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予約したのに、帰れない ― ホルムズ封鎖、軽油パニック、そしてゴールデンウィークの片道切符 ―

✦予約したのに、帰れない

― ホルムズ封鎖、軽油パニック、

 そしてゴールデンウィークの

 片道切符 ―


………


戦争は、爆弾が落ちた日から

始まるんじゃない。

軽油が足りんなった日から、

町はもう負け始めとる。


………


★目次


■第一章 まだ旅行を

     予約しとる人たち

■第二章 ホルムズと、

     もう一つの細い首

■第三章 フォースマジュールという

     静かな開戦通知

■第四章 軽油は国の血じゃった

■第五章 温泉街の湯気が

     細うなる日

■第六章 金で買えん帰り道

■第七章 抗がん剤は空港で消える

■第八章 資源国が先に止まる理由

■第九章 ゴールデンウィークの棚は、

     笑いながら空になる

■第十章 ゆでガエルの国

■あとがき


………


■第一章 

まだ旅行を予約しとる人たち


春になっても、

日本は妙に明るかった。


旅行サイトには、

「GWおすすめ」

「ヨーロッパ周遊」

「今ならまだ間に合う」

そんな文字が並んどる。


若いカップルが笑いながら

スマホをのぞき込み、


「ちょっと高いけど、

 まぁ、一生の思い出じゃし」


とか言うとる。


けれど、

その“ちょっと高い”が、

もう昔の高いとは違うんよ。


アジアは、

ホルムズ海峡を通る

原油の8割超を買う地域じゃ。


日本は石油供給の約95%を

中東に依存し、

その約9割がホルムズ海峡を

通ると報じられとる。


つまり、

あそこが詰まるいうことは、


アジア全体が一斉に

同じ穴の中で

酸素を取り合うような

もんなんじゃ。


日本政府が3月に

備蓄放出へ動いたのも、

「大丈夫」の合図やのうて、


逆に危機が

現実になった合図じゃ。


航空券も同じじゃ。


Reutersによると、

バンコク発ロンドンの

片道エコノミーは、

ある日程では

2,265ドル相当まで

跳ね上がったという。


3月31日時点のドル円は

1ドル約159.55円じゃけえ、

日本円では約36万円になる。


しかもこれは、

ビジネスクラスや

ファーストやのうて、

ふつうのエコノミー片道の話じゃ


しかも、

日本発のヨーロッパ便も、

他人事やない。


ANAでは、

日本からヨーロッパへ

飛ぶ便の燃油サーチャージが

片道31,900円。

往復なら63,800円じゃ。


つまり、

航空券を買うたあとで、

それとは別に

6万円超を追加で

払うことになる。


これはもう、

「値上がり」やのうて、

移動するだけで

小旅行1回分のお金が

余計に消えるいう話なんじゃ。


それでも、人は予約する。


「お金があるけえ

 何とかなる」


「帰りは帰りで、

 何とかなるじゃろ」


「便が出とるなら

 大丈夫じゃろ」


そうやって笑う。


けれど、ほんまに

買うとるのは席だけじゃ。


帰れる未来までは、

誰も売っとらん。


■第二章 

ホルムズと、もう一つの細い首


若い人は、

ホルムズ海峡と聞いても、

「また中東の遠い話か」

で終わるかもしれん。


けれど、

ほんまに怖いんは、

ホルムズだけやない。


バブ・エル・マンデブ海峡まで

危なくなっとることじゃ。


ホルムズ海峡は、

原油やLNGやナフサが

アジアへ入ってくる

“入口”みたいな海じゃ。


そこが詰まるだけでも、

日本は苦しい。


なのに、もう一つ、

紅海とスエズ運河へ抜ける近道

――バブ・エル・マンデブ

まで危なくなった。


つまり今回は、

入ってくる方も、

運ぶ近道も、

両方やられとるんじゃ。


そうなると船会社は、

スエズ運河を諦めて、

アフリカの南端・喜望峰を

ぐるっと回る。


Reutersによると、

この回り道で

10日から14日余計にかかる。


