた。
味も悪くない。
でも、
仕込みをする人がいない。
皿を洗う人がいない。
夜の店を任せる人がいない。
「ラーメンって、
人がおらんと作れんの?」
「AIは麺を食べんからな」
僕は言った。
「味見もせん」
町では、
店が減る。
学校が減る。
バスが減る。
病院も減る。
でも
全部が消えるわけではない。
残る店は、
前より大事になる。
ラーメン屋は、
ご飯を食べる場所だけでは
なくなる。
独り暮らしの老人が
顔を見せる場所。
観光客が町を知る場所。
中学生が進路を悩む場所。
AIが計算したら、
非効率だらけ。
でも人間は、
非効率の中で生き延びる。
………
■第5章
水道管を直す人がいない
町役場の人が言った。
「管は古いんです。
でも、直す人も古いんです」
みんな黙った。
水道管は、
地下にある。
だから誰も見ない。
水が出る間は、
誰も考えない。
でも、直す人が
引退したらどうなる?
夜中に漏れたらどうなる?
地震で割れたらどうなる?
「AIが直せんの?」
ゆづきが聞いた。
「見つけることはできる」
ドローンが橋を見る。
AIがひびを探す。
センサーが漏水を知らせる。
でも最後に管を掘るのは、
人間だった。
泥だらけになって、
冷たい水の中へ入る人間だった。
「じゃあ、
そういう人は偉いね…」
「そうじゃ」
僕は言った。
「2040年はな。
派手な人より、
水を出せる人が偉くなる」
………
■第6章
AIは人を消すのか、助けるのか
AIは、
若者の仕事を奪うと言われた。
文章を書く。
絵を描く。
会議をまとめる。
電話を受ける。
人間より速い。
人間より文句を言わない。
人間より昼休みが短い。
「最悪じゃん」
ゆづきが言った。
「でもな」
僕はスマホを見せた。
「AIは、
人を消す道具にもなる。
でも、人が足りない町では、
人を増やす道具にもなる」
一人の看護師に、
記録を書くAI。
一人の教師に、
教材を作るAI。
一人の水道職員に、
危ない管を教えるAI。
一人の若者に、
ベテラン職人の知恵を渡すAI。
「AIって、
人間の分身になれるん?」
「ちゃんと育てたらな」
「育てんかったら?」
「めちゃくちゃ偉そうな、
間違った部下になる」
ゆづきは笑った。
「それ、
会社におるな」
………
■第7章
“他力本願指数”という非常口
僕は、
株価表を見ていた。
派手なAI株は、
花火みたいに上がる。
水処理。
下水。
コンクリート管。
冷凍倉庫。
非常用電源。
そういう株は、
あまり上がらない。
ゆづきが聞いた。
「なんで
そんな地味なの見るん?」
「火事の時、
非常口を探すじゃろ」
「うん」
「普段から
非常口の前で
写真撮る人はおらん」
でも、
火事になったらみんな走る。
水が止まった時。
冷凍庫が止まった時。
橋が壊れた時。
下水が詰まった時。
誰もが、
地味な会社を探す。
「それ、
他力本願だね?」
「そうじゃ」
僕は言った。
「人間は、困った時に
誰かの仕事に助けられる」
その夜、
地下の水道管がまた鳴った。
コォン。
………
■第8章
外国人が来る町、若者が消える町
町に、
外国人の作業員が増えた。
最初はみんな、
少し戸惑った。
言葉が違う。
食べ物が違う。
祈る時間が違う。
でも、
一緒に水道管を直した。
一緒に工場を守った。
一緒にコンビニで
肉まんを買った。
すると町のおばあさんが言った。
「この子、うちの孫より
よく働くわ」
問題は、
外国人が来ることではなかった。
問題は、
来た人を
“安い人手”として
使い捨てることだった。
AIが通訳し、
昔の職人の技を映像で残し、
若者と外国人が学ぶ。
そうしないと、
技術は全部、
退職届と一緒に消えてしまう。
………
■第9章
2040年、老人が一番多い日
2040年。
町の掲示板に、
小さな紙が貼られた。
《高齢者人口、山場へ》
「怖いな」
ゆづきが言った。
「老人ばっかりじゃん」
「そうじゃな」
「日本終わり?」
「終わりではない」
僕は言った。
「山の頂上じゃ」
老人が一番多い。
働く人が少ない。
病院も介護も大変。
でも、
山は頂上を過ぎたら、
下り道になる。
その時、
少ない若者の値段が上がる。
子どもの価値が上がる。
一人の若者に、
町が頼る。
一人の子どもに、
国が投資する。
「急に若い人が
大事にされるん?」
「大事にせんと、
町が続かんからな」
「それ、
愛じゃなくて計算じゃん」
「最初は計算でもええ…」
僕は言った。
「最後に、
ちゃんと愛になれば」
………
■第10章
子ども一人に、町が未来を預ける
2040年の町では、
子どもは少なかった。
だから保育園は、
一人ひとりを覚えていた。
商店街のおばちゃんも、
名前を知っていた。
AIも、
宿題を手伝った。
でも赤ん坊は、
AIのために生まれるわけではない。
GDPのために
生まれるわけでもない。
「子どもって、
何のために生まれるん?」
ゆづきが聞いた。
僕は少し考えた。
「生まれてよかったって
言われるためじゃ」
ゆづきは、
しばらく黙った。
町の古いラジオから、
遠い洋楽が流れた。
………
■第11章
「子」という一文字が帰ってくる
その頃、
若い親の間で、
少しだけ古い名前が流行った。
派手すぎない名前。
読める名前。
祖母の写真を見た時に、
少し胸があたたかくなる名前。
「子」と書いて、
“こ”と読む。
ただそれだけ。
AIは、
赤ちゃんの名前を
百二十七案出した。
空、星、光、凛、愛、
世界中の言葉。
でも母親は、
古いアルバムを見て言った。
「この子は、
“子”にしたい」
AIは少し止まった。
《候補としては、
情報量が少なすぎます》
母親は笑った。
「人生は、
情報量じゃないの…」
赤ん坊が、
小さく泣いた。
その泣き声は、
昔の家の廊下を走る
足音みたいだった。
………
■第12章
五十年前のラジオを再生する
僕は夜、
radikoで昔のラジオを聞いた。
若い頃に聞いた曲。
意味も分からなかった英語。
遠い国の歌。
今は少しだけ、
歌詞が分かる。
昔は、
未来へ逃げたくて聞いた。
今は、過去を連れて
未来へ行くために聞く。
「なんで英語やるん?」
ゆづきが聞いた。
「昔の自分に、
まだ話しかけられるからじゃ…」
「昔の自分って、返事するん?」
「たまにする」
「怖っ」
「でもな。
昔の自分が返事せんと、
未来の自分も困る…」
ラジオは、
時間を飛び越える。
歌は、
年齢を飛び越える。
だから、
古い音楽は未来でも死なない。
………
■第13章
自転車で走る、未来の避難路
僕はe-bikeで、
ふるさとの道を走った。
昔の道は狭かった。
新しい店ができていた。
古い店がなくなっていた。
でも、
川沿いの風は同じだった。
「自転車って、何がいいん?」
ゆづきが聞いた。
「速すぎんことじゃ」
車では見えない。
歩くと遠すぎる。
自転車は、
町の表情が見える。
空き家。
古い看板。
水路。
小さな工場。
誰もいないバス停。
未来は、
大きな会議室で決まらない。
こういう道の上で決まる。
誰がここを歩けるか?
誰がここで暮らせるか?
誰が水を守るか?
「おじいちゃん、
未来のために走っとるん?」
「違う」
僕は笑った。
「今日の風が
気持ちいいから走っとる」
未来は、たいてい
今日の気持ちよさから始まる。
………
■第14章
祖父はAIに、昔話を預けた
僕はAIに言った。
「昔話を、
忘れんようにまとめてくれ」
AIは、
すぐに答えた。
《承知しました》
でも僕は言った。
「きれいにまとめんでええ」
《なぜですか》
「人間の話は、
ちょっと失敗しとる方が
次の人が入りやすい」
AIは、
少し止まった。
《理解に努力します》
僕は、
昔のラジオの話をした。
自転車で走った話をした。
親に聞けなかった
名前の話をした。
町の水道管の
音を話した。
AIは、
全部記録した。
でも僕は、
最後にこう言った。
「これは遺言じゃない」
《では、何ですか》
「引き継ぎメモじゃ」
♫未来の人へ。
・うまくできんかったこと。
・逃げたこと。
・笑ったこと。
それでも、
・また走り出したこと(笑)。
………
■第15章
水道管が鳴る夜、赤ん坊が笑った
その夜、
町で断水が起きた。
水道管が割れた。
人が集まった。
年を取った職人。
若い職員。
外国人の作業員。
ドローンを飛ばす高校生。
AIで地図を見る大学生。
みんなで、
地下の管を探した。
朝方、
水が戻った。
蛇口から、
水が出た。
ただそれだけで、
町の人は拍手した。
赤ん坊が笑った。
母親が言った。
「この子の名前、
決めました」
みんなが見た。
「“子”です」
古い名前だった。
でも、
古くはなかった。
水が戻る。
ラジオが鳴る。
自転車が走る。
赤ん坊が笑う。
未来は、
新しいものだけでできていなかった。
昔の中から、
捨てずに残した一文字で、
もう一度始まっていた。
………
❥Z世代のあなたと
『鏡の中の番人に、
未来を渡さないでください』
昔、借金に追われた
貧しい人がいました。
「もう無理だ。
みんな俺を責める。
世の中が悪い」
そう言って、
家を飛び出しました。
遠くまで逃げた時、
道ばたに大きな宝箱が
ありました。
「やった!
これで借金を返せる!」
男は震える手で、
ふたを開けました。
一番上にあったのは、
一枚の鏡でした。
そこには、
疲れた自分の顔が
映っていました。
男は叫びました。
「ひえっ!
宝の番人がおる!
空箱だと思ってました!
中に人がおるとは
知りませんでした!