たった2日、3日の遅れやない。

1週間どころか、

2週間近い遅れが

普通に乗ってくる

世界になっとる。


しかも船会社は、

この回り道に対して

コンテナ1本あたり

1,500ドルから4,000ドルの

追加料金を乗せ始めとる。


日本円なら、

ざっくり

1本約24万円〜64万円前後の

上乗せじゃ。


さらに怖いんは、

運ぶ日数が

増えるだけやない。


長う走れば、

その分だけ船の燃料を食う。


しかも、船員は

危険海域に入りたがらん。


実際、船員側には

ホルムズを含む

危険海域の航行を

拒否する権利まで

認められとる。


「船はあるけど、

 人が乗りたがらん」


そういう状態が、もう始まっとる。


保険も異常じゃ。


Reutersは、

ホルムズ周辺の戦争危険保険が、

場合によっては

1,000%以上跳ね上がるケースが

あると伝えとる。


つまり、

平時のつもりで船を出したら、

保険料だけで

別世界の金額になる。


その金はどこへ行くか。

船会社が

かぶるわけやない。


結局、運賃に乗り、

原料に乗り、電気代に乗り、

食品に乗り、薬に乗り、

日本のスーパーの

値札に乗ってくる。


要するに、

こういうことじゃ。


ホルムズが詰まる。

バブ・エル・マンデブも危ない。


船は2週間遅れる。

追加料金は1本24万〜64万円。

船員は嫌がる。

保険は10倍級。


その全部が、最後は

日本の暮らしに乗ってくる。


海峡が危ない、

いうだけの話やない。


日本のコンビニの棚、

ドラッグストアの薬、

温泉のボイラー、

工場の原料、旅行代、

全部に火がついとるいうことなんじゃ。


■第三章 

フォースマジュールという

静かな開戦通知


昔の戦争は、

ラジオや号外で始まった。


今の戦争は、

メールで始まる。


件名は、たいてい冷たい。


Force Majeure。

不可抗力。

契約履行困難。

供給遅延。

停止。

見通し未定。


たったそれだけじゃ。


でも、その一行で、

工場は止まる。

船は出ん。

町の棚は薄うなる


人はまだ気づかん。


怖いんは、

FMが一社だけや

ないことじゃ。


あっちでもFM、

こっちでもFM。

国も違う、業種も違う、

原料も違う。


それでも全部が

同じ方向を向き始めとる。


カタールでは、

QatarEnergyが

LNGのフォースマジュールを

宣言し、


Reutersは

世界のLNG供給の

約2割に関わる地域の混乱と、


そのうちQatarEnergyの

能力の17%が

長期間失われうる

と報じとる。


これは

「ちょっと遅れます」

の話やない。


アジアと欧州のガスの

呼吸そのものが浅うなる、

いう話じゃ。


韓国でも、

ナフサ不足が

現実になっとる。


Reutersは、

韓国のYeochun NCCが

ナフサ原料を

受け取れんために減産し、

供給でフォースマジュールを

出したと伝えとる。


政府はロシア産ナフサまで

視野に入れて

手を打とうとしとるが、

それは余裕がある

国の動きやない。


追い詰められた国の

動きじゃ。


インドネシアでも

同じじゃ。


Reutersは、石化大手の

Chandra Asriが全契約で

フォースマジュールを

宣言したと報じとる。


資源国でも、

原料が一本詰まれば終わる。


原油があることと、

町が動けることは、

全然別なんじゃ。


日本も安全地帯やない。

Reutersは、三井化学など

日本の石化会社が

減産に入ったことを伝え、


同じ記事の中で

台湾の

Formosa Petrochemicalが

エチレンやプロピレンなど

一部供給で

フォースマジュールを出したと

報じとる。


三菱ケミカルも

茨城でエチレン設備の

稼働を落としとる。


つまり、日本の工場は

まだ平気な顔をしとっても、

その周りの原料網は

もうギシギシ言い始めとるんじゃ。  


ロシアにまで

手を伸ばさんといけん、韓国。


LNGで長期停止を

言い出した、カタール。


資源国なのにFMを出した、

インドネシア。


周辺が崩れて、

日本の石化も

減産に追い込まれとる。


これを「まだ大丈夫」と

言う方が、

もう無理なんよ。


戦争の最初の言葉は、

「開戦」やない。


FM通知なんじゃ。


「出せん」

「送れん」

「約束できん」

「再開時期は未定」


その一言の方が、

ミサイルの映像より先に、

工場の火を消す。

病院の在庫を削る。

コンビニの棚を痩せさせる。

温泉のボイラーを冷やす。


平和ボケの国では、

爆発音より先に、

契約書の小さい字が国を殺す。


■第四章 

軽油は国の血じゃった


ここを分かっとらん人が

多すぎる。


人はガソリンばぁ気にする。

スタンドの価格見て、

「高うなったなあ」

で終わる。


けど、国を動かしとるんは、

ガソリンやのうて

軽油なんじゃ。


日本の石油業界資料では、

2024年の石油製品歩留まりは、

ガソリン31.0%、ナフサ9.5%、

ジェット燃料8.7%、灯油7.3%、

軽油24.5%、重油**7.2%**

などになっとる。


つまり

原油から軽油だけを

好きなだけ増やして

取り出すことはできん。


軽油は大事なくせに、

全体の約4分の1しか

出てこんのじゃ。


その軽油で走っとるもんを

挙げてみいや。


大型トラック。

新聞配送。

宅配便。

ドラッグストア向け物流。

路線バス。

観光バス。

冷凍車。

港の荷役機械。

建設機械。

除雪車。

農機。


普通車のタンクが60L前後でも、

大型車は600L級を飲み込む。


燃費はリッター3キロ、

4キロの世界じゃ。


新聞を東京で積んで、

新潟、富山まで

一晩で落として回る。


そういう運転手が、

毎晩、

目立たんところで

国の血管になっとる。


じゃけえ、

戦争になると、

いちばん先に怖いんは

原油やない。


軽油じゃ。


ガソリンがなくなる前に、

軽油で国は息を止める。


スーパーに

荷物が来ん。

ドラッグストアに

薬が来ん。


空港に貨物が着いても、

トラックが走れん。

港に船が着いても、

そこから先が繋がらん。


文明いうもんは、

見えん血液が止まった瞬間に、

急に死体みたいになる。


■第五章 

温泉街の湯気が細うなる日


戦争いうたら、

ふつう若い人は

戦車とか戦闘機を

思い浮かべる。


けど、ほんまに怖いのは、

まず風呂じゃ。


わしは

温泉ホテルの現場の人に

聞いたことがある。


大きい施設じゃと、

重油を1日1500L級で燃やす

感覚があると言うとった。


統計の全国平均じゃない、

現場の実感の数字じゃ。


けど、この手触りが

いちばん大事なんよ。


1500L。

1日じゃ。

1週間やない。

1日で、じゃ。


重油は船だけやない。


ボイラー、温泉、ホテル、

サウナ、工場、

加熱設備、地域施設。


そういうところでも

飲み込まれていく。


しかも、

その重油を運ぶのにも

軽油が要る。


重油が高うなる。

軽油も細る。


すると最初はサウナ停止、

次に時短、

次に日帰り入浴停止、

最後は休館じゃ。


「海外旅行は高いけえ、

 近場の温泉にしよう」


そう思う人もおるじゃろう。

でも、そういう時代やない。


近場の温泉ほど

先に湯が止まる。


戦争は、

遠い砂漠の炎やない。


湯気が細うなる

ことなんじゃ。


■第六章 

金で買えん帰り道


この国には、まだ

「お金があれば何とかなる」

と信じとる若い人が多い。


それが、いちばん危ない。


GWにロンドン。パリ。

ローマ。


ドバイ経由。

シンガポール経由。


「片道高いけど、

 まあボーナスで何とかなる」


「向こうに着けば、

 あとはクレカで何とかなる」


「VIPラウンジ使えるし」


そうやって笑う。


でも、ほんまに大事なんは、

行きの値段やない。