怒らんでください!」
そして男は、
宝箱を放り出して
逃げました。
中には、本当は
宝がいっぱい入っていたのに。
………
2040年の日本も、
少し似ています。
「高齢者ばかりだ。
日本は終わる!」
「若者は少ない。
もう未来はない!」
「AIが仕事を奪う。
俺たちは使い捨てだ!」
「外国人が来る。
町が変わってしまう!」
そんな声を毎日聞いていると、
鏡に映った自分を、
恐ろしい番人だと思ってしまう。
でも、
本当にそこにいるのは、
未来を奪う怪物でしょうか?
それとも、不安で疲れた、
自分の顔でしょうか?
仏教には、
「無我」という考えがあります。
これは、
「自分なんかいない」
という暗い話ではありません。
昔のインドには、
体の奥に、
絶対に変わらない
「本当の自分」がいる、
という考え方がありました。
仏教は、
それに首をかしげました。
人は、
体も変わる。
気分も変わる。
仕事も変わる。
好きなものも変わる。
だから、
「これが俺の正体だ」と
一つに決めつけなくていい。
苦しい今の自分だけを、
人生の全部だと思わなくていい。
それが、
無我という考え方です。
人は、
昨日の失敗だけでもない。
親の世代の借金だけでもない。
会社の評価だけでもない。
SNSで比べられた
点数だけでもない。
怒りも、
不安も、
劣等感も、
ずっと同じ形ではありません。
だから、
「日本は高齢化だから終わり!」
「年寄りは邪魔だ!」
「若者は損するだけだ!」
と決めつけた瞬間、
僕らは鏡の中の自分を見て、
宝箱から逃げることになる。
「多いものが減る」
それだけなら、
怖い話ではありません。
「多かったものが減れば、
少なかったものや
人の価値が上がる」
若者は、
昔より大事にされる。
子どもは、
町全体から支えられる。
水道を直せる人、
冷凍庫を守れる人、
介護をする人、
AIを使って
古い仕事を新しくできる人。
そういう人は、
これからますます必要になる。
AIも同じです。
AIを、
「自分を消す怪物」
と思えば、
鏡の番人になります。
でも、
自分の苦手を助け、
昔の知恵を残し、
一人では届かなかった
場所まで連れて行ってくれる
道具だと思えば、
AIは宝箱の中の一つになります。
ホルムズ海峡が揺れる。
世界の船が遅れる。
石油が高くなる。
日経平均は七万円を越える。
外国から観光客が押し寄せる。
世界は、
てんてこまいです。
でもその時こそ、
鏡を見てください。
映っているのは、
終わった日本では
ないかもしれない。
日本人って
不安で顔をしかめながらも、
まだ宝箱を開けられる
立場にいます
未来は、偉い人だけが
作るものではありません。
株を買う人だけでもない。
AIを作る人だけでもない。
水道を直す人。
冷凍庫を守る人。
子どもを迎える人。
ふるさとの道を、
もう一度歩く人。
そういう人が、
未来を作ります。
2040年は、
怖い年かもしれません。
でも、
若い人が少ないということは、
あなたの一歩が、
昔より大きく響くということです。
誰かの怒りに、
自分の人生を
預けないでください。
多数派の声だけを聞いて、
宝箱から逃げないでください。
AIを連れて、
自分の人生を運転してください。
そして、
自分の好きだったものを一つ、
未来へ持って行ってください。
鏡の中にいるのは、
番人ではありません。
まだ途中の、
あなたです。
………
★あとがき
ホームズ、ワトソン、やすきよの
「未来の水道管」漫才
ホームズ
「ワトソン君、
日本は2040年に大変らしい」
ワトソン
「何がです?」
ホームズ
「老人が多い。
若者が少ない。
水道管が古い」
ワトソン
「先生、それ全部、
わしの腰にも当てはまります」
ホームズ
「君の腰は管ではない」
ワトソン
「でも最近、
朝からポタポタ音がします」
ホームズ
「それは病院へ行け」
✲やすし
「しかし兄さん、AIが
水道直してくれるんでっか?」
✲きよし
「直す前に、
“水道管さん、
気持ちはどうですか?”
って聞くかもしれん」
✲やすし
「優しすぎて
水止まるがな!」
✲きよし
「でも最後は
人間が直すんです」
✲やすし
「ほな、AIは何するんや?」
✲きよし
「横で言うんです。
“そこちゃいます”って」
✲やすし
「現場監督か!」
ホームズ
「結局、未来とは何かね」
ワトソン
「蛇口から水が出て、
赤ん坊が笑うことです」
✲やすし
「ええこと言うたな」
✲きよし
「でも水道代は払わないけません」
✲やすし
「急に現実へ戻すな!」
僕は笑った。
世界は、ホルムズ海峡で
詰まるかもしれない。
株価は
上がったり下がったりする。
AIは
賢くなりすぎるかもしれない。
それでも。
水が出る。
歌が聞こえる。
自転車で風を切る。
誰かが、
新しい名前を呼ぶ。
そのたびに人間は、
死んで、
生きて、
また生き直す。
未来はたぶん、
そんなに遠くない。