帰りの保証なんよ。


航空会社の

サーチャージは上がる。

保険料も上がる。

便は減る。

経由地は変わる。


中東ハブが乱れたら、

世界の航空貨物も

人流も一緒に揉まれる。


Reutersは、

中東の主要ハブの混乱が

世界の航空貨物の

2割超に影響すると報じとる。


これは

荷物だけの話やない。


人も揺らぐ。

医薬品も揺らぐ。

帰りの便も揺らぐ。


「まだ飛んどるから大丈夫」

「予約できたから大丈夫」


そんな発想が、

いちばん危ない。


チケットで買えるんは

座席だけじゃ。


帰れる世界までは買えん。


■第七章 

抗がん剤は空港で消える


ここも、平和ボケの人は

勘違いしやすい。


「工場が爆破されたら

 薬がなくなる」


たしかにそれもある。


イスラエル南部の

ネオト・ホバブでは、

ADAMAのMakhteshim工場が

ミサイルか破片で被弾し、

火災で建物1棟が全壊した。


これは

農薬・化学工場であって

製薬工場ではないが、

化学工業地帯が

実際に戦争の火に

さらされとることは

確認されとる。


ハイファの

Israel Oil Refineriesでも

燃料タンクなどが被弾した。


でも、ほんまに怖いんは、

そこだけやない。


Reutersによると、

中東戦争で

ドバイ、ドーハ、アブダビ

みたいな主要ハブが乱れると、

世界の航空貨物の

2割超が影響圏に入る。


高額で温度管理が要る薬、

とくに一部のがん治療薬や

モノクローナル抗体は、

こういう航空ハブに

強く依存しとる。


業界関係者は、

顧客によっては

4〜6週間で

在庫が危うくなると見とる。


さらに怖いんは、

薬そのものだけやない。


IVバッグ。

ゴム栓。

包装。

冷蔵便。

積み替え。


これが一つでも欠けたら、

薬は病院へ届かん。


EUでは、Baxter系の

イホスファミド不足が、

たった一つの

製造トラブルから

2027年初めまで続く見通し

とEMAが警告しとる。


イホスファミドは

精巣がん、

小細胞肺がん、

子宮頸がんなどで使われる

重要薬じゃ。


つまり抗がん剤不足いうのは、

戦争で1回揺れるだけで、

年単位の後遺症になる

世界なんじゃ。


抗がん剤は、

爆撃で消えるんやない。


空港が止まり、

冷蔵ルートが

ほどけた時に消えるんじゃ。


■第八章 

資源国が先に止まる理由


若い人はよう言う。


「オーストラリアは資源国じゃろ」

「インドネシアも油あるじゃろ」

「アメリカから買えばええがな」


そういう考え方が、

もう古いんよ。


資源は点じゃ。

文明は線じゃ。

原油がある。

石炭がある。

ガスがある。


でも、

精製する設備がいる。

運ぶ船がいる。

船を動かす燃料がいる。

保険がいる。

港がいる。

トラックがいる。

そのトラックに軽油がいる。

工場へ通う

作業員の車にも燃料がいる。


どれか一個欠けたら、

もう無理なんじゃ。


オーストラリア政府自身が、

3月に燃料安全保障計画を

強化して、

追加供給余地として

最大7億6200万リットル相当の

ディーゼル・

ガソリン確保策まで出しとる。


これは

「余裕があります」

の証拠やない。


逆に、放っといたら危ないと

国が認めた数字じゃ。


資源国と、使える国は違う。


コスパの勝者が、

有事の最初の敗者になる。


ここを分からん若者は多い。


平時は

「在庫を減らせ」

「遠くの安い国から買え」

「効率化じゃ」

と褒められた。


けど非常時には、

それがそのまま

首を絞める縄になる。


■第九章 

ゴールデンウィークの棚は、

笑いながら空になる


全国の棚が一斉に

ゼロになるわけやない。

それがいちばん怖い。


東京では、まだある。

埼玉も、まだ何とか。

大都市圏は、

最後まで

「うちは平気」と言う。


けど地方は違う。


配送距離。

倉庫量。

契約差。

優先順位差。

道の長さ。


それで、じわじわ差が出る。


最初は、

「あれ、これだけ入ってないな」


次に、

「前の棚、埋まっとらんな」


その次に、

「毎回、同じもんが欠けとるな」

になる。


でも、人は言うんじゃ。


「SNSでは普通だった」

「都会はまだ大丈夫らしい」

「デマじゃろ」


パニックは、一斉には来ん。

じゃけえ

人は最後まで信じん。


ところがGWの真ん中あたりで、

急に気づく。


トラックが少ない。

バスが減便。

温泉が休館。


ホームセンターの資材が飛ぶ。

ドラッグストアの棚に隙間。

コンビニの冷蔵棚が妙に薄い。


笑いながら予約した旅行の裏で、

町の血管は、もう細うなっとる。


■第十章 

ゆでガエルの国


日本人いうのは、

ほんまに辛抱強い。


よう言えば我慢強い。

悪う言えば、

ゆでガエルじゃ。


ぬるいお湯に入れられても、


「ああ、まだ大丈夫」

「これぐらいなら平気」

「今までも何とかなった」


そう言うて動かん。


石油の値段が上がっても、

まだ平気。

航空券が高うなっても、

まだ平気。

軽油が細っても、

まだ平気。

温泉が止まっても、

まだ平気。

薬の配送が

怪しゅうなっても、

まだ平気。


そうやって、最後まで

「平常心」

みたいな顔しとる。


でも、

それは平常心やない。

判断停止じゃ。


日本の発電構成は

2023年度で

火力全体が約68%、

再エネが約23%、

原子力が約**9%**じゃ。


火力の中には

LNGも石炭も石油も入っとる。


つまり

「石炭があるけえ大丈夫」

みたいな単純な話やない。


燃料が細れば、

社会の骨そのものが揺れる。


楽な方へ。

安い方へ。

速い方へ。


在庫を減らし、

国内を削り、

遠くの安い供給に頼り切る。


そうやって

文明は進歩したように

見えた。


けど、ほんまは違う。


文明は便利さで

進歩したんやない。


非常時に耐える筋肉を、

毎年ちょっとずつ

削りながら

走ってきただけかもしれん。


楽を選び続けた文明は、

いざという時に自分を運べん。


努力をやめた社会は、

燃料が切れた瞬間に、

自分の正体を知る。


その春、

日本人の多くは

まだ笑っとった。


旅行を予約し、

温泉を探し、

SNSに桜を上げとった。


けれど、

ほんまはその時もう、

始まっとったんじゃ。


軽油が足りんなった日から。


■あとがき


この話は、

遠い戦場の話やない。


ホルムズ海峡や

バブ・エル・マンデブ海峡の

緊張が、


保険料、船員、軽油、重油、

ナフサ、航空貨物、温泉、

抗がん剤、旅行代、

コンビニの棚までつながっとる、

いう話じゃ。


実際、

日本は石油の大半を

中東に依存し、

アジア全体も

ホルムズ経由の原油へ

強く依存しとる。


燃料危機は

「値上がり」で

終わるんやのうて、

物流と日常の構造を削っていく。


そして、わしがいちばん

言いたいんはこれじゃ。


戦争は、ニュースの中で

始まるんやない。

生活の方が先に壊れ始める。


飛行機はまだ飛んどる。

ホテルの予約ページも

まだ開いとる。

温泉の写真もまだ綺麗じゃ。

じゃけえ人は安心する。


けど、軽油は

4分の1しか取れん。


中東ハブが乱れれば

航空貨物の2割超が揺れる。


高額冷蔵薬は

4〜6週間で危機になる。


保険は跳ねる。

船員は嫌がる。


そして町は、静かに、

言い訳もなく、

細っていく。


平和ボケの

若い人に言いたい。


お金があれば

何とかなる時代は、

終わる時は一瞬で終わる。


予約できることと、

帰れることは違う。


値段が払えることと、

社会が回ることは違う。


ゆでガエルみたいに

笑いながら沈むんか。


それとも、

まだ熱いうちに気づくんか。


この小説は、そのための

火傷みたいなもんじゃ。

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